EVER AFTER


 月の光に包まれながら、アンジェリークはアリオスの腕の中でその温かさに包まれて、甘えていた
「…アリオス…」
「何だ?」
 名前を呼べば、彼はしっかりと彼女を抱き返してくれる。
「-----今夜のこと、きっと一生忘れないわ…」
 アンジェリークは、白い素肌を彼に摺り寄せて、感慨深げに呟いた。
「そんなに良かったか?」
 彼はわざと意地悪な言葉を囁いて、アンジェリークを真っ赤にさせる。
 そんな所も彼女は好きで堪らない所。
「…もう…バカ…」
 はにかんだ彼女が可愛くて、アリオスはフッと笑い掛けながら、真っ直ぐ伸びた栗色の髪を優しく撫でつける。
「----嬉しいの…。あなたのものにやっとなれたんだって思うと…。
 アルカディアを去って、あなたが新宇宙に帰ってきてくれるまで、すごく長かった。
 ほんの少しだったのに、私…」
 とうとう涙ぐんでしまった彼女が愛しくて堪らなくて、アリオスは抱いてる腕にさらに力をこめた。
「もう・…どこにも行っちゃ…嫌だ・…」
 彼女の半分泣いている声が、胸の奥深い所に届いて、何度もこだまする。
 それが堪らなく可愛い。
 ぎゅっと腕を掴む彼女に、その熱い想いを伝えるために、アリオスはさらに腕の力を増す。
「…もうどこにも行かない」
「ホント?」
 まるで幼子のように訊いてくる彼女が、愛しい。
「さっき、おまえの身体にちゃんとそういったつもりだぜ?」
 ニヤリと良くない微笑を浮かべられて、彼女は真っ赤になった。
「もう、バカ! しらない」
 彼の腕の中でアンジェリークは拗ねるように後ろを向く。
「俺は誓うぜ? 女王陛下…。俺の命はおまえだけのものだということをな」
 首筋に唇を落としながら、アリオスは真摯に艶やかな声で呟いた。
 その声は、本当にサテンのように深い色めきがある。
「アリオス・・・・」
 背中からしっかりと腕を回されて、、アンジェリークはその手を自分の手と重ね合わせる。
 じかで感じる彼の熱がとても心地よい。
「…アリオス…私凄く幸せなの…。
 女王はずっとこういうことが許されないと思ってたの。
 だけど、あなたは総ての垣根を越えて私を愛してくれる。深く…。
 そうすることが当然なんだと、あなたは教えてくれたの…」
「アンジェ…」
 アリオスはさらに彼女を愛しげに抱く。
「…ずっと離さないでね?」
「俺はしつこいからな? 絶対におまえを離さない。
 たとえおまえが俺を捨て、地の果てまで逃げたとしても、俺は必ずおまえを見つけ出す…。覚悟しておけよ?」
 何よりも熱い彼の言葉が、彼女を潤ませる。
 アンジェリークは哀しくもないのに、あふれ出てくる涙に、戸惑ってしまう。

 ヤダ…。
 こんなに嬉しいのに…

「うん…。
 アリオスは彼女の様子を察して、卒倒での中で彼女を自分に向きなおさせると、涙を唇で拭った。
「こら? 幸せなんだろ? だったら泣くなよ?」
「うん…うん…」
 だが、嬉しい涙は止まらなくて。
「俺たちの幸せはこんなものじゃないぜ? これからもっと幸せになるんだからな?」
「アリオス!!!!」
 彼の言葉はいつだって力強い。
 アンジェリークは彼に総てを委ねてしまえる、この瞬間が、最もこれから幸福な時間になるだろうと確信する
「ねえ、アリオス…、私って、欲張り?」
「どうして?」
 アリオスは彼女をあやすように抱きしめながら、甘い声で優しく囁く。
「今まで私が一番欲しいものは、あなただった。そのあなたがそばにいてくれる今、また、欲しいものが出来ちゃった…」
 少しだけ恥ずかしそうに彼女は笑うと、アリオスにそっと耳打ちをした。
「-----今度は、あなたの赤ちゃんが欲しいの…」
 甘い囁きに、彼は優しい眼差しで彼女を包み込む。
「俺も協力するってなら、大歓迎だ」
「あなたがいなくっちゃ出来ないでしょ?」
 クスクスと笑いながら、アンジェリークは彼にしっかりと抱きつき、アリオスもそれに抱擁で答えてやる。
「-----だったら、早速続きをしなくちゃな? アンジェ!」
「え…、さっきもしたのに・・・きゃっ!」
「こういうのは早くから手を打たないとな!」
 そのまま彼に再び組み敷かれて、アンジェリークは甘い旋律を呼吸する。
 天使の願いが叶えられるのは、もう少し後のこと。
 再び紡がれる愛のロンドに、アンジェリークはゆっくりと捕まえられていくのであった。  

コメント

「トロワ」後の幸せな二人です。
あまりにものラブラブ振りに、私が当てられてしまいました。