見返り?


 アリオスのパジャマを上半身だけ身に着け、アンジェリークは昨日買った雑誌をぺらぺらとめくっている。
「アリオス、ねえ、このカフェニューオープンだって!」
「あ〜?」
 ニューオープンのページを見るなり、アンジェリークは声をあげ、恋人に見せる。
「ねぇ、ここのケーキ凄く美味しそうなんだけど、一緒にいかない?」
「”連れてって下さい”だろ?」
 乗り気でないアリオスをその気にさせるために、アンジェリークは少し拗ねたような口を尖らせた。
「連れていって下さい」
 言われた通りに、アンジェリークは言う。
「しょうがねえ。その表情に免じて連れていってやるよ?」
「わ〜い!!」
 アリオスの首に腕を廻して、アンジェリークは何度もジャンプをして喜んだ。
「ったく…」
 アリオスはまんざらでもなさそうに笑うと、アンジェリークの唇にそっと甘いキスを送る。
「俺のキスのほうが、ケーキより甘いだろ?」
「もう…」
 恥かしそうにすると、アンジェリークは照れ隠しかのように、アリオスの胸に顔を埋めた。

 着替えた後、車でアリオスにカフェまで連れて行ってもらった。
 そこはやはり雑誌に載っていたこともあって、お茶をするだけで随分と並んでいる。
「ねえ、アリオス、並ぼう!」
「しょうがねえな」
 本当はアリオスはどちらかといえば短気なので、並ぶのも好きではない。
 だが、愛するアンジェリークの種なら少しぐらい我慢は出来るというものだ。
 それもちゃんと理由のあってのこと。

「わ〜、よかった〜!!」
 一時間ほど待って、ようやく番が回ってきて二人は席についた。
 喜んでいるアンジェリークを見て、アリオスは待ったかいがあると思う。
 彼女の笑顔があれば、何もいらないから。
「さて、欲しいものを注文しろよ?」
「うん!! 何しようかな〜!!!」
 大きな目をくりりと大きくさせて、彼女はメニューを見ている。

 こんなに喜んでくれるんなら、つれてきたかいはあったな・・・

 アリオスは目を細めながら、恋人の様子をじっと見ていた。
 喜怒哀楽が豊富なところは、アリオスが愛しいと思うところの一つ。

 本当に可愛くてしょうがねえんだからな?

 注文をしたコーヒーを飲みながら、その表情を見ているだけでアリオスは飽きなかった。


「アリオス、有難う。今日は付き合ってもらって」
「ああ」
「わたし出すよ? 誘ったのは私だし・・・」
 そう言ったが、アリオスはちゃんと会計も持ってくれた。
「恋人として当然だろ?」
 そう言って笑う姿は、憎らしいほどカッコよくて、アンジェリークは思わず見惚れてしまった。

 車に乗り込んで、アリオスはふいにアンジェリークを見つめる。
「何?」
「おまえに付き合ったからな? その見返りは貰うぜ?
 -------今夜たっぷりな?」
 耳元で急に囁かれて、アンジェリークは真っ赤になる。
 その意味がもう判らない自分ではない。
 彼女は俯くと、恋人に恥じらいながら定番の言葉を呟いた------
「バカ-------」
  
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アマイモノ〜!!!

モドル