Will You Merry Me?


「ったく、堅苦しいのは嫌だっていったのによ」
 守護聖の正装をすでに乱して、アリオスはどっかりとソファに腰を下ろす。
 今日は、新宇宙の初めての守護聖である、アリオスの任命式だった。
 堅苦しいのは嫌だと何度も言ったにも関わらず、レイチェルに押し切られた格好だ。
 彼の天使が「お願い」と一度だけ懇願しただけで、今日の式が実現したというのが正しい。
「今日はどうも有り難う・・・。嬉しかった」
 穏やかで優しい微笑みを浮かべ、アンジェリークは、アリオスに愛しげな視線を送った。
「疲れたでしょ? 何か飲みものでも持って来るね?」
 行こうとした彼女の細い腕を、アリオスはぎゅっと掴む。
「おまえだって疲れてるだろ? 今日は守護聖の任命式だったんだから、気がはってただろ? 俺がやる」
 アリオスの気持ちが嬉しくて、アンジェリークは微笑むと、首を横に振る。
「こんな時ぐらい、あなたの恋人らしいことをさせて? いつも忙しくて、余り何もしてあげられないから、ね?」
 甘い声で、懇願されるように言われると、アリオスも弱い。
「しょうがねえな・・・」
 フッと優しげに笑うと、彼は少しだけ彼女を引き寄せた。
「恋人らしいことは・・・、毎晩してくれているだろ?」
 低く甘い声。
 それを聴いた瞬間、茹で蛸のように、アンジェリークは耳まで赤くなった。
 頭の上からぷすぷすと湯気が出ているようで、おかしい。
「あ、つ、ついでにお風呂もわかさなきゃっ」
 逃げるようにして、アリオスの腕から逃れると、慌ててキッチンへと逃げていった。
 その姿に、アリオスは目を細めながら、彼もソファから立ち上がる。

 これで、”同じ土俵”に立てたとは思わねえが、あいつのそばにずっといてやることが出来る・・・。

 アリオスが聖地に来てから、一緒に使っている寝室に入ると、アリオスは自分用のチェストを開けた。
 真紅のウ゛ェルウ゛ェットの宝石箱を手に取ると、彼はそれを乱暴にもポケットに直し込む。

 おまえをちゃんと正式な妻として迎えたい・・・。
 それが禁忌だろうと俺には関係ねえ。

 アリオスは穏やかな表情をすると、再びリビングのソファにどっさりと腰を下ろした。
「飲みものだけにしては、遅いよな・・・」
 キッチンからは、疲れているのにも関わらず、楽しそうなアンジェリークの調子の外れた歌が聞こえてくる。
 彼は、その曲に導かれるように、キッチンに入った。
 純白のエプロンをしたアンジェリークが、飲みものの他に、簡単だが心が籠った料理を一生懸命作っている。
「アンジェ」
「きゃっ!」
 背後から彼にしっかりと背後から抱き締められれば、彼女からは甘い悲鳴が漏れてくる。
「アリオス・・・」
 真っ赤になってはにかんでみせる彼女がとても愛らしい。
「遅いぜ? 待ちくたびれた」
「ちょっとじゃない」
 さらに強く抱き締められて、アンジェリークは甘く喘ぐ。
「おまえだって今日は疲れてんだからな? 無理するな? 心配だからな」
「うん・・・。もうちょっとで出来るから・・・」
 手を動かそうとする彼女の抱擁を解いて、アリオスは頬にキスをした。
「すぐに来いよ? 遅かったら、また呼びに来るからな?」
「うん・・・」
 アンジェリークは、嬉しそうに頷くと、夜食の最後のし上げにかかっていく。
 早く、アリオスに美味しいものを食べさせてやりたいと願いながら。

 しばらくして、アンジェリークは、簡単な料理と飲み物をもって、リビングに入ってきた。
「おまたせ」
 彼女がテーブルにお盆を乗せるなり、アリオスに手を取られて、ソファへと座らされる。
「待ちくたびれた」
「やん」
 軽くキスをされて、アンジェリークは甘やかな表情になった。
 この瞬間の表情は、彼以外には見せない、愛らしいものになる。
「女王のおまえも可愛いが、今はもっと可愛いな?」
「アリオス・・・」
 今の瞬間の自分が、一番、自分らしいような気が、アンジェリークはする。
「アンジェ・・・」
「アリオス・・・」
 腕の中でぎゅっと彼女を抱き締めたまま、アリオスはポケットの中を探った。
「アンジェ、守護聖になったのは、ずっとおまえのそばにいれるからだ・・・」
「うん・・・」
「ずっとそばにいたいから・・・」
 ポケットからウ゛ェルウ゛ェットの宝石箱を取り出す。
 アンジェリークは、箱を涙ぐんで見ることしか出来ない。
「・・・永遠の愛の誓いを、おまえに・・・。おまえだけにやる」
「アリオスっ!」
 嬉しくて前が涙で滲んで見えなかった。
「俺たちは、今日、新たな関係になった
俺はこの宇宙の守護聖かもしれねえ…。
 だが、俺個人の忠誠は、おまえにある」
「アリオスっ!!…」
 ただ彼に抱きつくことしか出来なくて、アンジェリークは、顔をアリオスの胸に埋めて泣きじゃくる。
「アンジェ…」
 彼女を優しく包み込んだ後、彼は、繊細な顎を持ち上げ、じっと青緑の瞳を真摯に覗き込んだ。
「愛してる…。
 結婚してくれ」
「-----はい」
 彼女がしっかりと返事をしたのと同時に、誓いのキスが与えられた。
 甘く、そして、これからの未来の明るさを感じさせる、神聖なキス。
 唇を離した後、アリオスは、彼女の手をそっと取る。
「愛をこめて、我妻に----」
 アンジェリークの繊細な指に、アリオスは指輪をはめてやる。
 誓いの指輪は蒼のエリシア。
 デザインは天使がモチーフされている。
「セイランの野郎にデザインをしてもらった」
「…有難う…、一生、大切にするね…」
 涙の粒が、石の上に綺麗に落ちる。
 それがまたとても美しい。
「覚悟しろよ?
 絶対に離さないからな?」
「うん------あなたも覚悟して? 一生はなれないから・・・」
「おまえこそ覚悟しておけよ?」
 アリオスは腕の中の彼女を抱き上げて、ぐるぐると回す。
 二人は今至福の中にいた。

 二人は、今、数々の困難を乗り越えて、結ばれる。
 魂が奥底から求め合った二人は、まだスタートラインに立ったばかり。
 初めて、地を足で踏みしめて、歩いていく。
 真の意味で”生きることを始めた”二人は、これからどんなことがあっても、手を取り合って、生きていくことを心の奥底で誓い合った----

コメント

プロポーズものを書いていなかったので、書きたくなりました。
それだけです(笑)
やっぱりこの二人は書いてて楽しいです。
アリアン最高!!



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