ハジメマシテ。
一つの出会いにより運命が変わることは良くあること。
運命の出会い。
本当にあるんですよ。
*転んだ偶然*(名探偵コナンより、藤峰有希子&工藤優作)
「有希ちゃん、大丈夫?かなり緊張してない」
「してるわよ。どうしよぉ、英理ちゃん」
「有希ちゃんなら大丈夫っ。頑張ってっっ」
親友の励ましに、私は力弱くうなずく。
今日は、オーディション。
モデルとして鮮烈デビュー、アイドルとして芸能界デビューし、ドラマ出演も多くなってきたこのごろ。
更なる飛躍のために、今日はオーディション会場に向かう。
とある人気作家の映画化の為の主演女優オーディション。
結構人気な作家らしく、今回の映画化は最初で最後と言われているぐらい巨大プロジェクト。
オーディションも、スターへの道が開けるだろうと言うことで、国内の全ての芸能プロダクションは力を入れ、少なくとも一人は必ず参加させているという噂すらある。
私で…大丈夫?
親友の英理ちゃんや小五郎君が大丈夫って言ってくれたけど、事務所の社長や、マネージャーも大丈夫って太鼓判押してくれたけど……。
不安なものは不安なのよぉ!!!
はぁ、どうしよぉ。
天才っだなんて言われたって。
緊張だってするし、失敗だってする。
だからね、だからね。
人にぶつかってこんな所で転んでる場合じゃないのよっ。
確かに、周り見えてない状況になってるわたしに原因があるのはわかってるけど、緊張でどうしようもない状況にいるのに、そんな余裕ないわよぉ。
「大丈夫?」
突然、柔らかい声が頭上から聞こえてくる。
目前にあるのは差しのべられた手。
顔を上げてみてみれば、わたしと同じぐらいの男の子。
ちょっと、生意気そう+女の人になれてそう。
ってこと、同じ年ぐらいの男の子に言う言葉じゃないけどね。
「あ、ありがとう」
差し出された手を取り、立ち上がる。
「随分、落ち尽きなさそうにしてたけど、何かあったのかい?差し当たりがないのなら教えてくれないか?」
ぶつかってしまったのはこっちにも非があるわけだし。
そう、言葉を付け加えて彼が言う。
「ご、ごめんなさい」
その言葉に驚いたのは彼。
「どうしてあやまるんだい」
「私、時間がないの!!!!!」
そう言って、彼の手を見つめる。
その手にはしっかり私の手が握られていて、離してくれない。
「…あっっ……」
ようやく気が付いてくれたのか、彼は手を離してくれる。
その顔は、ひどく真っ赤で、…女の人に慣れてそう…って一瞬思ったことが一気に吹き飛んだ。
「す、済まない。別にボクはっ」
「いいのよ。ありがとう、私は、もう行くわね」
「…そうだ、名前、教えてくれないか?」
いきなり、ナンパされる。
って、言うか、なんであたしのこと知らないのよぉ!!!
わたし、一応アイドルよねぇ??
トップアイドルよねぇ?
なんで、私のこと知らないの?
「私は、藤峰有希子よ。知らないの?私、アイドルなんだけど」
「…あまりテレビを見ないからね」
「そ、まぁ、良いわ…ってホントに遅れる!!!!!。じゃっっ」
挨拶もそこそこに私はオーディション会場に向かうために、走った。
オーディション会場は近所とはいえ、遅刻なんて、しゃれにならないからぁ!!!
会場に着くと、私の出番まではまだ時間があって、オーディションの時間には間に合ったらしい。
先に付いていたマネージャーにこっぴどく怒られたけれど。
ちょうどオーディションが終わった仲のいいアイドルにオーディション内容の事を少し聞いてみたら、な、なんと原作者の工藤優作が来ているらしいのだ。
とはいえ、あくまでも噂は噂。
話半分で聞いておく。
そして、私の出番。
き、緊張してきたぁ!!!!!!
どうしよぉっっ。
「大丈夫よ」
マネージャーに励まされ、扉を開け、中に入る。
監督や脚本家の他にいろいろな人がいた。
そして、
「初めまして、藤峰有希子さん、僕が原作者の工藤優作です」
転んで、ぶつかった相手がいた。
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1年後、映画初主演作となったその映画は封切られ、大盛況。
そして、その3年後、私は、ぶつかった相手と結婚することとなる。
オーディションの間はそんなこと夢にも思わなかったけれど。
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*あとがきにょろよ*
優作さんと、有希子さんの出会いを書いてみました。
若き推理小説家工藤優作。[1412]を模したのはやはり彼か?
まさか、出会いが優作原作の映画化だなんて…。
その後結婚かぁ……そして引退しちゃうのねっっ。
有希子さん。
同い年ぐらい、というのは決して同い年ではないのですが。
同い年でもいいかなぁと
優作さんと有希子さん。
2003/7/10完成