「凱、振り向いたら、絶好だからねっっ!!!」
そう、凱に念を押して、後部座席で服を着替える。
ミニワゴンだけど、それ程窮屈を感じさせない、車内。
だからといって、着替えるのはさすがに無理がある。
「大丈夫か、命?」
うなりながら、着替えていた私に、凱は声をかける。
「凱、バックミラーで見てるでしょっ」
「見てないよっ」
うなりながら着替えていた私を心配してくれたのは分かる。
でも、こっちは悪戦苦闘でそれどころじゃないのよぉっっ。
だいたい、何で凱は私より、先に着替えているわけ?
私より、出て来たの遅かったよねぇ?
考えてもしょうがないから、必死に着替える。
何とか終わって、後部席から、助手席へと移る。
そこで、ホッと一息。
「命、お疲れさま」
「凱もね」
そう言いあってる間も、車は一路、雪山と向かう。
スキーに行くのか?って。
へへへ、実は、雪山のコテージでクリスマスを凱と私、二人っきりで過ごすために、向かっているのだっ(スキーもするけどね)。
渋滞にも遭遇せず、高速道路に乗れたのはいいけれど、時間はすでに八時を回っていた。
「あぁ、もう少し早く出られれば、今頃はコテージでのんびりとしてる頃だったのになぁ」
「そう言うなよ命。仕方ないだろう?向こうのパーティーをさぼるわけには行かないじゃないか」
「うん、分かってる」
凱の言葉に頷く。
向こうのパーティー。
GGGのビッグオーダールームで行われた、クリスマスパーティー。
今回の『事件』で共に戦った仲間達とのパーティーで、一応の終局を迎えた、お祝いと言う事で、大々的に…と言うわけではないけれど、それでも、何かパーッと騒ぎたかった。
…その気持ちは、分かる。
私だって同じ気持ちだもの。
だからってね、24日のイブにぶつける事はないと思うの。
私と凱、実は日付を知らされてなかったの。
それでなきゃ、わざわざ、当日にこの雪山デートをぶつけないわよ。
仕方ないから、抜け出す事に決めたのよね。
抜け出す時間、凱は、最悪な事にマサキとリュウセイに掴まっていた。
仕方ないから、先に私は抜け出す事にした。
抜け出す時、セニアに見つかって、ビックリしたけど、ニッコリ笑って頷いていたから…、どうやら見逃してくれたと思う。
セニアは、あの後どうしたのかな?
白河博士と一緒に抜け出したのかな。
分かんないけどね。
「でも、何か、ドキドキしたな。ビッグオーダールームから抜け出すの。誰かに見つかったらどうしようって本気で考えたもん」
「確かにな、パピヨンとスワンに見つからなかったのが良かったよな」
「ホントよねぇ」
GGGの隊員であるパピヨンとスワン。
私と同僚だし、仲もイイんだけど…、ちょっと怖い。
何でそんな事知ってるのぉっっって言う事、時々知ってるし。
敵に回したらヤバイ二人(特にパピヨン。諜報部に協力者がいる。もちろん、耕助)。
「けどまぁ、大丈夫何じゃないのか?」
「何で?」
「オレたち以外にも、抜けだそうとしていたヤツはいたみたいだしな」
「ホント?」
「あぁ」
そうか、まぁ、そうだよね。
せっかくのクリスマスだもん、大勢でやるパーティーも楽しいけど、やっぱりね、大好きな人と一緒にいたいって言うのも捨てきれないもん。
だから、私達は、こうやって抜けだしたんだけど。
高速を抜けて、山道へと入る。
暖冬だから、雪が少ないなんて言われてたけど、思った以上に雪があって、雪国に来たんだなぁなんて思う。
コテージにたどり着くと、辺りは雪一色だった。
「さむーいっ」
暖かい車内から降りると、さすがに外は寒い。
「命、早く中に入って、火に暖まろうぜ」
「うん」
荷物を持って、コテージの中に入る。
このコテージは獅子王麗雄博士の持ち物。
凱も、小さい頃に来た事があるんだって。
で、今回、凱が博士に言ったら、鍵を貸してくれたんだって。
中に入ると、…暖かくなかった。
外よりは、暖かいけれど、まぁ、人がいないんだからしょうがないよね。
掃除とかは、管理人さんがいてやってくれたそうだ。
リビングに入ると、目に飛び込んできたのは大きな暖炉、とその横に積み上げられた、暖炉にくべられる木。
「スゴーい、凱、早く火をつけよう」
「あぁ」
手早く、暖炉に木をくべて、火をつける。
火が、木に付き、乾いた木の音がして、何だかホッとする。
程良く暖まってきた部屋にようやく凍えていたからだが暖まる頃、シャンパンと簡単な料理をテーブルの上に広げる。
もちろん、ケーキも忘れちゃいけない。
「暖かいな」
「うん、私、暖炉がこんなに暖かいなんて思わなかった」
「まぁ、昔の人はコレで冬を越してたんだからな。今よりは寒かっただろうし…、そう考えると、スゴいよな」
「そうだね」
他愛もない話をして、料理をつまむ。
「凱、シャンパン開けてないっ」
「そう言えば、そうだった。何か忘れてると思ったら」
「忘れすぎだよね、私達。凱、開けて、シャンパン」
「了解」
冷えたシャンパンはいい音を立てて、蓋が開く。
シャンパンと同じように冷やしたグラスに注がれるシャンパンは、綺麗な金色をしている。
「おいしそう」
「命、メリークリスマス」
「メリークリスマス、凱」
ガラスのいい音をならして乾杯をする。
細かい炭酸が舌を刺激して、お酒の余韻を残しながら、喉を通っていく。
「おいしいね」
「あぁ」
二人で見合って、微笑みあう。
凱とこうやってクリスマスを過ごすのは初めてかな…。
高校の時も一緒にいたけど、こういう感じで過ごすのは初めてだし。
それに、一緒にはいられたけれど…、ホント、こういう風に過ごせるなんて、思いもしなかった。
もう、絶対無理だって思ってた。
凱がサイボーグになって、そばにいられるだけ、本当に幸せで…。
だって、凱が生きて動いてるって言うのが、嬉しかったんだもの。
今はもう、サイボーグじゃなくなったけれど…。
「命」
小さく凱が私を呼ぶ。
「何?凱」
「手を出して、左手」
「うん」
凱に言われるまま、左手を差し出す。
凱は、ポケットから何かを取り出し、私の…薬指にはめる。
…コレって!
「凱、…コレ」
「一応、クリスマスプレゼント…兼、その…婚約指輪っていうか…その…」
顔を真っ赤にして凱は恥ずかしそうに頭をかく。
「……私でいいの?凱。あなたの側にいるのは、私でいいの?」
「何言ってんだよ、命。命以外に誰がいるんだよっ」
凱…。
「俺は命のおかげで今までやってこられた。命がいたからココまでやってこられたんだっ。だったら、これからも命がいなきゃ、やっていかれないじゃないかっ」
…重荷じゃ…なかったんだ。
時々、凄い不安になった。
何者にも屈しないで立ち向かっていく勇者王。
いつもその姿を見て、勇気を与えられてきた人がたくさんいる。
もちろん、私もその中の一人だけど。
私の思いが凱の行く先を阻んでいないか…。
そう思う事が何度もあった。
でも、凱の言葉は、そんな思いも綺麗に消してくれる。
「凱、うれしい。ありがとう。本当に、ありがとう。凱に、そんな事を言ってもらえるなんて全然思わなかったから…」
「馬鹿だな…命。俺は、いつも命の事を思ってるんだぜ」
「…ありがとう、凱。そうだ、私から凱にプレゼントあるんだ。待ってて」
荷物の所に向かって、凱へのプレゼントは………。
………。
あ"っっ……。
「命?」
「………凱、あのね…」
「どうしたんだよ…命…」
凱が私の様子を訝しげに見る。
「あのね、凱、凱へのプレゼント、ロッカーに忘れてきたみたい」
「は?」
…そうよ、凱へのプレゼント…。
全部着替えも持ってきて、ロッカーの中に、置いていたのよぉっっ。
「…って…」
「だからね、GGGのロッカールームに忘れてきたみたい。ごめ〜ん!!!」
あぁ、私ったら、馬鹿…。
「ハハハハ、後でもらうよ」
「ごめんねぇ、凱〜」
凱が苦笑いする。
せっかく、凱に指輪ももらったのに…。
何か、悲しい。
「あんまり、落ち込むなよ、命。とりあえず、代わりの物もらうから」
「うん……」
ん?
代わりの物って何???
とりあえず、考えないようにしようっと。
ガイミコ。
ワープロソフトが数文字書いたら、フリーズして、ついでにパソごとフリーズしてしまう中、荒技使いましたよ。
そしたら、上手くいったのよっっ。
ブラウザの日記CGIの書き込み部分に書き込んで、それをコピーアンドペーストするって言う、大変な作業をしてました。
さて、ガイミコ。
ゾヌーダ命ちゃんの事については触れていません。
かる〜く触れてはいるかも知れないけど。
気分的には、素粒子菌に犯された命ちゃん&パレス粒子の時の命ちゃん。
あの時の命ちゃんは、すっご〜く辛かったんだろうなぁって凄い思うんです。