穏やかに部屋に差し込む朝日の中で二度寝を決め込む。
だって、今日は降ってわいた休みなんだもん。
起きたら思いがけない二人が来てるなんて今の段階では思いも寄らず(ホントに意外な組み合わせだな)。
惰眠をむさぼろうと布団を頭までかぶる事にした。
まったり、休日の朝。
世の中は平日だけど、休日をゲットした今日。
日曜日じゃない休日っていいよね。
「菊ちゃん、おはよ」
「、おはようございます。着替えてこなかったんですか?」
「たまの平日の休み。パジャマでごろごろしてみたいんだよぉ」
「………困りましたね」
へ?
菊ちゃんがあたしから居間へ視線を移す。
つられて菊ちゃんの居る台所から、居間へと目を移すと……見慣れた銀髪が!!!!!
「よー、。着替えてこいよ、ま、俺様はそのままでも気にしねえけどな」
からかうようにあたしを見てる。
ぎゃー!!ギルベルトがいるぅーーーーーーー!!!!
「だけじゃないんですよ」
と菊ちゃんはため息をつく。
どういう事?
「………………ひ…!!」
気配を感じて横を見てみれば、アーサーがあわててる!!!!
「パジャマ…………」
ギャーーーーーー!!!!
「、着替えてきなさいね」
「りょ、了解です〜〜〜〜」
ま、まさかギルとアーサーの二人がいるなんて思わなかったよぉ〜。
たまには菊ちゃんに起こされないで起きてみよう(休みの日ぐらい)なんて思わないで寝てれば良かったよぉ。
******
着替えて降りてくれば、3人はコタツでまったりしてた。
座るところ、どうしよう……。
と微妙に考えて、菊ちゃんの隣に座り込む。
うちのコタツは正方形じゃなくって長方形のコタツテーブル。
主座にあたる菊ちゃんの居場所は長い方の側面だから入るには支障はない。
ギルとアーサーは向かい合わせ…………………当然距離がある。
そのギルは菊ちゃんとゲームしてる。
アーサーは新聞を広げてる。
二人がやってるゲームは某狩りゲー。
通信出来るはずだけど、顔つきあわせないとーと言ってやってきたんだろう。
ちなみに、この仲間にはフランシスさんとアルフレッドも加わるときがある。
……あたしのまったり休日はドコに行くのかなぁ……なんて思いながら、画面を見つめる。
「何か用事でもあったのか?」
アーサーに聞かれる。
「別にないけど?」
「そうか」
アーサーがどこかそっけない。
多分、あたしもアーサーの事言えない。
「そう言えば、二人ともいつ来たの?」
「が起きてくる一時間前ですよ」
じゃあ、この人はついたばかりでゲームですか、ギルベルトさん。
別に、文句があるという訳じゃない。
人それぞれだし。
けど、すぐにゲームはないよなぁなんて思うのは菊ちゃんとギルがやるそのソフトに微妙について行けないからだろう。
旨くプレイできないからつまんないんだよねぇ………。
「アーサー、何読んでるの?」
新聞から新書サイズの本に読むモノが替わってる。
「歴史小説だ。我が国がトマトの国とアルマダの海戦の頃がこの時代だな」
………………トマトの国って………まさかスペインの事か?
アントーニョさん泣くぞー。
アントーニョさんって…アーサーの事嫌いみたいだよねぇ。
トマトの国って言うと………なんかメルヘンチックだなぁ。
「イギリスとスペインのアルマダの海戦……確か戦国時代…安土桃山時代か……」
と呟いて菊ちゃんとギルのプレイを見つめる。
「別に薦めるわけじゃねえけど…興味ないのか?一応日本の歴史小説だぞ?日本語で書いてあるし……」
ない訳じゃないけど、今はいいかなって。
「そ、そうか」
どこか、………お互いにぎこちない。
その空気のままギルのプレイに口を出したり、質問したり。
そんな感じの中で不意に
「、話……しないか」
アーサーが切り出す。
話……か、この微妙な空気とぎこちなさは解消出来るのかな?
いくら何でも、このままじゃ嫌だ。
「うん、分かった」
そう言ってあたしは立ち上がる。
「へ?べ、別にお前の部屋じゃなくても。オレは、お前の部屋に入りたいとか言ってるわけじゃなくてなぁ」
……………誰も、部屋にあげるとは言ってない。
「………勘違いしたんじゃねえぞ。ただ、お前が立ち上がるから」
アーサーの妙な言い訳に菊ちゃんとギルはプレイする手を止めてため息をつく。
「な、何だよ」
「別に。何でもねえぜ」
「……えっと。」
「あ、えっと、アーサー、庭行かない?」
「に?庭」
「うん、紅葉まだ綺麗だし。良いと思うんだ、紅葉見に行った?うちの庭も結構スゴいよ。菊ちゃんが結構手入れしてるみたいなんだ」
モミジやカエデなんかが良い感じに色づいている。
裏庭の方にはイチョウなんかもある。
「ココにサンダルあるからコレ使って」
アーサーより先に庭にでて菊ちゃんが使ってるサンダルを薦める。
「すまない」
「気にしないで」
「あぁ……」
この家は結構庭も広い。
小さいけれど、池もある。
「……」
「何?」
「この前は済まなかった」
ゆっくりと庭のモミジなんかを眺めてるとアーサーが言う。
この前っていうのはもちろんハロウィンの時の事(次の日もプラスして)だろう。
それ以外予想つかない。
気にしてないよ、って言うのもなんか気が引けた。
「別に、大丈夫だよ」
「そ、そうか……」
「ちっちゃくなってびっくりしたけど……楽しかったし」
「……いや、もうそれ以上言わなくていい」
アーサーに言葉を遮られる。
「の気持ちはあの時充分に分かったから」
今まであたしを見ながら話してたアーサーが視線を外しながら言う。
「……あ、うん」
なんか、ぎこちなさが解消されない。
いつものアーサーっぽくない。
あたしも同じ。
「……アーサー、そう言えば、あたしアーサーの紅茶飲んだ事ないな……」
何となく思い出した。
「そ、そうだったか?入れて欲しいって言うんだったら入れてやらない事もないんだからな」
「うん。アーサーの入れる紅茶飲んでみたいな」
「よ、よし。特別に紅茶を入れてやる。別に、お前に頼まれて、って言う訳じゃないからな。オレの国の紅茶文化を広めるためにだなぁ」
「うん」
いつものアーサーに戻った様な気がする。
「じゃあ、。スコーンも特別に焼いてやる!!!」
は?
「アーサー?!!」
あたしが止めるまもなく、アーサーは喜び勇んで台所に向かう。
「アーサーさん、どうなさったんですか?」
「が紅茶を飲みたいって言うからな。入れてやる事にしたんだ。お、オレの国の紅茶文化を広めるためだからな」
「はぁ」
「菊ちゃん、アーサーを止めて!!!」
「いきなり、どうしたんですか」
部屋に上がり込んだあたしに菊ちゃんは驚く。
「スコーンを作るって!!!」
「……………アーサーさん、止めてください!!!!!」
「何言ってんだ。オレのスコーンだぞ。紅茶には必須だろう?」
「アーサーさん、貴方のスコーンは……」
「食物兵器じゃねえか」
口ごもりかけた菊ちゃんにギルがずばりとアーサーに言う。
「に変なの食わそうとしてんじゃねえよ。大体クーヘンだったらルッツが作った奴持ってきたしな」
「マジデカ〜〜」
きゃー、ルートさんが作ったケーキ大好き。
「すっごくおいしいよね」
「だろ?」
「何、自慢げに言ってんだよ。作ったのはてめえじゃなくってルイスだろ?てめえは持ってきただけじゃねえか。大体、人の事言えるのかよ。料理も出来ねえ奴に言われたくねえよ」
「はぁ?てめえよりはまともに出来るっつーの。、俺様が作ったホットケーキ旨かったよな」
ギルに話を振られる。
「え?」
「俺様作ホットケーキ。マテウスの所のメイプルシロップがけ」
ギルの言葉に思い出した。
あの最上級のメイプルシロップのおいしさを。
「メイプルのおいしさかよ。一人楽しすぎるぜ」
「ざまぁ」
「ギルが作った奴ふかふかでおいしかったよ。あたし、ホットケーキの素から作ってないホットケーキってあんなにおいしいなんて思わなかったかな。また作ってくれたら嬉しいかも?」
うん、もう一回食べたいかも?
「ハハハ、俺様の勝ちだな」
「くっそー、他に料理出来ねえ奴に言われたくねえよ」
「はん、人が倒れるような飯作るような奴に言われたかねえよ」
ギルとアーサーの言い争いは続く。
っていうか、
「菊ちゃん、止めてよぉ」
「そ、そんな事言われましても………。あぁ、もうこんな時間でしたか」
ため息をついて菊ちゃんが壁に掛かる時計を見る。
あぁ、ホントだこんな時間だ。
なんだか、時計見たらお腹すいてきた。
お昼前だ。
「4人分ですからね、何にしましょうか」
「オレのスコーンだよな?」
「ルッツのクーヘンに決まってんじゃねえか」
「……………ティータイムの話ではありません。お昼の時間です。分かりました、うどんにしましょう。カレーうどん」
「カレーうどん?」
菊ちゃんの言葉にギルとアーサーは不思議そうな顔をする。
………結構日本に来てると思われる二人でもカレーうどんの存在は知らなかったらしい。
……いや、むしろ、カレーうどんをこの二人に出すのは冒険過ぎないか?
「、手伝ってくださいね」
「りょーかい」
にっこり笑って言う菊ちゃんの目は、笑ってませんでした………。
言い争ってる二人を見てキレたらしいです。
「全く、このくそ忙しい時期に来やがって喧嘩しないで欲しいですよ」
……………別の意味でキレてたっぽいです。
その後のお昼は、不思議そうな顔をしてカレーうどんを食べるギルとアーサーの姿がありました。
ギルが持ってきたルートさんのクーヘン?
3時においしく頂きましたよ。
アーサーが入れてくれた紅茶でね。