手が冷たい人は心が温かい人。
手が温かい人は心が冷たい人。
俗に言われてることは、実際は冷たい手の人を慰める言葉だとか。
ふれた瞬間どきっとした。
あまりの冷たさに、ではなく、その反動の暖かさで。
クリスマス間近に起こった殺人事件。
解決するために出した名『工藤新一』。
それが仇となり、蘭は冬の寒い中、ずっとオレの家の前でオレが帰ってくるのを待っていた。
蘭が、寒い夜にオレの家に前に行くとは想像していなかった。
いや、していたのかもしれない。
けれども、待っていたことに、何もいえないでいる自分がもどかしくなった。
声だけでも、聞かせたかった。
オレのことを『好きだ』といってくれた蘭に。
今はまだ、『江戸川コナン』=『工藤新一』と言うことを蘭には言えない。
そのための、罪滅ぼしと言えば、自分の中で納得できた。
蘭が家に上がったタイミングで電気を消す。
階段の段差を利用し、手すりに手をかけた蘭の手に触れる。
寒さの反動で暖かくなっていた手に、言葉を忘れた。
蘭が、オレの名前を呼ぶまで、声を出せなかった。
冷たいと思っていた。
3時間。
待っていたから、冷え切っていると思っていた。
その反動は、大きかったことを今更ながらに知らされた。
ごめん。
そう言えば、君は許してくれる?
僕はいつも君の側にいるから。
そうは言えないで、蘭の前から『工藤新一』はどこかへ行かなくてはならなかった。
『じゃあな、蘭…』
交わした言葉の最後に、そう告げる。
いつ、自分の声で話すことが出来るんだろう。
いつ、変声機がなくて普通に蘭と話す日がくるんだろう。
触れた手は次第にまた冷たくなっていた。
あげたクリスマスプレゼントで、暖めて欲しい。
今は、それしか出来ないから。
*あとがき*
と言うわけで、冷たい手。5巻の雪降る新一宅の話がベース。
そこの中での新一の心境。
って言うか、米花町雪降りすぎだから。
部屋の窓に雪が降ってる様子のシーン好きです。
冷たい手といって、それしか浮かばなかったんだよ。
でも蘭ちゃん、小学校1年生の手と高校2年生の手の大きさ、形の区別が付かないとはどういう事だ!!!
まぁ、冷静じゃないからしょうがないっちゃーしょうがないんだけどね。
完成:2004/7/11