二人。
一人より、二人。
二人いることの利点と二人いることの不便。
…利点の方が多い?
幼なじみがいる。
一応、一人。
一応とつけたのには訳がある。
それは
「シェリー、次の街まで、結構あるみたいだぜ」
「その街までは行ったことありませんから、ゲートを開くことは出来ませんが」
「マジ?ゲート使えないんじゃ、歩くしかないよな」
「そうですね、最短距離ではこの森ですが、森はあまり通りたくありませんね。シェリーを危険にさらすようなものですし」
「確かにな。街道は…森迂回かぁ…迂回すると結構、街まであるなぁ」
「でも、旅行公司もあるようですし、宿がないという憂き目にはあいませんが」
「うーん。シェリー、どう思う?」
「どう思いますか?」
…………。
声だけ聞いていれば、この場には私ともう二人いると思われるだろう。
けれども、この場に実際見える形としているのは私ともう一人しかいない。
もう一つの声は見えざるモノか??
そう思われる人もいるかもしれない。
実際正しい。
けれども、もう一つの声は、もう一つの人間から発せられているのだ。
「シェリー?」
物腰が柔らかいシュウの声。
「シェリー?どうしたんだよ」
まっすぐな性格を雄弁に物語っている、ゼンの声。
私の幼なじみは一応ゼン・ウィードと言う人間。
でも、シュウという人間がゼンの中にいるから、二人。
つまり、実質として、私の幼なじみはゼンとシュウの二人というわけで…。
でも、実際、見た人は、私の幼なじみはゼンしかいないと思っている。
良いんだけど。
この二人の会話を聞いた人は必ず驚く。
同じ人間が発する二つの声。
同時に出るときもあるから、腹話術士も、物まねする人もビックリだ。
私には幼なじみがいる。
一応一人。
でも、本当は、二人。
*あとがき*
不思議なゼンとシュウの話。
最初、双子にしようかと思ったんだけど、不思議な二人がいることを思い出して。
シェリーは皆口裕子さん、ゼンは緑川光さん、シュウは子安武人さんで。
完成:2004/7/17