衣替え


 10月になって、アンジェリークが通う、名門スモルニィ女学院の制服も衣替え。
 約4ヶ月ぶりに着る冬服に、少し気分は引き締まる。
 元々、スモルニィも制服は可愛いと評判で、マニア受けの雑誌はもとより、女子中学生や小学生の憧れの学校として、学習誌で紹介されたりするほどだ。
 アンジェリークも最初に制服を見せるのは、やはりアリオスに------
 そう思いながら、鞄を抱えて、アリオスのヘアサロンに向かった。
「-----こんにちは〜」
 きょろきょろと店の中を見回すと、アリオスがいない。
 彼女の姿に気付いてか、インターンのランディが着てくれた。
「アンジェちゃん」
「あ、ランディさん、あの…」
 恥かしそうに少し口ごもれば、彼女が何を知りたいか直ぐに判る。
「アリオスさんなら、今、控え室で休憩してるよ。もくタイム」
「うん! 有難う!! ランディさん!」
 それを聴くなり、アンジェリークは嬉しそうに控え室に歩いていった。
「俺も髪形変えたんだけどな。まあ、しょうがないか・・。アリオスさんしか見えてないから」
 ランディは思わず苦笑してしまった。

 アンジェリークは小さくノックをした後、控え室に入る。
 アリオスは窓辺で煙草をくゆらせている。
 疲れているのか、視線を窓の外に向けている。
「アンジェ、来たのか?」
 声を掛けようとして、アリオスに振り返られ、アンジェリークは目を丸くした。
「何だ気付いてくれてたんだ」
「おまえがぱたぱたと歩く音は直ぐに分かる」
 言いながら、アリオスは煙草を灰皿に押し付け揉み消す。
「何か飲むか?」
「うん。あ、渡しするから、アリオスはいつものブラックでいい?」
「ああ、サンキュ」
 勝手知ったる控え室のパントリー。
 彼にはコーヒーサーバーからブラックのコー日を淹れ、自分にはホットココアを淹れた。
「お待たせ」
「ああ、サンキュ」
 テーブルに飲み物を置いた途端、アリオスはアンジェリークをふわりと持ち上げる。
「きゃあっ」
 そのままアリオスが椅子に座り、彼女はその膝の上に乗せられる。
「アリオス〜!!」
 真っ赤になってアンジェリークは俯きながら、アリオスを見つめる。
「衣替えなんだな? 何だか新鮮だ。イイ感じにやりたくなる」
「もう! アリオス制服に欲情したんじゃ〜!」
 少し怒ったように頬を膨らませ拗ねる恋人に、アリオスはぎゅっと抱き締める。
「------おまえが制服着てるから欲情するんだろ? 他の女だったらしない」
 きっぱりとアリオスは言い切ると、恋人に唇を近づける。
「私だって、アリオスを見せたかったから・・・んんっ」
 甘いキスは徐々に深いものになり、アンジェリークはアリオスの首に手を回した。
 舌で彼に唇を愛撫されるだけで、彼女は躰を甘く震わせる。
「んんっ!!」
 ようやく唇を離されて、アンジェリークは熱で赤くした眼差しをアリオスに向ける。
「おい、そんな瞳で見ないでくれ・・・。ここでやりたくなっちまうじゃねえか」
「もう、アリオス…っ!」
 首筋に唇を這わせながら、アリオスはアンジェリークに囁いていく。
「今夜から俺の家に泊まれよ? 飯も作っておいてくれると嬉しい。金は渡しておくから」
「んんっ…。アリオス・・・、また”ぷち家出”していいの?」
「ああ。”ぷち家出”しに来い?」
「うん・・・、ああっ!」
 項を強く吸われて、アンジェリークは思わず声を上げた。
 栗色の髪で隠れるそこに、アリオスは思い切り痕をつける。
「約束の印な?」
 ニヤリと良くない微笑を浮かべられて、アンジェリークは恥かしそうに目を伏せる。
「もう・・・」
「おまえが制服着るのは、ホント犯罪だな?」
「もう! それはアリオスがヘンなことを考えるから・・・んんっ!」
 言葉を取られるように、アンジェリークは再びキスを受けた。
「俺が帰ってくるまで、制服で今夜はいろよ? 早く帰るからな?」
「うん・・・」
 ノックの音がする。
「アリオスさん、時間です〜」
 アンジェリークは小さく頷くと、アリオスの膝の上から下りた。
「”ぷち家出”の準備と、買物・・・、行って来るね。おうちで待ってるから・・・」
「ああ、頼んだぜ?」
 頬を染めながらアンジェリークはドアを開け、アリオスもその後に続く。
 サロンから出るときに、アンジェリークは軽くアリオスに手を振った。


 その後、3日ぶりの”ぷち家出”を母親に許可してもらい、アンジェリークは慌てて準備を舌後、夕食の買物に向かう。
 母親はもう、アンジェリークをアリオスに嫁に出した気分だった。


 その後、アリオスの言い付けどおり、制服のままで彼を迎えたアンジェリークは、制服のままアリオスに食べられてしまったらしい------
  

コメント

やっぱりうちのアリさんは、アンジェ限定の・・・
『ヘ●タイ』(笑)



モドル