Christmas Through Your Eyes

3


 幻想的で温かなイルミネーションの中を、アリオスに手を引かれていく。
 大きな手に包み込まれて、アンジェリークは胸が激しく鼓動するのを感じた。
「・・・綺麗だな」
「はい。派手すぎず、地味すぎず丁度良い感じですね・・・」
 アンジェリークはうっとりとしながら、イルミネーションを見つめる。
 アリオスに手を握られているというだけで、彼がそばにいるだけで、すべてがロマンティックに感じてしまう
 肌と肌がほんの少し触れ合うだけで、世界が薔薇色に見えてしまうのはなぜだろうか。
「これ見たら、メシ でも食いに行くか? どうせおまえのことだから、渡したクーポンをまだ使ってはいねえだろうしな」
 何もかもお見通しの彼に、彼女は少し恥ずかしそうに俯く。
「有り難う」
 ふたりは手を繋いだまま、光のペイジェントを楽しんだ。
「あのへんなくまのイルミネーション、おまえそっくり」
「嘘!」
 イルミネーションのくまは、とてもコミカルな顔をしており、アリオスの笑いを誘う。
「こんな、ヘンな顔はしてませんっ!!」
 アンジェリークが頬を膨らませて言うと、彼は本当におかしそうに喉を鳴らした。
「本当かよ?」
 いきなり顔を近付けられて、アンジェリークは心臓の鼓動を早くさせる。
 大きな瞳を見開いて、本当に羞恥と緊張のなかにいるようだ。
「クッ、今の顔を見てみろよ? 本当にあのクマみてえだぜ?」
 憎らしいほど素敵な笑顔を向けられるものだから、それ以上の反論は出来そうになかった。
 名物ということもあり、人々の波は緩やかに続いている。
「ほら」
 誰かの肩にぶつかりそうになると、アリオスが上手くフォローしてよけてくれる。
 その度に、アリオスの精悍な胸に肩が当たり、躰を震わせた。
 いやに恋人たちが多い、スポットに差し掛かってくる。
「すごくカップルが多いですね?」
「ああ。この教会が象られたイルミネーションの前で愛を誓うと、必ず成就すると言われているからな」
「そうなんですか・・・」
 うっとりとアンジェリークは見つめながら、ロマンティックな想いに夢を馳せた。
「おい・・・」
 低く緊迫感のある声が耳元に響き、アンジェリークは張り詰めた緊張感を感じる。
 何かがあるのは直ぐに判った。
「今から俺の言う通りにしろ」
「はい・・・」
 返事をするなりいきなり抱き締められる。
 彼の香りをかぐだけで、胸が苦しくなった。
 顎を持ち上げられて、顔が近付いてくる。
 その行為に、唇が震えた。
「あっ、私・・・」
「黙ってろ・・・」
 甘い声をそれ以上上げさせないように、少し冷たい唇が重なってくる。
 触れた瞬間、その部分だけが蕩けるような熱になった。
「んんっ!」
 しっとりと包み込むように唇を吸い上げられた後、舌が歯列を割り、口腔内に侵入してきた。
 舌が上顎部分を断続的に愛撫をし、頭の芯がぼんやりとしてくる。
 ここがどこにいるのか、誰かに見られているのか、考えられなくなった。
 唾液が口から流れていくが、それを構わずに、アリオスはキスを続ける。
 アンジェリークは躰の力が抜けてしまい、アリオスにしがみついておかなければ、立っていられなかった。
 ようやく離された時には、息も出来ない。
 アンジェリークは大きく深呼吸をすると、アリオスの胸に抱かれる。
「いいか、俺の言う通りにしろ。恋人同士のように振る舞ってくれ。いいな?」
「はい」
 唾液だらけの唇を恥ずかしそうに光らせて、アンジェリークは頷く。
 彼に手を引かれて歩き始めると、誰かが同時に着いてくるのが判った。
「ここじゃ拙いのは判るな?」
「はい」
 利用されて板のにも拘らず、ときめく自分が嫌でたまらない。
 胸が激しく痛んだ。
 このまま切り裂かれて死んでしまうのではないかと思うほど、辛い。

 結局、仕事が絡まないと、こんなことにはならないもの。
 冷徹・・・だから。

 泣きたくなるのを堪え、アンジェリークはアリオスにただ着いていった。

 しばらくして、イルミネーションの渦から遠ざかる。
 不意にアリオスが歩くのを止めた。
 アンジェリークも瞬時にして殺気を感じ、服の下に隠し持っていた銃に手をかけようとする。
 不意にアリオスの背中が守るように、彼女の前に立ちはだかり、制止する。
「おまえは今は”休暇”だ・・・」
 彼はそれだけを言うと、素早く銃を抜いた。
 刹那、着けていた男の足を正確に撃ち抜く。
「うっあああっ!」
 男はそのまま地面に跪きのたうち回る。
 銃を撃つどころではないほどだ。
 アリオスは長い足で、銃を蹴飛ばして遠くに飛ばしてしまうと、すぐに無線を手に取った。
「アリオスだ・・・。恋人たちの木から前方400メートルのところに不審者発見。すぐに処理を頼む」
 アリオスは冷静に処理をすると、通信機を切った。
 そのタイミングでアンジェリークは精悍な彼の背中に抱き付く。
「・・・ありがとう」
 感極まって、それ以外に言えなかった。
 ちゃんと”休暇”と判ってくれていたと思うだけで、泣けてくる。
 本当に嬉しくて仕方がなかった。
 アンジェリークの清らかな心に触れるだけで、アリオスは柔らかな微笑むと、回された手を握る。
「おまえのせっかくの休暇だからな」
 低い声で囁かれると、アンジェリークはただアリオスの背中にしがみつくしか出来なかった。

 処理を部下に頼むと、ふたりはホテルに向かって歩き出す。
 手をしっかりと繋いで。
 もちろん、アリオスからしっかりと握ってくれた。
 先程よりも、もっと幸せな気分で、アンジェリークは歩いていく。
「飯はどうする?」
「空きました」
 素直に話すことが出来る。
「どこか落ち着いたところで、食事をするか?
 ------おまえの部屋はどうだ?」
「私の…」
 一瞬、真っ赤になった後、アンジェリークは恥ずかしそうにコクリと頷く。
「ルームサービスを取ったほうが、落ち着くだろ」
「はい」
「おまえは直ぐに眠れる。俺も、同じホテルだから時間はくわねえ」
 アンジェリークは同じホテルだと知って、少し頬を赤らめながら、アリオスを上目遣いで見た。
 その眼差しは、恋する少女のそれだ。
「少し早いかもしれねえが、二人でクリスマスをお祝いしよう」
「------はい」
 ふたりは手の中で、お互いの温もりを感じながら、ゆっくりと歩き始める。
「おまえに、最高のクリスマスをやる…。だからおまえも俺に最高のクリスマスをくれ」
「私もあなたに最高のクリスマスをあげるわ…」
 二人は甘く見詰め合った後、あふれる愛をその眼差しに託す。

 アリオスさん…。
 今日という日を、私は忘れることが出来ないかもしれません・・・。
 今も思う・・・。
 私はこんなにもあなたが好きなんだってことを-------


コメント

クリスマス創作です。
ちゃんとクリスマスに完結予定です。
次回からこそ本当に甘いストーリーになるはずです(笑)

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