「こんなことしてみたかったの」
そう楽しそうにいうさゆりさんの言葉は以前にも聞いた言葉で。
今度は本当に素直にその言葉にうなずけた。
「昨日は、お疲れさま」
寝たばこしてる撩に声をかける。
「さんざん聞いてるけど?」
「うん、一応、言っときたかったの」
そう言ってあたしは、枕に顔を沈み込ませた。
「さゆりさんの方はいいのか?」
「今日から仕事行くって。事件解決したからね。それにさんざん買い物したからすっきりだって〜」
買い物終わった後のさゆりさんをあたしは思い出した。
おしゃれして、ニューヨークのファッション街を二人で歩いた時、いっぱい引きずり回されたけど、着せ替えもさんざんさせられたけど思わずうんざりした瞬間もあったけど。
さゆりさんが楽しそうだからいいかなって。
そしたらあたしまで楽しくなって、いろいろ散財してしまったんだよね。
ニューヨークに立つ前に高額依頼が入っててホント良かったわよ。
「しっかし、よく、買ったよなぁ〜」
撩はリビングに置いてあった荷物を思い出しながら言う。
「だってしょうがないでしょう?さゆりさんが、これが似合うとかあれが似合うとかっていっぱい買っちゃうんだもん」
「第二の絵里子さんの登場か…」
撩の言葉にあたしは苦笑せざるを得ない。
あたしと撩がいる所はニューヨークでも5本の指に入るらしいホテルの最高級スイートルームのキングサイズのベッドがあるベッドルーム。
なんでスイート泊まれるのかって聞いたら、あたしだけじゃなく、撩が飛行機に乗ってまでニューヨークにくる羽目になった組織からお金巻き上げてきたって。
1000万ドル。
マリィーさんと山分けしたらしいけど、それでも500万ドル。
あり得ないってば。
まぁ、どっかの誰かが作りまくった借金(ツケだツケ!!)が返せるし。
冴羽商事も潤うし〜〜〜。
まぁ、そんなこんなで久しぶりにあったさゆりさんはあれこれあたしに世話をやきたがった。
あたしも世話をやいてくれるさゆりさんの好意に甘えてはいたんだけど…ふぅ。
どんどん、高額になってくんだよねぇ。
「で、何処に見て回ったんだ?」
こっちに着いてからの行動を撩は聞いてくる。
よくよく考えてみれば、撩とのんびり話すのは飛行機の中以来だもんね。
空港では慌ただしく別れちゃったし。
その時の事を少し思い出しながらあたしはさゆりさんと回った所を話す。
「ファッション街に言って買い物して、ブロードウェイに行って今一番人気のミュージカルとかオフブロードウェイにも見に行ったし。日本ではやってない映画も見に行ったし、カーネギーホールのコンサートも行ったし、食事でしょう?一番多かったのはやっぱり買い物かなぁ?洋服見に行ったり、あ、そうだティファニーに行ってピアスも買ってもらっちゃった。それから、化粧品見に行ったり、さゆりさんの行動圏内はどのくらいあるのって言うぐらいマンハッタンを端から端まで。楽しかったけどね」
さすがに疲れたけど。
勢いで買った洋服とかもあるけど。
皆のお土産もついでに買ったし。
「随分楽しんでたみたいじゃネェか」
「まぁね」
そう言ったあたしがよっぽど楽しそうだったのか、つまらなそうにタバコを消して肩ひじを枕にしてあたしの方に身体を向ける。
「んで、今日はどうするんだ?」
「リクエスト聞いてくれる?」
聞いてくれるか分かんないんだけど、おずおずと上目遣いで聞いてみる。
「………場合によっては」
苦笑いを浮かべて撩は言ってくれた。
「観光してないんだよね」
「はぁ?さんざんしたんじゃネェの?」
「してない。したのは買い物。のんびりいろんなもの見てない。エンパイアステイトビルからの眺めとか!!!自由の女神とか!!!見てない。ニューヨークに来てこれって言うの見たのタイムズスクエアだけよ!!!でもMOMAには行ったっけ。これはさゆりさんの取材のついでだったんだけどね。セントラルパークでのんびり散歩してない!!」
思わず叫んでしまった。
事実だし。
「なーんでさゆりさんに行きたいって言わなかったんだ?」
「だって、さゆりさん買い物したそうだったし……。やっぱり申し訳ないじゃない?それに比べて、撩だったら、遠慮する必要ないし?」
我儘言い放題、甘え放題出来るし。
というのは一応言わないでおこうかな。
「わーったよ。付き合ってやるよ」
「うそ、ホント?ありがとう!!撩。ついでにメトロポリタン美術館にも行きたい!」
「オイ」
でさ、でね。
「いっぱい、観光したら…」
「したら?」
「日本に帰ろう?」
「………香……」
ずっと、考えてたんだ。
さゆりさんに
「冴羽さんと香さん、あなた達ふたりだったら、何処でも平気で生きていけるわ。絶対に」
って言われたんだけど。
でも、やっぱり日本がいいなぁ。
言葉通じるし。
「重要なとこはそこかよ」
「撩は…帰りたくないの?」
「そりゃ、帰らなきゃ」
帰らなきゃ?
な〜んか、嫌な予感!!!
「日本中のもっこりちゃんが寂しがる」
「最後はそこか、おのれは!!!!」
思わずグーでなぐる、ハンマーは一応勘弁してあげるけど、もう1回ふざけた事いったらハンマーしてついでに49階のホテルのテラスからす巻きにしちゃるっっ。
「冗談だってばー」
「こういう時にいう冗談、サイテー!!」
はぁ〜せっかくさぁ、人がさぁ、珍しくさぁ、たまにはさぁ、恥ずかしいけどさぁ。
一応は、甘えてるのにさぁ。
それなのに、こいつってば。
分かってるけどさ。
気を取り直してもう一度、聞いてみる。
「日本帰ったら、どうする?」
「そりゃ、やる事決まってるだろ?」
なんてにやりと笑う。
やっぱ、こいつの考えてる事って基本的には一つだ!!!
あ〜〜なんでそこから離れないんだろ。
本能で生きてるって言うけど、本能で生きすぎだと思う!!
まぁ、結局、あたしはこいつに付き合っちゃうんだけど。
一応、条件はださなきゃね。
「観光、付き合ってくれるなら」
「お、そう来なくっちゃ」
「帰りも飛行機なら」
「……………………………………………………………………………」
そこ、考える所?
まぁ、極度の飛行機恐怖症と言うか憎悪症の撩が行きでおとなしく乗ってこられたのにもすごいけど。
あたし、行きと帰り飛行機じゃなきゃやだからね。
って言うか、ニューヨークと東京を結ぶ船なんてないでしょう?
普通!!!
「撩、帰りも飛行機よね」
「……………………………分かった。いいだろう」
開き直ったの?
まぁ、いいや。
撩ってば分かってるのかな?
あたしが観光したいって言ってる意味。
撩と一緒に…多分もう二度と来れないニューヨークの街歩きたいって思ってる事。
「そうそう、前払いってなしね」
そう言って釘さしてあたしは素早くベッドから抜け出る。
呆気に取られてる撩を横目に見て、とどめも刺しておく。
「じゃあ、先にシャワー使うねぇ〜〜。来たら、ハンマー&す巻きです。+お預けもつけてあげる〜〜〜」
で急いでバスルームへと向かった。
ニューヨーク、来て良かったよね。
いろいろ大変な事あったけどさ。
最後ぐらいは、のんびりしたいの。
まぁ、トラブルメーカーが一緒だからちょっと不安なんだけどね。