『助けて…アリオス、僕らに力を!!!』 聞きなれた声に、アリオスははっとした。 「どうしたの?」 「どうもしねえよ」 深く愛し合った後、新宇宙の女王陛下と、その愛する夫であり、守護聖であるアリオスは、抱き合いながら、ゆったりと甘いひと時を過ごしていた。 だが、どうして、赤毛のちびの声が聞こえたんだろうか…。 考え込む彼に、アンジェリークは心配でたまらなく、思わず身体を起こしてその顔を覗き込む。 「アリオス? 本当は気分悪いんじゃないの? だったら、私、客室で・・きゃっ!!」 心配する彼女の華奢な腕を掴んで、アリオスは再びベッドに沈み込ませると、情熱的に口付けをする。 「・・・んっ! ああ」 深く唇を求められて、離されたときに、すっかり全身から力が抜けていた。 「もう一発おまえとやろうってのに、何で気分が悪いんだよ」 彼があからさまに言うものだから、アンジェリークは真っ赤になってしまう。 「もう…、バカ・…!」 もう何度聞いたか判らない彼女の"バカ”は、アリオスはただの照れ隠し以外の何物でないことを知っている。 だから、さらに可愛くて、もっといじめたくなってしまう。 「抱きたいのは、お前を愛してるからなんだぜ?」 「もう…」 彼女の身体を組み敷いて、ぎゅっとその甘い肢体を抱きしめて、再びコトを起こそうとしたときであった。 『アリオスお願い!! 僕らに力を貸して!!!』 先ほどよりも強くなる声。 そしてそれと共に、強烈な眠気が襲ってくる。 「クソ…」 動きを止め、再び苦しそうにしているアリオスに、アンジェリークは今度は本当に心配そうに、肩を抱く。 「どうしたの!? ねえ、アリオス!!」 「赤毛のチビが俺を呼ぶ声が聞こえて、なんだか…、眠りの世界に、引きずられてゆく…」 何だ…。 この感覚は…。 眠りの世界----- その言葉にアンジェリークははっとする。 「アリオス!!! メルさんは皆さんを代表して、あなたを夢の世界から呼んでいるの!!!」 「…何?」 アリオスは怪訝そうに眉根を寄せる。 「そうだわ! この間あちらの宇宙で、ティムカ様の惑星が大変なことになっているから、皆様、助けに言っているって、陛下は言ってらっしゃったわ。 -----"夢"がキーワードだとも…」 そこまででアリオスは総てが読めたような気がする。 「…だったら、あのチビは夢から俺を呼んでいるというのか…」 「たぶん」 アンジェリークはしっかりと頷くと、彼の手を手にとる。 「お願いアリオス!! 皆様を助けに行って上げて? もし必要が無かったら直ぐに帰ってきていいから…。帰ってきたら、私を…、その…、好きにして…、いいから…」 その言葉にアリオスはピクリと動く。 "好きにしていい” とても魅力的なご褒美。 だが、そんなことは無くても、結局は、ぶつくさ言いながらも彼は動く気でいた。 照れくさいからそうしてしまう。 それに---- 「ねえ、アリオス、お願い!!」 懇願する、潤んだ瞳の妻を見せられた日には、従わないなんて、出来やしない。 「判った。行く」 「ホント!!!」 まだ少女のあどけなさが残り彼女が、本当にうれしそうに笑う。 これこそが彼にとっては本当の意味での宝物なのである。 「要は寝ればいいんだろ?」 「あ、だめ! 寝ている時の格好で夢の中に入るらしいから、だからアリオス、簡単な服を着て、剣は持っていって?」 アリオスもこれには同意する。 いくら全裸では拙いだろうと。 「判った着替える」 「うん」 アリオスは、益々ひどくなってくる眠気と戦いながら、服を着て、剣を腰に下げる。 「これでいいか?」 「うん! 完璧よ」 彼女の言葉にアリオスはベッドにはいると、その体を彼女に預ける。 「アリオス?」 「アンジェ…、俺が起きるまで…、抱きしめていてくれ・…」 「しょうがないわね?」 くすりと笑うと、アンジェリークは優しくアリオスを包み込んでゆく。 彼は、剥き出しになっている彼女の豊かな胸にそのまま顔を埋めてゆっくりと目を閉じる。 「目覚めたら、覚えとけよ?」 「はいはい」 『アリオス!!! 助けて!!!』 徐々に大きくなる、メルの助けを呼ぶ声。 アリオスは、愛する彼だけの天使の腕の中で、ゆっくりと夢の世界にたび立つ。 「アリオス…、皆さんによろしくね?」 アンジェリークは耳元で囁くと、彼が目覚めるまで、ずっと、優しく包み込んでやっていた----- |
