「こうやって、ふたりでお茶をするのも久し振りよね? 何だか嬉しい…」 心から嬉しそうに笑いながら、アンジェリークはチョコレートを飲んでいた。 ふんわりとマシュマロが入っているのが嬉しい。 本当に楽しそうに笑う彼女を見てるだけで、アリオスは心が安らぐような気がした。 「すまねえな? 俺が仕事が忙しいばっかりに…」 「仕方ないわよ。アリオスは忙しいんだし…」 アンジェリークは笑うと、彼の顔をまじまじと見つめる。 煙草を片手に自分を見てくれる優しい表情が、彼女はこの上なく好きだ。 やっぱりカッコいいよねアリオス…。 そのうえ、大企業の総帥で…。 だけど…、どうして私と一緒にいてくれるのか不思議に思うことがある…。 普通の私を、いつも優しく見てくれている… 「いつもな、俺はおまえに感謝してるんだぜ? だけどな? 俺がこの状況に満足してるわけねえのは判ってるよな?」 真摯にじっと見つめられて、アンジェリークは不安になって俯く。 やっぱり、私のこと… 「おい、勘違いするなよ? おまえには凄く満足してるからな?」 「…!」 その言葉を貰うなり、アンジェリークは顔を上げた。 その眼差しは嬉しそうに輝いている。 「ホント?」 上目遣いで自分を見てくる彼女が可愛い。 「ホントだ。俺が嘘をついたことがあったか?」 「…ない…」 アンジェリークは直ぐに首を振った。 「だったら信じろよ?」 「うん」 クシャリと栗色の髪を撫でられて、アンジェリークは切ない気分を味わう。 アリオスが愛してくれていることは判っているが、その行為は子ども扱いされているようで、少し嫌だった。 「どうした?」 「---アリオス、私のこと子供だって思ってる?」 「クッ、思ってねえよ」 少し笑いながら言う彼に、彼女は少し拗ねてしまう。 「思ってるじゃない! 笑った…んっ!」 怒ろうとして、アリオスに突然唇を奪われてしまい、アンジェリークは言葉を失った。 軽いキスの後、アンジェリークは真っ赤になってアリオスを上目遣いで見る。 「…バカ…、こんな所で恥ずかしいじゃない…」 「判っただろ? 子供扱いしてねえって? これで」 「…もう…」 突然のキスだったが、アンジェリークはそれはそれで満足していた。 「アンジェ、ほら」 突然、彼女はアリオスに携帯電話を渡されて、目を丸くする。 「何…、携帯?」 「それは俺しかかからねえし、おまえからも俺し掛けられないようになってる」 アリオスはそこで言葉を切ると、自分の携帯を取り出した。 といっても新しいもののようで、彼はシルバーメタリック、彼女がメタリックシルバーのおそろいのものになっている。 不意に着信が鳴り、アンジェリークは慌てて電話に出る。 「はい?」 「俺だ?」 目の前にいるアリオスから電話がかかり、アンジェリークは頬を染めて嬉しそうに笑う。 「おまえの時間、俺が貰うからな? これからはいつでもメールや電話をして来い?」 「うん…」 アンジェリークは胸がいっぱいになりながら電話を切ると、潤んだ瞳でアリオスを見つめた。 「有り難う、大好き…」 携帯を見ると、とても可愛い、針金で出来た犬のマスコットが付けられている。 「おまえみたいだろ? 可愛いから買った。俺のも一緒のがついてる」 見ると、アリオスのにも同じモノが付けられている。 それがまた、アンジェリークは嬉しくて堪らない。 「大事にするね…」 「ああ」 二人は甘く見詰め合って笑いあう。 おそろいの犬の携帯マスコットが可愛らしく揺れていた。 |
