記憶。
ないことはひどく切ない。
でも、覚えておきたくない記憶だってある。
それでも、忘れないでおきたい。
ないと、切ないから。
記憶喪失だなんて、私は知らなかった。
「…ごめん…」
「どうして、謝るわけ?どうせ、私のことなんか、綺麗さっぱり、忘れちゃってるんでしょ?」
泣いて、叫んだ言葉に、目の前の人は、悲しそうな顔を見せる。
そんな顔、忘れちゃってる人に見せて貰ったってうれしくも何ともないのよ。
どうして、何もかも忘れるの?
「どれだけ、心配したと思ってるのよ!!どれだけ探したと思ってるのよ!!何でこんなに落ち着いてるのよ、何とか言いなさいよ、リランのバカ!!!」
リラン・イエナ・ザルツギッター。
私の幼なじみ。
恋人か?
と訪ねられたらきっと首を傾げるかもしれないけれど、私にとって、リランは大事な人なのは間違いなかった。
それが、どうして記憶喪失に???
私が必死になって探してたのに、すぐ側にいやがって、このクソバカ!!!!
「ティナ、落ち着いて」
「落ち着いてって、良く平気でそんなこと言えるわよね」
ホントあきれるわ。
何が、落ち着いてよっ。
ようやく見つけた人間を目の前にして落ち着けると思う??
「ティナ、いい加減にしろ!!!」
「何よ、リラ………???リラン?」
今、リラン、私の名前を呼んだ?
何で、記憶喪失の人間が私の名前を呼べるの?
「…なんだよ、人の顔じろじろみて」
「リラン」
「ん?」
「あなた、記憶喪失だったのよねぇ」
「あぁ…って、ティナ、いつの話だよ、それ。かなり前の話だぞ」
私の問いにリランはあきれた顔で応える。
「……いつ、……戻ったの?」
「結構、前?」
おどけて言うリランに思わず力が抜ける。
「結構前って、いつよっ」
「サガの家でお前と会ったとき?あの後、センター達がつっこんできたんだよ。その衝撃で思い出したってわけ」
「…サイテー」
「何がだよっ」
「私が心配してること知ってて、何も教えてくれないなんてサイテー」
「あのなぁ、お前、いつ心配してるって言ったよ」
「今、言ったじゃない。ずっと、心配してたって」
「今って……ティナ…お前」
リランの声に涙がまた、あふれてきた。
「ホントに、ホントに、心配したんだからね」
そう言った私をリランは抱き寄せ、小さくつぶやいた。
「心配かけて、ごめん…」
と。
「もう、記憶喪失って言うことにはならないから」
「ホント、もう忘れちゃったなんて……やだからね」
「あぁ」
そううなずいたリランの私を抱き寄せた腕が、少しだけ強まった。
*あとがき*
オリジナルで。
実は、ファルダーガーのカップルの中で一番お気に入りなのが、リランとティナのカップル。
ティナ、ちょっとしか出ないのに。
リランはサブメインだけどそれでもメインではないし。
でも、なんかお気に入りのカップル。
リランとティナ。
この二人+センターは幼なじみです。
記憶、実はMESSAGE聞きながらあの文章を読んでたら浮かんだ話なのですよ。
完成:2004/7/15