私は、両親の顔を知りません----
子供の頃の記憶もありません。
最初に記憶があるのは、13歳の誕生日。
病院のベットで寝かされていたのです。
ただ記憶にあったのは、広く頼もしい背中に負ぶさったこと。
そして、アンジェリークという名前・・・。
それも本名かどうか定かではありません。
ただ、広く頼もしい背中のいい匂いのする人が、優しく呼んでくれたから、覚えていたのです。
アンジェリークと----
その人は、何度も私を励まし、闇から光の世界へ私を誘って(いざなって)くれました。
それは、夢の出来事だったかもしれません。
目覚める直前に見た夢だから、覚えていたのかもしれません。
13の誕生日に目覚めた時の記憶は、それが総てでした・・・。
あれから4年が過ぎ、誰かの大いなる慈しみの元、私は生活をしてきました。
修道院の付属の全寮制の名門女学院に入れてくださり、私に英才教育をし、長い休みの時は楽しき居場所を提供してくださる方。
残念ながら、私はその方が誰かは知りません。
しかしその方のお蔭で、この4年間の想い出は、失われた13年間の想い出と同じ重さを持っています。
友達もでき、勉強にも励めて、充実した生活を送ることが出来たのも、そのお方のお蔭です。
毎日、毎日、感謝の祈りをしています。
そしてもうひとつ、私を支えてくれたのは、幾度となく見た、現(うつつ)とも幻ともつかぬ、あの夢----
夢に出てくる、あの広い背中が、私を支えつづけてくれていたのです----