LOVE HAS NO PROUD



 アンジェリークは、虚空の城を見上げながら、一人、寝床を抜け出して、考え事をしていた。
 これまでの旅のことをきちんと整理しておきたかった。
 一人で考える時間が欲しかった…。

 アリオス…。
 あなたの笑顔にどれだけ励まされたことだろう。
 あなたさえいれば、どんなことでも耐えていけると思っていた。
 いつでも笑っていられると思っていた…。
 あなたが去ってしまって、最初のうちは心が麻痺していた。
 この宇宙を掛けて戦うことが、たった一つのつながりならば、最後まで戦い抜こうと決心したとき、心の麻痺が解かれた。
 だから今は、私のありたっけの愛であなたと戦ってみせる…!!
 そして、あなたを救ってあげたい…!!

 アンジェリークは、凛としたまっすぐな眼差しを虚空の城へと投げかける。

 神々しいまでのオーラを醸し出すアンジェリークを、優しく見守る影が、二つあった。
 ひとつは”炎の守護聖”オスカーだった。

 お嬢ちゃん…。いや、アンジェリーク・・・。
 俺にはもう…、君とアリオスの間には入れない…。
 俺は、君の純粋さが、そのひたむきさが好きだった。
 誰よりも傷ついて欲しくなかった…。
 愛とは、暫し残酷な夢を見せる。
 それでも君は、走らなければならない…。
 アリオス…、おまえはアンジェリークを追い詰めながらも、自らも鋭い針の上を歩きつづけてきた----
 それがおまえの愛ならば、誰も寄せ付けず、誰よりも強く、激しく燃えつづけてきた愛ならば。
 俺は最後まで見守っていよう。
 決して目を逸らさず、この瞳にその愛を刻み付けていこう…。
 それが・・・、俺が示せる、アンジェリークへの唯一の愛の証だ…。

 オスカーは、アンジェリークに気づかれぬようにそっと見守っていた。
 アンジェリークを見守っていたもうひとつの影。
 ----アリオスだった。
 こっそりと城を抜け出し、決戦前に、ひとめでいいから、愛しい天使を見つめたかった。
 今まで誰にも見せたことのなかった、慈しみのある穏やかな瞳で、彼もまた、彼女を見守る。

 アンジェリーク…。
 おまえは、いつでも苦境に立つことで成長してきた。
 強くなった…。
  おまえと離れてから、俺は、この日のためだけに、総てを賭けてきた。
 明日、おまえは先のことなど何も考えず、ただ俺を救いたいという一心で、俺にぶつかってくるだろう・・・!

 ぶつかって来い、アンジェリーク!!
 そして・・・、おまえの手で、総てを終わらせて欲しいと…。
 呪縛から、解き放って欲しいと…。
 その白い羽根で、俺を救ってくれ…!!
 愛しくて、狂おしいほど愛しくて堪らない…、俺の天使・・・!!


 二人の男の優しい眼差しに見守られ天使は立ち上がる。
 明日に向けて、しっかりと目を見開き歩いてゆくために…。


コメント
最終決戦前夜の想いで、「FATE」の姉妹編に当たります。
「FATE」で書ききれなかった部分を書き足した感じですね。
これと「FATE」が一作品でもよかったな。
タイトルは、「愛は惜しみなく」というニュアンスでつけました。