
DESPERADO Pleludemission0 『2度目の始まり』 |
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薄暗い、地下駐車場。 アリオスは息を潜め、周囲の気配をうかがった。 彼の本能は、自分と同じように息を潜めている者たちの気配を敏感に感じ取っていた。 その数、三人と言ったところか。 静かな空間に紛れもなく漂う、張り詰めた空気。 しかし、その静寂は突如として破られた。 軽い足音がその空間に響く。 「え〜、ワタシのローヴァー・ミニちゃん」 少女の声が聞こえた。 周囲で何が起こっているのか、何が起ころうとしているのか、まったく露ほども知らないその声に、アリオスは僅かに苦笑をもらす。 まだ幼さを強く残した―――それでも、成熟の兆しに僅かに陰りを見せているような、そんな声。 この5年間、ずっと見守ってきた少女。 姿は見えないが、想像する事は容易い。 彼は口元に微かな笑みを刻み、掛けていたサングラスを胸ポケットに仕舞い込んだ。 『汝は真理を知らん。真理は汝らに自由を得さすべし―――』 ふと、CIA本部に掲げられている言葉が頭をよぎる。 真理―――真実。 なんて重いコトバだろう。 …アンジェリーク。 護るべき少女の名を胸中でなぞり、彼は異色の双眸を静かに閉ざした。 少女が真実を知る瞬間は近づいてきている。 もう、今までの様に無邪気なままではいられない。 もたらされる真実は、彼女にとって残酷なものかも知れない。 それでも、それを受け入れなければならない。 生き抜く為に。 ―――けれど、これだけは覚えていて欲しい。 この街で過ごした4年間も、全て真実である事を。 決して、虚構と言う現実にあった、作り上げられた嘘などではなく、『アンジェリーク・コレット』と言う少女が過ごした真実だったのだと。 それが心の支えになるはずだから。 ―――それを、忘れないで欲しい。 そして。 闇にその身を委ね、たゆとうていた真実が、光のもとに曝されようとする瞬間――― 彼は肉食獣のしなやかさで、コンクリートの地面を蹴った――― |
コメント
空山様に頂いた『DESPERADO』の過去編です。
原作者冥利に尽きます。
本当にありがとうございました。
ところで…、私…、こんな台詞書いたんか〜と、思い出させていただきました(笑)