アンジェリークは白い控え室で感慨深げに窓の外を見つめていた。 外はとても気持ちよく晴れ上がり、アンジェリークは笑みすらこぼしてしまう。 よかった…。 彼と私の大切な日が、天候にも祝福されて… 彼女は嬉しそうに太陽に向かって微笑み返した。 時計を見ると、時間は刻々と迫っている。 アンジェリークはもう一度確かめるかのように、鏡の前に立った。 白いウェディングドレスは彼が選んだもの。 手術の後だからと、少し戸惑ったものの 「俺の手術の腕が信じられないのか?」 と、彼に言われてこのドレスになった。 心臓の手術をした後のせいか、 その痕を誰にも見られたくなくて、アンジェリークは首まで隠れるようなドレスを選んだ。 だが、夫になる彼はそれを許してくれず、自分が選んだドレスを彼女に着せたのだ。 どちらかといえば、アンジェリークが選んだものよりも、断然夫になるレヴィアスが選んだもののほうが素敵で、更にアンジェリークには似合っていた。 「やっぱりレヴィアスの言う通りだったな…」 鏡で映る自分にほっと溜息をつける。 しっかりと胸は開いてはいるものの谷間が見えるだけで、傷口は見えやしない。 それどころか、アンジェリークの真珠の肌を艶やかに見せ、色っぽく見せている。 白い鼻をあしらい、豪華にオーガンジーをあしらった愛らしいデザインは、天使のような彼女にはまさにぴったりで、本当に天使のようにみえる。 傍らには親友レイチェルが作ってくれたブーケがある。 白い花を中心にしたブーケは、アンジェリークの天使のような性質を表しているかのようだ。 彼女はそれを手にとり、香りをかいだ。 「いい香り…」 死ぬと思っていた自分が、愛する男性によって救われ、今こうして彼と晴れの日を迎えている。 手術の日に夫婦になった2人だが、レヴィアスがどうしてもといって、今日の晴れの日を準備してくれたのだ。 僅か二月前には考えられなかったことだ。 病に蝕まれてこのまま消えるはずだった命が、愛する男性によって息を吹き返す。 これ以上幸せなことはないと、アンジェリークは切なく思っていた。 あの人が好きなの…。 どうしようもなく好きなの…。 生まれたときからずっと愛してやまなかった男性(ひと) 私の最初で最後の男性(ひと) 生涯、彼以外の男性は愛せない…。 堪らなく好き。 死ぬほどすき・・・。 彼の子供を生んで、彼のためだけに、私は生きてゆきたい… ノックの音がする。 「俺だ」 「どうぞ?」 アンジェリークの胸はときめき、入ってきてくれる男性を一途に待つ。 「アンジェ」 「レヴィアス…」 控え室に入ってきた彼はグレーのタキシードに身を包み、とても艶やかに映る。 アンジェリークは、彼が自分の夫になるなんてまだ信じられないと想う。 余りにも素敵で、アンジェリークはついつい魅入ってしまう。 「どうした?」 はにかんで俯く彼女に、レヴィアスは優しく包み込んだ。 「だって、レヴィアスが余りにも素敵だから…」 小さな声に、レヴィアスもフッと笑う。 「------アンジェ、おまえも今日は最高に綺麗だ…」 レヴィアスは感嘆のこもった声で囁くと、彼女をぎゅっと抱きしめた。 今日の彼女は本当に美しいとレヴィアスは思った。 今までの中で一番美しい。 「このまま押し倒したい気分だぜ? アンジェ」 「もう…」 はにかんだ彼女が可愛くてレヴィアスは彼女にしか見せない笑顔を向けると、そのまま軽くキスをした。 「レヴィアス…」 アンジェリークは益々真っ赤になって、更に艶やかさをましている。 「このままだと本当に押し倒してしまいそうになるからな…。 そろそろ時間だ・・、行こう」 「-------はいっ!」 差し出された夫の腕に自分の腕を絡めて、アンジェリークは一歩踏み出す。 この一歩は明るい二人の未来の第一歩だから、一生懸命踏みしめよう・・・。 お母さん、お父さん…。 そしてかけがいのないエリスおねえちゃん・・・。 今日、私は、神様の前でレヴィアスのお嫁さんになります・・・。 部屋から教会に進み行く。 その先には、もう、明るい未来が待っている----- |
コメント 明日から6月ということで、久しぶりの2人です。 本編では余り触れられなかったので、 今回ご登場願いました〜 |