続き、sequel、あの後
「助けてくれてありがとう」
「もう一度、逢いたかったんだ」

 なんて、意地でも言ってやんない。
 どうせ、覚えてないんだろ?
Sequel of 'Sniper from the dark' 〜そこにいた理由とそれからと〜

「ふーん、シティーハンター、冴羽撩……か」
 呟くと思いっきりにらみ付ける目の前の男。
 ったく、やっぱり覚えてないよな、あたしの事なんか。
 ま、あの時は男だって言って誤魔化したわけだし。
「誰だ、貴様……」
「槇村香、あんたの相棒、槇村秀幸の妹」
 なんて言ったら思いっきり驚いた顔してんの。
 なんか、おもしろー。
「ら、ってこあ、しゃ」
 見せられた写真にはアニキの高校時代の写真+文化祭。
 女子高生な女装!!!
 アニキのバカ!!!
 なんでこんな写真この男に渡すんだか。
 って言うか、なんでこいつがあたしの(アニキの女装だけど)持ってるわけ?
 ともかく、いまだ驚いているこいつを落ち着かせる為にあたしは説明するしかない。
「落ち着けよ。これはアニキの文化祭の時の劇の写真だって。しかも、アニキの女装。本気でこれおれだと思ったわけ?」
「あの、ど近眼!!」
 アニキってちょード近眼なのに、あんまり目がねかけたりしないんだよなぁ。
 ホント、困ったアニキだ。
「ほーしかし…おたくが」
 そう言ってあいつは値踏みするようにあたしを見る。
 どうせ、男だと思ってんだろ?
 第一、あたしを男だと思ってひっぱたいた奴だし!!
 昔会った時も男だと勘違いしてくれたわけだし!!!
 ……まぁ、最初の時はバレてたら最悪だし。
 この色情魔に女だってバレてたら何されたか分かんないし〜。
 って言うか、ムカツク。
 思い出しただけでも腹が立ってくる。
「フン、どうせ『弟のまちがいだろ〜』。なんて言う気だろ?」
 あんたの言いたい事は目に見えてるってーの。
 あー、もう、マジで最悪ッ。
「ん〜〜弟ぉぉ?」
 ん?
 なんかこいつめちゃくちゃ嬉しそうじゃない?
「だれも、そんな事言わないよぉ!。君の今のカッコみりゃね」
 今のカッコ?
「え……?あきゃああああああああああああ!!」
 う、う、う、う、う、う、っかり忘れてた!!!
 あ、あ、あたし、着替えようとして服脱いだら落とされたんだ!!!
 あぁ、もうますます最悪だ!!!
 こんな色情魔の前で下着姿なんてー!!!
「見んなー!!」
「んなこといったってさぁ」
「あんたのせいだかんなっっ。そこんとこ分かってんの?」
「いや〜、いい眺めだねぇ」
「ふざけんなって。早く服持ってくるぐらいの事できないのかよっ」
 あぁ、どうしたらいいんだよ、この状況っ。
 男と間違えられるわひっぱたかれるわ、揚げ句の果てに下着姿までみられるわ。
 しかも、こいつが殺した男の死体転がってるし。
 これを、最悪って言わないで、どれを最悪って言うんだよ!!!
「ちょっと、待ってろよ」
「って、何処に行くんだよ」
「君の洋服。持ってきてやるよ」
「ちょ、ちょっと、ここにおいてかないでよっ」
 死体と一緒だなんてやだ。
 化けて出たらどうするんだよっ。
「じゃあ、その格好で上にもどる?」
 そんな楽しそうな顔で言うな。
 そんなのやに決まってるじゃないかっ。
「ったく。困ったお嬢さんだ」
 そう言ってこの男は自分が来ていたジャケットをあたしにかける。
「そのままじゃ心もとないだろ?」
 で、すぐに洋服を持ってきてくれた。
 こいつが何か調べ物している間にあたしは着替える。
 あいつ見てたかったみたいだけど、丁重にお断りした。
 ついでに殴ってやったけど。
 それは、当然だ!!
「で、香ちゃんはあんなところで何してたわけ?」
 あいつは別室に置いて合った資料を眺めながら聞いてくる。
「……なんで言わなきゃならないんだよ。関係ないだろ?」
「んにゃ。槇ちゃんに妹を探してくれ〜って泣きつかれてたんだ。関係ないなんてないだろ?なんで家出なんかしたんだ?」
 そう言った撩にアニキの様子が思い浮かぶようであたしは頭が痛くなった。
 …アニキのバカ。
 確かに連絡しなかった、あたしもあたしだけど。
 家出に間違えられてるとは思いもしなかったけど。
「別に家出なんかじゃないよ。…あのさぁ、ここって人身売買のシンジゲートの店だとか言ってたよな…。その資料って、名前とかあるわけ?」
「……どうしてだ?」
「……調べてた見たいだから聞いておく。羽田めぐみ。って言う子、そこに書いてある?」
「…理由はそれか?」
 撩の言葉にあたしは素直にうなずいた。
「彼女とは中学時代の友人なんだ。いきなり電話があって。話したい事があるって言われて…。彼女はアニキが刑事だった事を知ってるから、アニキに相談したいって言われてたんだ……。で、ともかくおれが、あって話を聞く事にしたんだけど。それが、あのキャッチな女がいたあの場所の近くでさ……」
 …そしたら、その場所にはめぐみはいなかった。
 約束の時間より少し遅れたから、彼女はすでに危険な目に合ってるのかも知れない。
 そう思ったら、やり切れなくなった。
 あのまま家に帰ってアニキに事の顛末を説明してアニキに手伝ってもらおうと考えたけど。
 でも、家にもどる時間が何故か惜しかった。
 その間に助けられるかも知れない。
 そんな事考えたら、町中探し回ってた。
「無謀だな」
「あんたに言われなくたって分かってるよ…そんな事。おれだって、無謀な事だって分かってたけど。どうしてもいてもたってもいられなくって」
 そういい終わらない間にあいつは立ち上がる。
「…ちょっと、人の事おいて何処行くんだよ」
「ん?最後の被害者って事で、美人の刑事さんが助けに来てくれるっていう予定なんだが?」
「ふざけんなっ。人の話聞いてたのかよっ。めぐみの名前はあったの?」
「見てみるか?」
 撩はあたしに資料を手渡す。
 そこには10代後半から20代までの女性の写真。
 20人分ぐらいはある見たい。
 写真をたどれば、そこにはめぐみの写真。
「めぐみっ」
 彼女はやっぱりここに来たんだ。
 ごめん、もうちょっとあたしが早く来てればめぐみの事守ってあげられたかも知れないのに。
 涙が出そうになって目をこすったら、あの男が扉の方へと向かうのが見えた。
「ちょっと、何処にいくんだよ」
「ん?ちょっとねぇ〜」
「あんた、おれの事おいていくつもりかよ!」
「大丈夫、美人の女刑事さんに最後の被害者なんだって連絡しておいたから」
「それさっきも聞いた。いい加減答えろ!!!あんたは何処に行くつもりなんだよっ」
「さぁてね」
 何て軽く言いやがってあいつは外に出ようとする。
「まてよっ」
「ん?」
「あたしも連れていけっ。めぐみや他の人、助けに行くんだろ?」
「別に〜おれが美人の女刑事さんから頼まれたのはシンジゲートのボスを暗殺する事だし〜」
 そう言って撩は部屋から出ていった。
 ふざけた奴っ。
 あ〜〜も〜〜。
 意地でも追いかけてやるっ。

「で、何処に行くんだよ」
「勝手に乗り込むなよ」
 助手席を見ておれはため息をついた。
 結局、香はついてくると言ってきかない。
 あの時も今回も怖い目にあってるのに、それでもついてくると言って聞かない。
 ホント世話のやける。
「あいつの事……その…殺したって……、連れ去られた人が帰ってくるとは限らないよね。あんたは連れ去られた人を探すために資料とか見てたんだろ?」
 随分、正確についてくる。
 ん〜〜、こいつはおれの仕事一度見てるからな。
 全く覚えてないのか?おれに会ったなんて。
 まぁ、良い。
 覚えてないなら、それでいい。
 別に、言う必要もない。
 おれと彼女の接点は…ないほうが良い。
「………そう言えば、あんたの家って新宿じゃなかったっけ?」
「よくご存知で」
「アニキがうるさいくらいに言ってる」
 その言葉に思わずため息がつきたくなった。
「ちょっと、何処に行くのかぐらい言えよ!!!」
「見てれば分かるよ」
 車を走らせ、港へと向かう。
「…さて、あれはな〜んだ」
 指を差す、白い豪華客船。
「あれは…シーウィンド号じゃん。どっかの大金持ちが作った豪華客船だったよね」
「その通り」
「……まさか、あそこに連れ去られた人がいるわけ?」
 その言葉におれはにやりと笑う。
「…なんで…あの船の持ち主って、有名人じゃん…」
 そう。
 あの船の持ち主は海外の著名人。
 豪華客船を作れるぐらいの超有名人。
「あそこの店長はブローカーで、あの人物は客」
「えっっ。なんで」
「世の中にはそういう奴がいるだけ」
 おれの言葉に彼女は俯く。
「知らないほうが良い事だってあるんだよ」
「だけど、それに巻き込まれた人もいる。それを知らないで、笑ってなんていられない。おれも、行くからね」
 そう言って、彼女は停車している車から降りる。
 ふぅ。これじゃ、絶対に何言っても聞かないな。
 間違いなく。
 仕方なしに、おれも車から降りる。
「で、どうするの?」
「ん〜〜」
 手招きして側に呼ぶ。
「なんだよ」
「仕方ないから、いろいろ説明してやるよ」
「仕方ないってなんだよ。あたしも助けに行くって言ってるんだよ」
「分かったから」
 すまない。
 見つめる目に、彼女は何か不審なものを感じたらしい。
 すまないな、香。
「っ……りょ……あんた………」
 崩れ落ちた彼女を片手で支える。
 危険な目に遭わせないために、結局おれは何も言わずに気絶させた。
 気絶させるしか、止める方法を見つけられないなんてどうしようもないな。
 最初にあったのは…2年前か?
 あの時、彼女は……17だったか?  坊主かと思ったら女の子だって分かった時は正直驚いた。
 まさか、槇村の妹だとはさすがに思わなかったが。
 …大きくなったよな。
 なんて言ったら怒るか?
 なんて考えて思わず苦笑する。
「お前、おとりにしちまったなんて言ったら槇ちゃんに殺されるな」
 なんて見当違いな事を考えて。
「まったく……」
 何が全くなんだか。
 ホント、参った。

「……アニキ…」
 目が覚めたら、大泣きしているアニキがあたしの顔をのぞき込んでいた。
 あたりを見渡せばタバコ臭い狭い車内の後部座席。
「お、おれっ」
「目が覚めたか、香」
「アニキ、あの男は?撩は!!」
 起き上がり、車外にいるアニキに言う。
「りょ、撩〜〜〜?」
 アニキが突然、不満そうな顔を見せる。
 な、なんだろう。
「ちょっと、アニキどうしたんだよ?ねぇ、撩は?あの男は」
「…会ったのか…。いや、会わなきゃ、この車には乗らないな…」
 そうつぶやいて大げさにため息つく。
「アニキってばぁ!!!」
「ん?目が覚めたか?香ちゃん」
「お、おまえ、撩、き、きさまーーーーーーー」
 突然、アニキが撩につかみかかる。
「アニキ、いきなりどうしたんだよっ。って言うか、撩!!よくもおれの事おいていったな!!」
「おわっっ。槇村落ち着け、香ちゃんもな」
「う、うるさい。撩、貴様なんかにおれの可愛い妹の名前を呼ばれてたまるか!!!」
 そう言ってアニキは撩につかみかかる。
「香ちゃ〜ん、助けて〜〜」
 ………、なんだか、気の毒になった。
 とりあえず、おいてかれたとか、ついでにそう言えば、おとりにされたよなぁ、あたしっ。
 助けるのやめようかと思ったけど、つかみかかってなんだか余計な事までいいそうなアニキを止めるために、怒鳴るのは後でにしてあげよう。
「アニキ、撩はあたしの事助けてくれたんだよ。撩、めぐみ…どうなった?」
「無事だよ。心配しなくても大丈夫。お前が心配してたって言ったら、お前に心配かけたって言ってた。後で電話すると言ってたから、もう大丈夫だ」
 そっか…、よかった。
 めぐみ、無事だったんだね。
「どういう事だ?」
 あたしと撩の会話を疑問に思ったのかアニキは聞いてくる。
「覚えてないかな?羽田めぐみちゃん。中学の時の友達」
「あぁ、彼女か。撩、まさか彼女も今回の?」
 アニキが家では見せない厳しい表情を見せる。
 …そう言えば、アニキって元刑事だったんだよね…。
 あんまりそんな感じしないんだけど。
「ま、その通り。香ちゃんは彼女を探してたんだと。良かったな、家出じゃなくってさ」
「そう…だったのか、香」
 アニキの言葉にあたしはうなずく。
 なんだか、申し訳ないな。
 アニキ、すっごく心配してたみたいだ。
「ごめんね。アニキ」
「今度はこんな事ごめんだぞ」
 うん、分かってるよ。
「さて、帰るか」
「そう…だね。アニキ、お腹空いちゃった」
「そうか…。どうする?どこかで食べていくか?作るのは面倒だからな」
 作る。
 ……か。
 ……良い事、思いついた!!!
「おれが作るよ。たまにはいいだろ?アニキ」 「お前疲れてないのか?」
「平気、平気。心配しなくっても大丈夫。撩、あんたも食べるでしょう?」
 あたしとアニキの会話に入れなくてどこか寂しそうだった撩にあたしは声をかける。
「?」
 いきなり声をかけられた撩はホントに驚いた顔を見せる。
「何、そんな顔してるんだよ。お腹空いてるんでしょ?ご飯ぐらい作るから家に寄れっていってんの!!!」
「あのなぁ」
「断る気?」
 ドスのきいた声で言えば撩は驚く。
 そして、耳元でささやいてやる。
「あんた、おれの事、おとりにしたよなぁ。アニキが知ったらどうなるかなぁ?」
 まぁ、ちょっとばっかり卑怯な手かも知んないけど、この際なりふり構うのはやめよう。
 ご飯食べるのは一人より、二人、二人より三人ってね。
「…どうするんだよ」
「………………卑怯だぞ」
「卑怯なのはお互い様だろ?おれの事、ここまで連れ出した揚げ句おいてけぼり食らわせたんだ」
 自分が勝手についてきた事はとりあえず棚に上げて。
「………っ」
 舌打ちするぐらいやなのかな?
 なんか、落ち込む。
「うまいんだろうな」
 俯いた顔を上げれば、不満そうにあたしを見る撩。
「会ったり前じゃん、おれが作るんだ。おいしいに決まってる。アニキ、おれの料理、おいしいよな」
「当然だ!!………撩、お前も来るのか?」
「強引に誘われたからな、まぁ、たまには、悪くないだろう?」
 苦笑した笑顔を見せる撩にアニキも苦笑した。
 な、なんだよ。
 おれだけ仲間はずれでやな感じ。
「さて、飯でも食いににでも行くか、うまいもん頼むぜ、香ちゃん」
 そう言って撩はあたしの頭に手を乗せた。
「子供扱いするなよ」
「妹扱いだよ」
 …なんか微妙。

 料理はうまくいった。
 ここ最近、No.1ぐらいのおいしさもプラスされた。
 ただ、問題はあの馬鹿!!!
 なんで、あんなに食べるんだよ。
 信じらんない!!!
 おいしくないって良いながら、全部平らげるな!!!
 おいしいぐらい言え!!
 なんだか、すっごい不愉快!!!

あとがき

突発ノートの改訂版。
イントロと最初の所だけを書き加えて。
あと……船の名前。
適当に名前つけたら、そうだこのプリンセス・ナタリア号ってTOAのナタリアの船じゃん。って
で、やっぱり適当に名前をつけ直した。
一応、原作の補完話。
実際の所、補完はアニメでされてたんだけど。
思いついたのっていつだっけ………。
仕事中だったかな?
だから、アニメ見直す前に書いた物なので、補完としては原作話。
こんな話でもいいかなぁって思うんだけど。
槇村兄のシスコンぶりとか結構気に入ってるんだよね。
っていうか撩と香が再会したのって19になる前なのか、20になる前なのか微妙に分からない………。

初出:2005/12/22(突発ノート)
HTML化:2006/1/30
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