シンドローム[syndrome]:症候群. 原義は医学用語で, 同時に発生した一連の症状を総括的に表す名称. 今日では, 「…への傾向」, 「…的性向」 という意味で広く用いられる。
重力の底で眺める、空に浮かぶ星々。
体に感じる引力は、作られたものではない。
生まれ育った宇宙から、この底におりてくると、とらわれた気分に陥るのは、過去の思想家だったか、革命家の言葉を思い出すからなのか、よく分からなかった。
「何、見てるんだ?」
不意に声が聞こえる。
起きあがってみれば、彼がいた。
「何見てたんだ?」
もう一度、聞かれて空を見る。
「コロニーには堕ちることのない星々」
引力に惹かれて、星は空から、重力の底に堕ちてくる。
引力そのものが存在しないコロニーには堕ちることはない。
今感じている重力を目指して飛んでくる星のかけらがぶつかりそうなときはあるけれど。
「……コロニーからは、こんな風には見えないよな」
「そうだね…」
たくさんの星々。
こんなにたくさんの星があるのに、どうして人は地球に恋いこがれるのだろう。
「引力に惹かれるのは何故?」
「プログラム」
「へ?」
彼の言葉に、驚く。
惹かれるのは決められたこと?
「遺伝子レベルでプログラムされたことだって言う説もあるけど、オレは違うと思う」
「何?」
わたしの隣に座り、同じように空を見上げながら、彼は言う。
「そこにあったのが地球だったから。悪い意味じゃなく、地球だったから。地球しかなかったから、だから人は宇宙に出ることを思いながら、この星の引力に惹かれる。誰かを好きになるのと一緒だよ。自分にあった人はその人だったから、その人しか見えない。ものすごく、盲信的だけど、でも、感情としては正しいよな。その人だから、その人を好きになった。一緒だろ?」
彼の言葉に静かにうなずく。
「地球に恋いこがれるのは悪くないよ。宇宙にいることだって悪くない。人が人を好きになることだって悪くないだろ?好きだから、その人から離れるっていうのも逆説としてありだよ。だから、間違っていない。それが分からない奴もいるけどさ」
星々が輝く空を眺めて、彼の言葉を考えた。
引力に引かれる様に、寝転がる。
体全体に感じる引力は、そこにそれがあることだけを感じさせた。
*あとがき*
考えた末に、コロニーカップル。
なんだか、ラブくないのは、戦争中だと言うことで。
基本は戦後だったんだけど、「引力に惹かれた人々は〜」という某革命家さんの台詞を聞いてしまったので。
Zブーム到来。
って言うか、今、地元TVで、Zガンダムがやってるんですよ。
その影響が大きいです。
ホントはもうちょっとラブくしたかったんだけど…。
完成:2004/7/22