FAMILY TIES EXTRA

JOY TO THE FAMILY 


「あ、おはよう、アンジェリーク」
「おはよう、あけましておめでとう、レヴィアス」
 キッチンに入り、そのまばゆさにレヴィアスは暫し息を飲む。

 着物、着物、着物…!!!!

 アンジェリークは栗色の髪をアップにし、ガーベラの花飾りを飾っている。山吹色の着物に身を包み、その上から純白の割烹着を着ている。
 まさにその姿は和風天使。

 白の割烹着姿のアンジェリークが、我におせち料理を食べさせてくれる。
「あ〜ん、レヴィアス」
 我はおせち料理に舌鼓を打ちながら、今度は我が口写しでアンジェリークに食べさせてやる。
 口移し…。
 (申し訳ございませんが妄想モードが驀進し過ぎて、これ以上をお届け出来ません(笑)暫くお待ちください)

「何考えてんだ、正月早々からよ!」
 挨拶とばかりにアリオスは、いつものようにレヴィアスの後頭部を叩く。
 年が明けて直ぐというのに、二人はいがみあう。
 それが何だかアンジェリークにとっては、微笑ましい光景のように思え、思わず蒲公英のような微笑を浮かべて、二人を見た。
 その途端、先ほどまでいがみあっていた親子が、いがみあうのを止めたかと思うと、ふたりそろってうっとりアンジェリークを見つめる。
 翡翠と金の同じ瞳の同じ顔でじっと見つめられると、本当に似たもの親子だと彼女は、嬉しく思う。
「さあ、二人とも、お雑煮を作るからおもちの数をおしえてね。レヴィアスは?」
 純白の天使に聖なる微笑を向けられ、レヴィアスは釘付けになっていた。
「あ…、我は…餅よりアンジェリークが…」
「んなこと言ってんじゃねえよ!!」
 子猫にそうするかのように、アリオスはレヴィアスの襟ぐりを掴んで持ち上げる。
「何をする、離せ!!」
 レヴィアスは足をじたばたとさせ、必死にアリオスに蹴りを入れようとするが、足の長さの関係で、全く届かない。
「もう、二人とも!! 訊いてるのは餅なのよ!!」
 頬を膨らまして怒る彼女の姿が可愛くて、二人はまた喧嘩を停止し、暫し彼女を見惚れる。
「あ…、アンジェリーク、我は餅3つ」
 レヴィアスは視線を彼女から逸らすことなんて出来ない。
「俺は5つなアンジェ」
 アリオスも同様だ。
「アリオスが5つ、レヴィアスが3つね? 直ぐに作るから椅子に座って待っててね」
 ふんわりと穏やかな微笑で言われると、二人は頷くことしか出来なかった。
 椅子に座って、アンジェリークが雑煮を作るのを待つ間も、二人は一言もしゃべらず、揃って純白の割烹着姿のアンジェリークを見つめている。

 後姿も絵になる!! 我の天使は…!!

「はい、お雑煮が出来たわ」
 微笑を絶やさないアンジェリークは、雑煮を二人の前に置いてゆく。
「はい、レヴィアス。はい、アリオス」
 最後に自分の分の雑煮を置いて、席についた。
「アンジェリークは、いくつ餅を食べるのだ?」
 その横顔に見惚れながら、レヴィアスはうっとりと呟く。
「私は2つよ」
「足りねーじゃねーのか?」
 今度はアリオスである。
 彼らは交代でアンジェリークの様子を覗い、心配そうにする。
 ここまで夫や、子供に愛されていることを肌で感じ、彼女は嬉しくて堪らなくなる。
「大丈夫よ。さあ、頂きましょう」
 アンジェリークの言葉を合図に、彼らは彼女特製の雑煮に舌鼓を打った。
「美味い!! 流石は、我のアンジェリークだ!!」
「ありがと、レヴィアス」
「美味いに決まってんだろ? 愛情が篭ってんだからよ?」
 レヴィアスに負けずにアリオスも言う。
 ふふと、笑顔を浮かべながら、アンジェリークは二人が美味しそうに雑煮を食べる様子を、幸せそうに眺める。

 最近は家族で海外なんて言うけど、二人の様子を見ていたら、家で過ごすのが一番いいわね!!

 二人はすっかりお雑煮を平らげ、満足そうに椅子に座っている。
 二人が動かないのは、アンジェリークがまだ座って雑煮をゆっくりと食べているからだ。
「アンジェ」
「え?」
 彼女が顔を上げた時には、既に、アリオスの手が伸びてきて頬を捕らえていた。
「雑煮味のキス」
  軽い口づけをされて、彼女の頬は僅かに赤く染めあがる。
「あ〜、貴様、アンジェリーク!! 我もだ」
 唇をアンジェリークに近づけようとして、アリオスにつかさず邪魔をされる。
「餅を4つ以上食ってねえとアンジェにキスする資格なし」
 さらりとアリオスに交わされ、レヴィアスは怒りの炎をたぎらせる。
「貴様〜!! 勝手に決めるな!! そんな理論を作りやがって」
 レヴィアスは何とかアリオスに一矢報いて、その砦を突破し、アンジェリークのキスにありつけるよう二ともがく。
 小さな手足を使って、必死にアリオスに抵抗するが、豊かな伸長としなやかな肉体を持つアリオスに適うはずもない。
「おい、アリオス!! 我と勝負しろ!!」
「は〜? 勝負」
 突然レヴィアスに勝負を挑まれ、アリオスは怪訝そうに眉を寄せる。
「ベーごまで勝負だ!!」
「べーごま?」
 何を思いついたのかアリオスは良くない微笑を浮かべると、レヴィアスをじっと見下ろす。
「おまえはこまを回しとけ。俺はアンジェリークを回しとくからな」
 途端にアリオスは椅子に座って、まだ雑煮を食べていたアンジェリークを軽々と抱き上げる。
「あ、アリオス!?」
 アンジェリークは突然のことでびっくりし、恥ずかしくなり、すっかり俯いてしまった。
「こら、何をするんだ。たまには正々堂々と勝負しやがれ!!」
 アリオスの行く手をレヴィアスは小さな体で必死に塞ぐ。
「正々堂々だ? どうせおまえのことだ、ズルするに決まってるからな」
 痛いところをつかれ、レヴィアスは二の句をつなげない。
「じゃあな。折角の着物姿のアンジェリークだ。ゆっくりと、帯を使って"こま回し”を、させてもらうぜ?」
「アリオスの、バカ…」
 着物のせいか、アンジェリークは最早アリオスの腕の中で動きを取れなかった。
「待って!! 銀の狼!!」
 体を張ってレヴィアスは阻止しようとと懸命になったが、小学一年生の彼と大人のアリオスでは体型の違いが余りにもありすぎて、あっさりと交わされてしまう。
「後でな? レヴィアス」
 ニヤリとレヴィアスに微笑むと、アリオスは寝室へと消えてゆく。
 残されたレヴィアスは、新春第一弾の敗北に、臍を噛んだ。    

 覚えていやがれ!! 銀の狼!!!


コメント
2001.1.1にうちのサイトに初カキコをしてくださいましたエリィ様のリクエストによる「アリオス家お正月」編です。
ここで謝っときます!! ごめんなさい。m(_)m
今回はほのぼのもせず、こともあろうか「裸エプロン」に続く問題発言「代官の生娘こま回し」
(時代劇に出てくる「よいではないか、よいではないか」「あ〜れ〜」といって、着物の帯を解かれるヤツ(笑))
までが出てくる、問題作になってしまいました。
お約束の、まばゆい白い割烹着まで(笑)
もちろん、クーリングオフは受け付けますので、何卒よろしゅうに。
いやだったら、リクエストしなおしてください。
へぼくて申し訳ないっす。