「あ、アリオス!」
待ち合わせをしていて少し遅れた彼にも、彼女は怒りもせずに、笑顔で手を振る。
「アンジェ!」
彼女のそんな優しさが嬉しくて、彼は幸せそうに微笑みながら、彼女の元に駆け寄った。
「悪ぃ遅れちまったな」
「ううん、大丈夫よ。今もね、レイチェルと携帯でメールを交換してたの。ほら」
嬉しそうに、メールの内容を見せる彼女に、彼はふっと優しい気分になる。
ホント…、おまえといると心が深呼吸するような気がする。
「でね、レイチェルが面白い占いを送ってきてくれたから、アリオスとしようと思って」
穏やかに微笑む彼女が可愛くて、アリオスはそっと頬に口づけた。
「や、やだっ! アリオスったら…、他の人が見てるじゃない…」
すっかりはにかんだ彼女は、そのまま俯いてしまい、耳まで真赤にしている。
「おまえがあんまり可愛い顔するからじゃねえか…。ったく」
更に彼は恥ずかしがる風もなく、彼女の耳朶をさらに甘噛みをする。
「もう…バカ…」
すっかり真赤になってしまった彼女があまりに可愛らしく、彼は咽喉を鳴らして笑う。
「なあ、その占いって、なんなんだよ?」
「うん、○点占いって言ってね、ひらがなで名前を入力したら、名前を頭文字に使って、小話を作ってくれるの」
「はあ?」
彼の頭に、あのテーマソングが聞こえ、咽喉を鳴らして笑う。
「おまえにぴったりじゃねえか? お笑いだからな?」
「もう! アリオスったらからかって」
頬を膨らませて怒る彼女の顔が見たいから、彼はついつい苛めてしまうのだ。
彼はそっと彼女を包み込むような格好で、携帯を覗き込む。
「占えよ? 先ずはおまえからな?」
「うん」
アンジェリークは、アクセスして、自分の名前を入力して、送信した。
「あ、出てきたわ!」
「どれどれ…、クッ!!」
アリオスはその結果が楽しくて、思わず笑いが零れてしまう。
「あ・愛に溢れてて、ん・ん〜と、じ・実力派で、え・エクセレントで、り・リッチで、い・石頭では誰にも負けませんし、く・九九は三の段までしかできません、って、数学苦手なおまえにはぴったりじゃねーかよ!」
彼はその落ちがおかしくて、頭を仰け反らして笑っている。
「いいわよ! アリオスもやるんだから」
彼の意見などは無視して、彼女は今度は彼の名前を入力して、送信した。
「・…」
「どうしたんだよ?」
彼女が携帯電話のディスプレイを見て固まっているのを見て、彼は不思議そうに言う。
「だって…、アリオス…、当たってる…もん。あ・愛に溢れてて、り・リッチで、お・おっとりしてて、す・スキモノですって・・・」
彼女は俯いて真赤になりながら、こっそりと囁いた。
「まあ、確かに当たってるかも知れねえが、おまえ相手じゃないとこうはならねえからな」
「きゃっ!」
急に細い腰を彼に抱かれて、彼女は甘い悲鳴を上げる。
「映画は中止だ。その占い通りの男かどうか、判らせてやるよ?」
「も、バカ…」
アリオスはそのままアンジェリークを車へと連れてゆき、自分のマンションへと向かった----