anker 1
「あーや、試験の結果出てるよ。予想どおり、わたし達2nd」
「やっぱり…。で、相手の発表は?」
「まだ」
私は、戸塚綾弥。
国際秘密工作部隊(International secret special Agents)の予備隊員サードに所属してます。
国際秘密工作部隊っていうのはありとあらゆる事を大胆かつ秘密裏に行う団体の事。
ま、簡単にいえばスパイみたいな感じかな?
具体的に言うとある邪悪な組織の壊滅とかぁ、誘拐されちゃった著名な人物の救出とかを各国の政府から依頼を受けて行動するんだ。
…スパイ大作戦!って感じ。
かな?
で、正隊員をアンカーって呼ぶんだけどそのアンカーには2種類あって3rdの成績優秀者からなる1stと助手の2ndに別れる。
成績が優秀じゃない場合は大体2ndなんだよね。
で、私はその2ndってわけ。
ついでに言うと私に教えてくれた小室紗里衣と工藤啓は私の落ちこぼれ仲間って訳さ。
「ひでーよな、人の事落ちこぼれ呼ばわりして」
「でも、啓も2ndでしょ?」
「…悪かったな」
あたしの言葉に啓はいじけながら答える。
「はーい、落ちこぼれ3人組達」
「む、薫女史その言い方はないでしょう」
「ごめんね綾弥」
薫、桜井薫はわたしの勉強(?)の先生、だけど同い年。
あたしや他のいろんな人の悩みの相談に乗ってくれて、尊敬、畏敬の念を込めて薫女史と言うふうにも呼んでたりする
「で、薫は…1st?」
「もちろん、そうそうパーティ決まったわよ」
との言葉にあたし達は一斉に薫に注目する。
「あたしのセカンドは啓、あなたよ」
「…えっ…薫女史?」
「…嫌なの、啓」
「いえ…別に」
薫の言葉に啓は押し黙る。
「で、あたしと綾弥は?誰?」
「サリィは安藤雅樹よ」
「え、雅樹が1st?何か逆って感じ」
「サリィ、そう言わないの。で、綾弥…あなたの1st厄介よ」
薫はそう言い言葉を止める。
「………誰…?」
「…都築…雅」
薫の言葉に辺りは一瞬だけ止まった。
「って…あのサードの成績万年トップの超天才で気難し家で有名なあの都築雅?」
「…やだーーーーーーーあたし」
「そんなこと言ったって…向こうが選んだはずよ」
えっ1stって2ndの事選べるの?
「まぁね、希望があれば選ぶことは可能なの。まぁ…成績の限度で言うことみたいだけど…。選ぶ人ってそんなに居ないからあんまり細かいことは言われなかったみたいだけど」
「じゃあ、薫女史はおれの事選んだって訳?」
「んん、あたしは希望無し。選んだのは雅樹と都築雅だけよ」
薫の言葉にただいまあたしは困惑中。
だって、私あの人と喋ったこと、ほとんどないわよ。
それにあの人なんか冷たいし。
「でも、雅の方はあなたの事気に入っているはずよ」
気に入ってるはずって言われても。
接点ないよ。
「でもねぇ」
薫はそういってため息をつく。
「紗里衣ここにいた!捜したぜ紗里衣」
と、叫びながら安藤雅樹がやってくる。
アンカー訓練生(以下3rd)の中でかなり問題だった人物。
かなり問題ありのいたずらを仕掛けるのが好きな奴で問題児の啓と一緒にいろいろと騒動を起こしていた奴なのだ。
「雅樹、何しに来たの?」
「紗里衣のこと迎えに来たんだぜ。これからサードから卒業の認定式だって。1stと2ndが一緒に行かなきゃならねぇんだよ」
「あ、そうなんだ」
紗里衣が雅樹の言葉に納得する。
「そうだ、忘れてた。啓、あたし達も行くわよ」
………私は?
どうするの?
「とりあえず、一緒に行きましょう、知り合いじゃない人もパーティー組んでる人は多いんだから」
薫の言葉に私はみんなとともに行くことになった。
「雅、こっちよ」
薫が突然、都築雅に声をかける。
「薫女史、呼んだ?」
「呼んだわよ、綾弥の事捜していたんでしょう?」
「なんだ、捜してたんのかよ。ほら綾弥」
薫と雅樹が二人して私のことを押し出す。
やめてよねぇ。
「綾弥、ほら挨拶しろって」
と、雅樹が言う。
啓と紗里衣は薫と雅樹の裏にいてあたしの様子を窺っていた。
ちょっとは助けてよぉ。
「…始めまして、戸塚綾弥です」
先手で挨拶する。
「雅、綾弥に挨拶したらどうなの?」
ちらっと私を見ちょっとだけお辞儀をする。
そして、
「着いてこい」
そういった。
何なの?
この人。
始めましてぐらい言いなさいよ。
「綾弥、雅にそれを求めるのは無理だって」
雅樹が都築雅の援護をする。
どういうことよ。
「あいつ、あれでも人見知りするんだから」
と。
人見知りが何よ、あたしだって人見知りするんだぞ!
自分がするからってきちんと挨拶ぐらいしなさいよ。
私は都築雅の態度に納得いかなかった。
都築雅、3rdの中でトップの成績をずーっとキープし続けた男。
クールでアンカー始まって以来の天才。
彼の周りにいる人物はすべて成績上位者ばかり。
彼の行動は不可解なことばかりだ。
分りたくもない。
そんなこんなで無事、アンカーの認定式が終わり、私は改めて都築雅と対峙した。
「綾弥、これからすぐに荷物をまとめろ」
と、いきなり名前で言われる。
ちょ、ちょっと初対面の人物を名前で呼ぶあなたは何者?
「みや、綾をよろしくね」
「…、言われなくても…わかってるけど。薫女史」
「ふぅ、ホントに分かってるのかしらね。雅は。ともかく、綾、いちいち、雅の行動に反応しないこと。そうしないと疲れるわよ」
もう疲れてるってば、薫。
ともかく、私は都築雅に言われるまま荷物をまとめたのだ。
とは言うものの、私の荷物と言うものは膨大だったりする。
非合法ではありながらも警察から助けを求められるプロのハッカーである私にはたくさんの機材が存在していた。
巨大なパソコン群…ではない。
小さい機械が私の部屋所狭しと置いてあるのだ。
何重ものファイアーウォール。
機械に機械に機械をかけてる…。
ソフトだけじゃ、ハッキングされたとき防ぎきれないからだ。
『あーや?仕事だよっ』
人工知能入りのパソコン…ではなく、プライベート専用のパソコンから通信が入ってくる。
相手は、ハンドルネーム、シェリングもとい工藤啓。
啓もハッカー仲間。
警察からの仕事は啓が持ち込むことが多い。
「啓?仕事って言ったって無理だよ」
『分かってるよ。オレもさ、これから引っ越しなんだよ』
「薫と同居?頑張って」
『それは、こっちのセリフだよ。あや』
うるさい、啓。
「啓、いたわってくれるんだったら、変わって」
『そんなの無理に決まってるだろあや』
「言ってみただけよっ」
アンカーは1stと2ndは異性でなければならない。
って誰が決めたわけぇ?
嫌だよぉ…、都築雅なんて……。
『あーや?どうしたの?』
もう一人のハッキング仲間、ティアラもとい小室紗里衣。
このアンカー落ちこぼれ仲間がアンカーの1st候補のトップクラスのメンバーと組めたのは…ハッキングの腕を買われたせい?
そんなはずないか?
「紗里衣、あんたはもう引っ越したの?」
『まだだよ。あや、引っ越し終わったら連絡するね。レンから仕事の依頼が入ったの』
レンって言うのは裏情報屋さん。
レンというハンドルネーム以外何も知らない謎の人物だけど、信用に足りる人物であることは間違いない。
パクられないし。
そういう問題じゃないって?
『仕事ってどんなやつ?紗里衣』
『さぁ、詳しいことは後で連絡するって言ってたよ』
「……ISSAの仕事とぶつからないよね」
『そんな噂あり?』
「さっき、都築雅が言ってた。もしかすると仕事が入るかもって」
『めんどくさ。アンカーの仕事っていわゆる工作員みたいなやつだもんな…』
と啓が愚痴る。
「愚痴ったってしょうがないよ。そろそろきるよ。もうだいたい終わったから。あとはこれ引き上げるだけだからね」
『相変わらず機械だらけなんだ』
うるさいっ。
紗里衣の言葉に毒づきながらわたしはパソコンの電源を落とした。