「----皆さん、彼と----レヴィアスと二人きりにしていただけませんか?」
「お嬢ちゃん・・・」
お嬢ちゃん----アンジェリークの言葉は、俺たちを狼狽させた。
しかし同時に思う。
判っていたことだと・・・。
皇帝・レヴィアス----いや、アリオスを見つめる彼女の瞳に宿る光は、何よりもまっすぐで、神々しく、そして力強かった。
彼女の横顔は凛として輝き、姿勢を正し、ただ一点アリオスだけを見つめている。
強くなった・・・。
俺は心からそう思う。
最初は、戦うことも知らず、ただ自分の故郷の宇宙への愛のために、必死になって耐えていた。
辛くて堪らなくて、夜がくるたびに泣いていた小さな少女。
泣き虫で、泣き虫で、毎日目を晴らしていたのを覚えてる・・・。
あんまりにも辛そうで、かわいそうで、どうしてあげることも出来なかった俺たち守護聖の代わりに、手を差し伸べたのが”アリオス”だった。
アイツは、瞬く間にお嬢ちゃんの泣き顔を取ってしまい、いつもの太陽のような微笑を齎した。
俺たちはその笑顔に癒され、そして・・・、おそらくアイツも・・・。
アイツは、お嬢ちゃんを”アリオス”でいる間、守り抜いた。
戦うことを教え、その厳しさを教え、お嬢ちゃんが、自分にいつかちゃんと立ち向かえるように、精一杯のことを、アイツはした。
そして、おそらくは・・・、恋をすることも、お嬢ちゃんはアイツから学んだ・・・。
温かな陽だまりが、二人の中にはあった。
いつも愛しげに見つめあい、微笑んでいた二人を、俺は忘れることなんて出来ない。
確かにそこには、誰にも汚すことが出来ない高尚な愛があった。
アイツは、いつも切なげでいて愛しさの溢れた眼差しをお嬢ちゃんに投げかけていた。
誰よりも温かく深い微笑を、お嬢ちゃんに送っていた。
その愛の、どこが偽りであるというんだ・・・。
レヴィアスに戻り、アイツは、「俺を憎め」とお嬢ちゃんに言ったが、あれは憎んで欲しいというアイツ自身の懇願であったに違いない。
お嬢ちゃんは、おそらくそれが判っている。
幾重の苦しみに耐え、悲しみに耐え、それらを乗り越えて、レヴィアスの想いを受け止めてやれるほど、強くなった。
レヴィアスとアンジェリークを交互に見つめる。
彼らには、憎しみも、恨みも、最早何も存在しない・・・。
そこにあるのは、互いへの深い愛情だけだ・・・。
彼らは深く愛し合っている。
男と女であることを超え。
敵同士であることを超え。
魂の底から愛し合っている。
だからか・・・。
二人でこの戦いの行方を決したいのは・・・。
魂の底から愛し合っているからこそ、二人は対峙しなければならないのは・・・。
何かが・・・、吹っ切れた気がする。
「お嬢ちゃん、戦いの行方は任す。たとえ何が起こっても、お嬢ちゃんが決めたことに従おう・・・」
「有難うございます。 オスカー様」
「気をつけてな・・・」
「はい・・・」
レヴィアスに向かってゆくお嬢ちゃんに、ちらりと振り返る。
往け、天使よ・・・。
その聖なる光で、愛するものを救ってやれ・・・。
俺たちは、君の帰りを待っているから・・・。

コメント
オスカーの視点から見た、最終決戦です。
誰かが客観的に見たものを書きたかったので創作しました。
私が創作した中で、最も短く、30分という最短な創作になりました。