
「凄い〜! パウダースノーだわアリオス!」 アンジェリークは、本当に嬉しそうに駆け回り、雪をすくったりして遊んでいる。 「犬みてえ、おまえ! おまえこういうの好きだもんな?」 二人は今、ロマンティックで知られている、マウント・ホワイト・エンジェルに来ている。 雪好きな彼女のために、アリオスが連れてきてくれたのだ。 勿論、日ごろ忙しくて構って上げられない彼女への、ささやかな罪滅ぼしでもあった。 「行くぜ?」 「行くってどこへ?」 アンジェリークは雪と戯れながら、大きな瞳を彼に向けてきょとんとしている。 「ゲレンデ!」 「え〜、滑れないわ!」 急に萎縮して、アンジェリークは子供のように拗ねた。 「だから、俺がコーチをしてやるよ?」 その誘いは、とても魅力的で、彼女はピ足りと拗ねるのを止める。 「・・・判った・・・、やるわ」 やっぱりとばかりに、アリオスは彼女の身体を抱き寄せて、ニヤリと笑う。 「だったら教えてやるぜ? 手取り足取り腰とりな?」 一瞬、アリオスにヒップをそっと撫で上げられる。 「きゃあっ! アリオスのスケベ!!!」 「ほらいくぜ?」 「待ってよ〜!!」 アリオスの後を追うようにして、アンジェリークは走ってゲレンデへと向った。 --------------------------- 「さてと、始めるか!」 ゴーグルをかけたアリオスは、とても素敵で、アンジェリークは思わずうっとりと見惚れてしまう。 「スキー靴をつけて、歩くところから始めねえとな」 「・・・う・・・うん・・・」 アンジェリークに緊張感が走る。 彼女は恐る恐る足を動かして、パウダースノーの上を歩く。 「恐がらずゆっくり」 「うん」 震える足で、彼女は何とか歩行をしている。 「これに慣れたら滑れるから」 「うん」 何とか、彼女は歩けるようになり、アリオスはやれやれとばかりな表情をした。 「ようやく歩けたな? 次は、滑降だな。俺のを見てろよ?」 「うん」 彼は構えから違った。 簡単な傾斜といえ、難なく滑り落ちてゆく。 アンジェリークは、アリオスのかっこよさに見惚れてしまう。 周りの女性たちも、アリオスを見て色めき立ち始めている。 簡単な傾斜でも、技術のあるものの滑降は、誰だって判るのだ。 彼はすっと、アンジェリークの目の前にさりげなく滑りながらやって来た。 「凄いわ! アリオス!!」 アンジェリークが手を叩いているのをみて、アリオスは厳しい眼差しを向ける。 「ほら、次はおまえだ」 「え!? 私!」 途端に彼女の顔は真っ青になり、がたがたと震えだした。 「こけそうになったら、ケツからこけりゃあいい」 「うん」 アンジェリークはから元気な返事をした後、雪を蹴って滑り始める。 途端。 「きゃああっ!!」 数メートル走った所で、アンジェリークはしりもちを着いた。 「・・・アリオス〜!」 アンジェリークはしりもちを着いたまま、涙を一杯溜めてアリオスを見上げている。 「ほら。立て」 あたりまえのようにアリオスが手を差し伸べてくれ、アンジェリークはそれに掴まり立ち上がった。 それから---- アリオスの厳しい指導の元、何度か、しりもちをつくことを繰り返して、アンジェリークはようやく滑降だけでも出来るようになった。 ただ、まだ滑ることができるだけで、他の技術はまるで出来ない。 リフトにも乗れないありさまだ。 「すみません!」 声を掛けられて振り返ると、OLたちがアリオスをうっとりと、そしてどこか下心あリげに見ていた。 「・・・あの・・・私たちにもスキーを教えてくださいませんか?」 色仕掛けでアリオスを見つめる、美しい女たちに、アンジェリークは気が気でない。 あの人たちより、私はずっと子供っぽい・・・。 不安げにアリオスを見つめると、彼は華奢な腰をぎゅっと抱いた。 「悪ぃな? 俺はこいつ専用なんでな?」 アリオス・・・! アンジェリークは嬉しいやら照れくさいやらで、頬を紅に染める。 「そう・・・、判ったわ・・・」 OLたちは少し悔しそうな表情をすると、そのまま立ち去った。 「さてと、飯食いに行くから板外せ」 「うん」 言われるままに板を外して、彼女は準備を整える。 「はいオッケイよ」 「ああ」 そのままアリオスは舌に降りてゆき、アンジェリークもそれに続く。 「アリオス・・・」 「何だ?」 「さっき・・・嬉しかった」 アンジェリークが彼の腕を持って、本当に幸せそうに微笑んでいる。アリオスもまたそれが可愛くて深い微笑を浮かべた。 「あたりまえのこと言ったまでだろ?」 温かいものをお腹に入れて、午後からは、リフトで少し高い所に行くことになった。 リフトに乗るのも、全部アリオスが助けてくれて、アンジェリークは何とか載ることが出来、安心したのもつかの間 今度は長距離の滑降が待っている。 「先ず、が滑るから見てろ」 「うん」 アンジェリークがしっかり頷いたのを合図に、アリオスは滑り始めた。 「今よ、チャンスよ」 先ほど、アリオスにコーチングを引き受けてもらえなかったOLたちが、腹いせにと、近づいていることをアンジェリークは気がつかなかった。 どん---- 「きゃああっ!」 そのまま思い切り背中を押されてアンジェリークは、斜面を急速に滑り落ちる。 「助けて!!! アリオス!!」 その心からの悲鳴に、アリオスは滑降を止め振り返った。 「アンジェ!」 「助けて!!!」 アンジェリークはパニックに襲われ、彼の名前を呼ぶ。 「アンジェ!!! ケツからこけろ!」 その一言に頷いて、意を決して、アンジェリークはお尻からこけた。 「きゃあっ!」 上手く転んだ彼女をアリオスは助けに行った。 「アンジェ!!」 アリオスはすぐさまアンジェリークに掛けより、彼女の身体を起こしてやる。 「大丈夫か?」 「うん・・・っ!」 彼女が立ち上がろうとしたとき、少し顔をしかめた。 「どうした!?」 「足首が・・・、ねじったみたいで、痛い・・・」 「ここか?」 彼が触った個所がとても痛くて、アンジェリークは顔をしかめる。 「判ったすぐに医者に見せるからな? とりあえず下まで降りるぞ? 俺の腰に掴まれ」 「うん」 「 アンジェリークは、アリオスの腰に手を、合わすと、彼は下までスキーで折り始めた。 「大丈夫か!?」 「うん・・・」 少し足首には痛みが走る。 だが、アンジェリークはかぜになったような気分だった。 アリオスの背中に身体を凭れさせて、その温もりを感じながら安心していた。 ---------------------------- 結局、スキー道具はホテルまで運んでもらい、アンジェリークはアリオスに負ぶさり、近くの診療所での診察の結果゛軽い捻挫"と診断された。 このスキー場は温泉にも恵まれているから、温泉に入れば直ると、医者は笑いながら言ってくれた。 「しかしご主人は凄い慌ててましたねえ。愛されているんですな、ご主人に」 と、帰り際に言われ、アンジェリークは頬を染めながらもしっかりと頷いたのであった。 「明日から、スキーできないね、ごめんね?」 「かまわねえよ。温泉に入ってゆっくりして、ロープウェイにも乗れるしな?」 「有難う・・・」 アリオスのこういったさりげない優しさが、嬉しくて堪らない。 「俺たちの泊まってる部屋には露天風呂と屋内風呂が小さいがついてるからな? 今から入ろうぜ?」 「え!?」 アンジェリークは真っ赤になりながら彼を見上げる。 「おまえの足ゆっくりマッサージしてやるよ!」 ニヤリとアリオスが良くない微笑を浮かべ、アンジェリークはようやくその意味を解する。 「・・・もう、バカ・・・」 その夜、アンジェリークは散々露天風呂と屋内風呂でアリオスに可愛がられた・・・らしい・・・。 |

コメント
58000番を踏まれた朝倉瑞杞様のリクエストで
「ウィンタースポーツをする二人」です。
かなりあまあまな二人になってしまいました。
露天風呂書かなきゃダメですか?
