三歳の双子を抱えるアンジェリークにとって、アリオスと過ごす、この秘めやかな夜のひと時が、最も幸せであり、また安らげる時間。 今夜も、子供が寝静まったあと、二人は激しく愛し合い、その余韻に浸っていた。 「・・・アリオス・・・」 「ようやく目がさめたか?」 「うん」 彼に愛されたあと、彼女は何時もそのあまりもの快楽に失神してしまうこともしばしばで、今夜もそうなってしまい、今ようやく意識を取り戻したところだった。 しっかりと抱きしめられ、彼女は深い安らぎを覚える。 「愛してる・・・」 「私も・・・」 アンジェリークは、アリオスの腕の中でその精悍な胸にもたれながら、甘えた。 「すごく幸せよ、あなたのそばにこうしていられるだけで・・・」 「俺も・・・」 不意にドアが激しく叩かれる音がして、アンジェリークもアリオスも思わず顔を見合わせる。 「マ〜マ!!!! おしっこ!!! おしっこ!!!!」 「エリスも〜!! ママ、ママ!!!」 二人の子供たちが、激しくドアを叩いている。 実は、愛し合っている間だけ、二人は何時も部屋のカギをかける。 子供が覗かないようにである。 「あっ、行ってくるわ・・・」 アンジェリークは、甘い痺れが取れない身体を起こそうとして、アリオスに制される。 「俺が行く。おまえはここにいろ? どうせこんなんだったら、うまく歩けねえだろ?」 「もうバカ・・・」 ニヤリとアリオスに笑われると、彼女は、真っ赤になって抗議した。 アリオスは全裸のままベッドから下り、近くにあるバスローヴを羽織ると、アンジェリークの頬に軽くキスをする。 「ガキどもを寝かせたら、また喜ばせてやるからな? 明日は日曜日だ。頑張るぜ?」 「もう・・・」 笑いながら、アンジェリークもアリオスにキスをする。 「ごめんなさい、二人を頼むわね」 「ああ」 アリオスは部屋のドアを開け、子供達の前に姿を表した。 二人は一瞬、父親の姿に目を丸くする。 銀色の髪が僅かに乱れてまるでテレビでみる俳優のようだったから。 「おい、行くぜ? トイレ」 「何だパパか・・・。ママが良かった」 相変わらずあからさまにがっかりとする娘のエリスにアリオスは少しむすっとする。 「ほら文句言ってねえで、行くぞ」 三人で、一階にあるトイレに向かいながら、弟のレヴィアスは父親に不思議そうに問う。 「ねえ、ママは?」 「ママは、疲れて寝てる」 「どうして?」 レヴィアスの無邪気な問いに、アリオスは一瞬絶句した。 「ママは・・・、いつも俺たちの世話をしてくれて、学校にもいって、大変だろう? だからだ」 「・・・うん」 レヴィアスは気性がアンジェリークに似ているせいか、素直に頷いてくれた。 トイレに着いて、先ずはエリスからである。 「パパ! レヴィアス!! 居なくなったりしないでよ!!」 「ああ」 「うん、お姉ちゃん!」 エリスはアリオスのローブの紐を引っ張りながら用を足し、その間、レヴィアスがアリオスの手を握っている。 「ふ〜、次はレヴィアスよ!」 「うん!」 今度は逆。 レヴィアスがアリオスのローブを引っ張って用を足し、エリスが今度は、アリオスの手を握り締めた。 「終わったか、二人とも。帰るぞ?」 アリオスは二人を引っ張って子供部屋に行き、それぞれのベッドに寝かしつけてやった。 「おやすみ〜!」 厳禁にもエリスはすぐに寝たが、レヴィアスは寝る前に、じっとアリオスのローヴを見つめた。 「パパ?」 「何だ?」 「どうして寝る前は、パジャマだったのに、今はこれなの?」 これにはアリオスも言葉を失う。 鋭い突っ込みだな・・・ 「パジャマで寝るのに飽きて着替えただけだ」 彼はあせる心を見せまいと、必死のポーカーフェースを作る。 「ふ〜ん、そうなんだ・・・。おやすみ〜」 「おやすみ」 納得したのかレヴィアスはそのまま眠り、ほっとして、アリオスは子供部屋から出る。 教訓。 寝たときと、途中でおきるときは、同じ格好を・・・だな・・・。 |