携帯の音。
待ち遠しかったり、鬱陶しかったり。
好きな人からの電話は待ち遠しくって、それ以外の電話は鬱陶しい。
でもね…。
教えるつもりなんて、本当はなかった。
でも、知りたそうにしていたから、教えただけ。
それでも……。
掛かってくることを期待してる自分がいる。
相手は、探偵。
今、自分が気にしているのは探偵ではなく、その相反する存在の怪盗なのに。
それでも、気にするのは、彼の…。
彼の何?
浮かんだ感情が、掴みきれずに首を傾げる。
そして、タイミング良く鳴り響く携帯の着信音。
メロディまで設定している自分は何を考えているんだろう。
「何ですの」
「夜分遅くに申し訳ありません、紅子さん」
電話の向こうで微笑んでいる彼の姿が浮かぶ。
彼の微笑みが厄介だと感じるのは、私が怪盗を気に入っていて、そして、彼が怪盗を気にくわなくおもっているからなのだろう。
シニカルな笑みを浮かべ、怪盗とやり合う様は、見ているこっちが心臓に悪い。
「出てくださってありがとうございます」
「何故?」
「着信拒否、されるかと思ってましたから」
さりげなく、紡ぎ出される言葉にあっけに取られる。
「ご希望に応えた方が良かったかしら?」
「そうしたら、またかけてしまうと思いますよ」
「他人の迷惑を考えないのかしら?あなたらしくないわね。白馬君」
「あなただから、そうなってしまうんですよ。探偵としては不必要な感情ではあるのですけどね?」
と彼は笑う。
電話口の向こうで苦笑しているのだろう、容易にその顔が浮かぶ。
それを考え、自分の口元が微笑んでいることに気が付いた。
「紅子さん?」
急に黙り込んだ私に、彼は驚いたのか、私の名前を呼ぶ。
「何でもないわ。気にすることないわよ」
そう言って、もう一度微笑む。
もう少し、彼と言葉のやりとりを楽しむのも良いだろう。
お互いの軽口の奥に隠した小さな本音を探すのも悪くない。
きっと、彼は『悪趣味だ』と言うかもしれないけれど。
怪盗との駆け引きはあまりにも彼が素直すぎてつまらない。
だったら、探偵の彼は???
そう考えて、やっぱり悪趣味なのかもと一人、思案にくれた。
*あとがき*
まじっく快斗と書いてあるくせに、登場人物は紅子様と探君。
快斗×青子と思った方ごめんなさい。
どこかに、快斗×青子も出しますよ。
で、白馬さんが八戒っぽくない?
なんてツッコミはなしよ。
同じ、石田キャラつながり〜な感じで書いてるんだから。
完成:2004/7/10