君は誰?
そう問い掛けられたら何て答える?
「何で、青子の目の前に立ちふさがるのよぉ!!!」
白いスーツに紫のワイシャツに赤のネクタイ、そして、シルクハットに右目のモノクル、肩に掛かったマント。
全てが、彼を演出していた。
「ちょっと、聞いてるの?なんで、青子の前を、ふさいでるの?」
口元しか見えない、彼の表情。
その口元は軽く上がっていた。
「何?青子に何のようなの?」
「オレをつけてきたのは、そっちだろ?」
低い声で青子に話しかける。
本当の声かは分からない。
彼は変幻自在に声を使い分けるのだから。
「別に、青子はつけてきてないっ」
気圧されないようににらみつけながら言う。
でも、彼をつけたのは、ホント。
お父さん達が必死で追い掛けている人間、青子の手で捕まえられたらどれだけ良いか。
そう思った。
悔しいじゃない。
追い掛けても追い掛けてもすぐに逃げられる。
捕まえたくなるじゃない。
「青子が、オレのことを捕まえるの?」
バカにした口調が…似てた。
「何よ、快斗のバカっっ」
思わず、叫んだ。
快斗のはずないのに、どうして快斗だと思ったの?
「快斗って誰?青子」
「青子の事、青子って勝手に呼ばないで」
「誰だったら、呼んで良いの?」
「…関係ないでしょ?怪盗キッドには関係ないでしょう?」
一瞬だけ、鉄壁のポーカーフェイスが崩れた気がした。
「誰だったら?良い?」
さっきの表情は気のせいだったのか、キッドは青子に一歩近づく。
「近寄らないでっ」
「応えて、青子」
「何で、怪盗キッドにそんなこと言わなくちゃならいのよっ!!」
「知りたいからに決まってるだろ?青子」
そう言い、キッドはもう一歩近づく。
「ちょっと、何近寄るのよ」
怖くて、後ろに下がる。
「青子が逃げるからだろ?」
腕を捕まれる。
「…っ」
息が出来ない。
「青子」
静かに呼ぶ声。
「オレの方見て」
俯いている青子をあやすようにキッドは柔らかく言う。
「青子」
何だろう。
この感覚。
快斗じゃないのに、どうして快斗を思い出させるんだろう。
「青子」
顔を上げると、涙でゆがんだ先に、モノクルがかかった顔がそこにあった。
どうして、同じ顔してるんだろう。
どうして、同じ顔なんだろう。
「……誰なの?それも、変装なの?」
青子の言葉に、今度こそ、怪盗キッドはそのポーカーフェイスを崩した。
*あとがき*
難関、君は誰?
ネタが浮かばなかった。
でも、青子の一発目の台詞が出た瞬間に全てが完成した。
と言うわけで、最低快斗登場。
途中の快斗は「オレの名前言ってよ」気分大。
ところが、近寄った瞬間に、青子を泣かせ、ばれたって言う状況に陥った。
そこでうかつ快斗登場。
うかつさは工藤と同じぐらいか?
出来れば、工藤さんの方がうかつ度大の方がいいなぁと思います。
完成:2004/7/21