Summer Time


「ゆっくりしてろよ? 今日は出かける予定なんてねえからな?」
「うん…」
 ベッドでシーツに包まりながら、アンジェリークは起き上がるアリオスを見つめた。
 夏休みの時期はどこに行っても人が多い。
 あえて出かけることもないだろうと、二人は空調の入った部屋で、彼の短い夏休みを一緒に過ごそうと決めていた。
「飯ぐらいはたまには俺が作ってやる」
「うん、有難う…」
 躰を気だるく起こすと、アンジェリークはじっと彼を目で追う。
 今まで彼の腕の中で抱かれていた。
 しっかりと愛してくれ、夢見心地な気分にさせてくれた。
 ジーンズを穿き、白いシャツを羽織る彼は、最高に艶かしく感じてしまう。
 それぐらい、アリオスは艶やかだった。

 この背中に、この胸に触れてみたい…

「どうした?」
 キッチンに行こうとしたアリオスが不意に振り向いた。
 その振り向き方ですらも、アンジェリークを魅了して止まない。
「・・・おなかなんか空いてないわ・・・」
 うっとりとアンジェリークは呟きながら、そっとアリオスに手を伸ばす。
「だったら何が欲しいんだよ?」
 異色の眼差しで、艶やかに見つめられれば、溶けてしまいそうになる。
「…あなたが欲しいの…」
 素直に、そして熱に浮かされたように、アンジェリークはうっとりとアリオスに呟く。
 彼は喉を鳴らして笑うと、ほっそりとしたアンジェリークの腕を自分の腰に回させた。
「・・・あなたにずっと溺れていたいの・・・」
 躰を摺り寄せて来る彼女をぎゅっと清瀬ながら、アリオスは白いシャツを脱ぎ捨てる。
「いつもは一緒にいられないのよ? こんなときだけは、あなたに溺れていたいの・・・」
「アンジェ・・・」
 いつもは忙しい彼と週末しか会えない。
 だからこの休暇ですらも勿体無い。
 ご飯を食べる時間も勿体無いから…。
「ったく・・・。
 しょうがねえお嬢様だな?」
「だから大好き…」
 くすくすと笑いながら、アンジェリークはアリオスにベッドの上に押し倒される。

 貴重な夏の休みは、勿体無くってしょうがない。
 たとえご飯を食べる時間ですらおしい。
 一分一秒長く、アリオスに溺れていたいから。
 外からは暑い日ざしがうっすらと入ってくる。
 快適なエアコンディショナーは、二人だけの王国を作ってくれている-----

 好き-------

 アンジェリークは甘い想いをいっぱいに吸い込んで、愛する男性との、淫らにも甘美な時間に溶けていくのだった-------
 

コメント

何だかこういう話を書きたかったんです〜。

モドル