After Bath


 バスに入った後、どうしてこんなに躰が気だるいのだろうか------
 アンジェリークは入浴後、バスローブに身を包む。
 もちろん下にはなにも身につけてはいない。
 それは恋人の命令だから。
 バスルームの電気を消して、寝室に向かうと、恋人が冷たい氷入りのジュースを用意してくれていた。
「のぼせねえようにな、早く飲んじまえよ?」
「うん…」
 テーブルの上に置かれたグラスを手に取ると、程よく気持ちがいい。
 それを頬に当て、熱を冷ましたあと、一気に飲み干した。
 彼もお揃いのローブ姿で、煙草を片手に、艶やかな微笑を浮かべながら眺めている。
「いいのみっぷりだったな?」
「水分はちゃんと取らないとね? お風呂の後は」
「そりゃ、そうだな…」
 まだ熱を冷ますには足りなくて、アンジェリークはコップの中の氷を口に含む。
 それがとてもセクシャルな印象を恋人に与える。
 氷を口の中で転がす仕草の彼女を、アリオスは目を細めて見つめる。
 不意に、アンジェリークの手を取ると、アリオスはその唇を噛み付くように奪った。
「…んんっ!!!」
 口の中に含んだ氷が、彼の口と自分の口を行き来する。
 冷たい氷の刺激が来るたびに、アンジェリークは愛撫されたのと同じような快楽を覚えた。
「はあ…」
 ふたりの情熱か、氷は見る見るうちに溶けていく。
 冷たさが熱に変わったとき、唇は離された。
「あ・・・・」
 まだ物足りない。
 熱に冒されたように、アンジェリークは潤んだ瞳をアリオスに向けてせがむ。
「お代わりが欲しいの…」
「しょうがねえな…」
 くすりと笑ってアリオスは口の中に氷を入れると、そのまま唇を重ねてくる。
 熱さと冷たさ。
 その相反するものがアンジェリークをうっとりとさせる。
 相変わらず巧みなアリオスのキス。
 情熱で直ぐに氷が溶けてしまう。
 二人の愛の暑さに氷が嫉妬したように、直ぐに水になって消えてしまった。
 再び唇が離れた。
 氷が口に中で消えてしまうのが妙に切なくて、アンジェリークは瞳に涙を滲ませる。
「アリオス…」
 愛らしい彼女がどうして泣きそうな表情をしているのか。
 アリオスもそのところは理解している。
 ぎゅっと抱き締めてもらうと、切なさが和らいだ。
「続きはあっちだな?」
 躰をひょいと抱き上げられると、アンジェリークはベッドに運ばれる。
 後に待っているのは、氷すら素早く溶かしてしまう情熱だけ…。

コメント

氷の交換。
何だかエロティツクで描いてみたかったんです。
R指定かなあ(笑)
モドル