アリオス遅いな------ アンジェリークは時計を見ながら一つ溜息をつく。 テーブルのは上には温かな食事。 そして心には温かな彼へのプレゼント。 それを思うだけでクスリと笑ってしまう。 アリオス…。 喜んでくれるかな? 私は凄く嬉しいんだけどな・・・ 幸せで堪らないせいか、少し興奮してしまい、アンジェリークは微笑まずにはいられなくなってしまう。 彼に一緒にお祝いをしてもらいたくて、今日は彼の大好物のラムシチューを作った。 アリオスが帰ってくれば、直ぐにでも温めて上げられる様にしている。 だが、お腹の虫は待ってくれそうになくて、低い音をだしていた。 「お腹すいちゃったみたいね…。もう少し待ってね?」 穏やかな表情で言う彼女は、とても輝いている。 彼を堪らなく愛してる…。 私たちは聖地で長い時間を共に過ごし、 今、時間が再び二人の身体を過ぎるようになってからも、長い時間をともにしようと誓い合った--------- その想いは日に日に深いものになっていく。 時計を見る。 再び切なさが襲う。 時間がとてももどかしいものに感じてしまう。 不意に、彼女の心に在る考えが浮かんだ。 そうだ! いいこと思いついちゃった!! びっくりするかな〜!!! 妙案に、アンジェリークはまるで子供のようにほくそえんだ------ -------その頃、アリオスは髪を乱して家路を急いでいた。 早く帰ってやらねえとな。 ひとりじゃ心細いだろう… 車を停めてそこから飛び降りると、走って玄関に向かい、ドアを開けてようやく部屋に入った。 「アンジェ?」 いつもなら鍵が開くなり駆け出してくる彼女が、今日は駆け出して来ない。 「寝ちまったのか?」 不意に時計に視線を落とすが、まだ9時を回ったばかり。 彼女が寝ているとすれば、それはよほど気分が悪い可能性が高いのだが。 「アンジェ?」 少し不安になってアリオスはあたりを見回してみた。 どこも真っ暗で明かりが落とされている。 「アンジェ??」 不意に灯が着き、アリオスは驚いてしまった。 「お帰りなさい!!!」 「アンジェ!!」 後ろから不意に柔らかな温かさに包まれて、アリオスは胸を温かくする。 「ったく、おまえは…」 騙されたのが照れくさいのか、アリオスはわざと悪態をつけている。 「今日もお仕事ご苦労様」 「ああ」 アリオスは優しく笑うと、アンジェリークに向き直りその華奢な身体を抱きしめた。 「ただいま、アンジェ」 「ねえ、びっくりした?」 「さあな…」 何事もなかったかのように言った後、彼はアンジェリークに”お帰りのキス”をする。 彼女もそれをくすくすと笑いながら受けた。 甘い二人だけの時間。 女王と守護聖だったときとは違い、時間が流れ始めた今の甘さもまた格別なものがある。 荒んでいた彼の心を優しい光で包み癒してくれた彼だけの天使。 身も心も救ってくれた、彼の唯一の女神----- 愛しくて堪らなくて、キスをしながら、アリオスはいつのまにか強く抱きしめていた。 「…んっ」 甘く激しいキスが終わっても、アリオスの腕の強さは弱まることがなくて。 「アリオス、夕飯の支度しなくっちゃ。 私もお腹ペコペコなの。 それにびっくりしちゃうでしょう?」 くすくすと笑いながら、アンジェリークは彼から離れようとする。 自分よりも11も年上の彼。 だが、彼女の前だけでは少し子供っぽくなるのもまた事実で------ そこが可愛い------ そう思っていることを彼に正直に言うことが出来ないアンジェリークである。 それは少し照れくさい、彼女の『秘密』だから------- アリオスは、まるでおもちゃを取り上げられた子供のようにしぶしぶアンジェリークの身体から腕を離すと、彼女をじっと見る。 「------おい、”びっくりする”ってなんだよ」 彼が訊いてきてはっとする。 「------秘密よ? 後で」 ふふっと楽しそうに笑いながらキッチンに向かう彼女を、アリオスは頭をかしげて見送った 今日のアンジェいつもと違うな? 何かいいことでもあったんだろうか アリオスはそう思いながら、カバンを置きに書斎に向かった。 キッチンに戻ると、そこはもう楽園のような温かな世界が広がっていた。 「ご飯が出来たわ? 今日はアリオスの好きなラムシチューよ」 「サンキュ」 キッチンにはとてもいい香りが広がり、アリオスの食欲を満たそうとしてくれている。 「いつもサンキュ。おまえがいるから俺は安心して働けるんだぜ」 愛しい妻に感謝とばかりに、アリオスは彼女の柔らかな頬にキスを送った。 「コチラこそいつも有難う…」 アンジェリークは笑うと、アリオスを少しはにかんだ様子で見上げた。 「あのね…」 「何だよ?」 アリオスに見つめられると、さらに恥かしくなってしまい、彼女は頬を真っ赤にする。 アンジェリークはアリオスの横にわざと座ると、彼の手をゆっくり取り、そっと腹部にもっていった。 「…まさか…」 そこに手をもっていかれた瞬間、アリオスは直感して、なんともいえない表情で彼女を見つめる。 「おまえ…」 穏やかに微笑むと、アンジェリークはコクリと頷いた。 「今日ね、病院に行ったの…。 今月遅れてたし、最近体が重かったからひょっとしてと思って・・・」 はにかんで告白するアンジェリークが酷く愛しい。 アリオスはこのまま押し倒したくなるのを何とか堪えた。 「・・・予定日は、11月22日。 あなたの誕生日なの…」 次の瞬間、アンジェリークは強く抱きすくめられていた。 「あっ、アリオス…」 アリオスはただそれだけを言ってアンジェリークを抱きしめたまま放さない。 「嬉しい?」 何も言わない彼に、少しだけ不安になって、アンジェリークはアリオスを見上げる。 「-------当たり前のことを訊くな? おまえと俺の初めての子供だ…。 嬉しくねえはずはねえだろ? おまえは俺が欲しいものを全部くれる・・・。 温かい家庭も全部・・・。 サンキュ…」 彼の熱い思いが心の中に流れ込んでくる。 紆余曲折を経て夫婦になったがゆえに、アンジェリークはアリオスの心を強く感じ取った。 「アリオス・・・っ!」 嬉しすぎてアンジェリークは涙が込み上げ、そのままアリオスの胸の中に顔を埋める。 「こら、メシを食うぞ? おまえもお腹のこのためにくわねえといかねえし、俺も腹が減ったからな。 シチューでお祝いしような」 「うん、うん、うん」 何度か頷いた後に、アンジェリークはようやく顔を上げてアリオスを見た。 「頑張ろうね、新米ぱぱさん」 「そっちこそだぜ? 新米ママ」 2人は笑いあうと、早速お祝いの準備を始める。 この宇宙一望まれて生まれてくる子どもがやってくるのを、今から指折り数えて待つ、幸せな二人だった------- |
| コメント 「誕生」をテーマに一作かいてみました。 柔らかな感じをだしたかったんですが(笑) ちょっぴん失敗か(笑) 二人にここまで望まれる子供は、凄く幸せですね〜。 私は最近新婚萌え(笑) 私信。サミーさまはっぴぃばあすでい! |