人妻


 栗色の髪がいつも揺れて、とても愛らしく思う。
 喜怒哀楽は、とても豊かで、特にはにかんだ微笑が一等可愛い。

 ランディは今日も校門の影から、アンジェリークを見つめていた。
 名門女子高スモルニィ女学院に通う、アンジェリーくという名の少女。
 それしか知らない。
「んだよ、また、あの女を見ていたのかよ? ランディ」
 にやにやと笑いながら、ゼフェルがまたからかってくる。
 口は悪いが、いいやつだと言うことはランディは十二分ほど判っている。
 だが、恋する少年は、からかいにも敏感に反応してしまう。
「いいじゃないか! アンジェリークは可愛いし…」
 頬を染めながら、怒るランディの純粋さに、ゼフェルは一肌脱いでやろうと、思うのであった。


 先ずは、敵情視察とばかりに、ゼフェルはアンジェリークの後を追う。
 よせばいいのにである。
 彼女はいつものように、夕食の買い物に行き、そのまま家へと帰ろうとしていた。

 夕食の買い物。
 家の手伝いか…。
 感心なやつだな

「アンジェ!」
 銀色の髪が印象的なかなり整った顔立ちの男性が声を掛け、彼女に駆け寄ってきた。
「アリオス!!」
 頬を染めてアンジェリークは、嬉しそうに駆け寄っていく。
「お帰りなさい!!」
「・・・!」
 いきなり彼女がアリオスと呼んだ青年に抱きついたので、ゼフェルは度肝を抜かれた。
「おい、大事な体なんだからな? お腹の子供たちがびっくりするだろ?」
「だって…」
 頬を染めながら、アリオスに甘える彼女は、本当に可愛らしく、今まで見たどの表情よりも魅力的に思えた。

 お腹のこ〜!!!

 ゼフェルは目ざとく彼女の指をみると、ちゃんと左手の薬指に結婚指輪がしてある。

 ランディ、これは諦めたほうがよさそうだぜ?


 翌日、学校の帰り、ゼフェルは思い切って、ランディに言うことにした。
「ランディ、悪いことは言わねえからよ? あの女は止めたほうがいいぜ?」
「何言ってるんだ!」
 ゼフェルのランディはかなりむっとし、怒りの眼差しでゼフェルを見ている。
「とにかく! 止めろっ!」
「何言ってるんだ! 止めない!!」
 二人はにらみ合って、お互いに引こうとはしない。
 口げんかをしながら、二人はスモルニィの前まで差し掛かった。
 その瞬間、ランディは言葉を失う。
 アンジェリークが銀の髪の男と、楽しそうに歩いているのが見える。
 しかも手を繋いでである。
「アンジェはいいわよね〜、素敵なだんな様をGETしてて〜。懇談会で初めて見たけど、素敵よね〜」
 その言葉を聞きながら、ランディは立ち尽くすことしか出来ない。
「ランディ…」

 ランディの恋は、この日一方通行に終わった。

コメント

ランディファンの皆様ごめんなさい〜



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