Holiday Lovers


 秋の三連休。
 日頃アリオスがハードワークをしているせいか、この連休は、どこにも行かずに、まったりと過ごさせてあげようと、アンジェリークは考えていた。
 彼は、映画でも見に行こうと言ってくれたが、恋人としてゆっくりと休ませて上げたかった。
 どこも行かなくていい-------
 そういうと、彼は二泊三日でシティホテルの、ジュニアスウィートを取ってくれた。
 逆に気を使わせてしまったかと思ったが、彼のお友達からの正体だと知って、遠慮なく受けることにした。
 連休の前夜から泊り込み。
 最終日はアリオスの家で泊まり、彼の世話をする予定だ。
 早めに仕事を切り上げてくれた彼とホテルのレストランで食事をし、その後はお約束に、アリオスと深く激しく愛を交わした------
 お互いに翌日から三連休なせいか、非常に濃厚な一夜で、アンジェリークはアリオスに何度も舞い上がらせられる。
 早朝まで、何度も愛を交し合い、そのまま深く抱き合って眠りに落ちた-------


 目覚めたのは、昼前だった。
 流石に、早朝まで愛し合っていたことと、お互いに疲れていたこともあり、中々目を覚まさせることが出来なかったのだ。
「…んんっ」
 先に起きたのはやはりアリオス。
 彼は少し目線をそらせると、そこにはまだ天使が深い眠りに付いていた。
 すやすやと安らかに眠る彼の天使は、とても穏やかで可愛らしい。
 いつもなら、アンジェリークがアリオスのために先に起きてくれ、ブランチを用意してくれる。
 そのために、中々朝に寝顔を拝むことも出来ないのだが、今日に限ってはこの愛らしい寝顔を見ることが出来た。
 指先でアンジェリークの顔の輪郭をなぞりながら、アリオスはとても幸せな気分になる。
 どこもアリオスが愛して止まないアンジェリークであった。

 可愛いな・・・。
 仕事で疲れている俺を、いつも癒してくれる・・・。
 本当は、今回もどこか遊びに行きたかったくせに、俺に気を遣いやがって…。

 自分のことよりも彼のことを第一に考える彼女がたまらなく愛しい。
 このままじっと寝顔を見つめていたい-------
 そう考えていると、アンジェリークの瞼が僅かに動いた。
「んんっ、朝・・・?」
 寝ぼけたような声をだすと、アンジェリークはゆっくりと瞳を開く。
「アリオス…」
「おはよう・・・・」
「おはよう、アリオス…」
 アリオスはそのままアンジェリークの唇に、”おはよう”のキスをする。
 触れるだけの甘いキス。
「…朝食、どうする?」
「朝食って、おまえもうブランチの時間だぜ? ここで食いたいが、そろそろベッドメイキングの時間だしな?」
 アンジェリークが慌てて時計を見ると、既に正午になろうとしていた。
「こんなに寝てたんだ…」
「ああ。って言っても、寝たのが6時過ぎだからな? 6時間寝てるか寝てないかだぜ?」
「うん・・・」
 昨日の夜はそれは情熱的な夜だった。
 白い肌にはまだ愛し合った余韻が残っている。
 彼女は真っ赤になりながら、躰を抱き締めた。
「シャワーを浴びて着替えたらレストランに行こうぜ? フロントにその間にベッドメイクをするように言っておくから」
「うん…」
 乱れたベッド。
 しかも愛し合った跡が残った室内を綺麗にしてもらうのは、どこか恥かしい。
 はにかんだように、アンジェリークは乱れたベッドを見つめた。
「シャワー、順番に浴びようぜ?」
「うん」
 流石のアリオスも、ここで一緒に浴びると、あとはどうなるかがわかっているらしい。
 この提案はアンジェリークには少しだけ嬉しかった。

 シャワーを浴びて身支度をした後、ふたりはレストランで軽い食事を楽しむことにする。
「こういう、何もせずにただホテルにいるって言うのも、楽しいわよね?」
「そうだな」
 ふたりは微笑みあって、誰もいないエレベーターに、少しいちゃつきながら乗り込んだ。
 レストランに行く前に、アリオスがフロントに寄って、部屋の掃除の旨を伝えてくれる。
 その後まったりと食事を楽しんだ後部屋に戻ってみると、すっかり綺麗に片付けられていた。
「さすがホテル、凄いわよね?」
「だな?」
 アリオスはアンジェリークの手を取ると、ベッドに連れて行く。
「昼寝でもしようぜ? 夕食まで時間がある。今夜の分もな?」
「もうバカなんだから・・・」
 ニヤリと笑われて、 アンジェリークは定番の言葉しか、囁くことが出来なかった------

 恋人たちの休日。
 それは甘いお菓子で出来ている…。

コメント

こういううまったり休日もふたりには似合いますね!
モドル