Little Darling


 ・ライ麦パン4枚
 ・チーズ100g
 ・グレープフルーツ1/2個
 ・セロリ6本
 ・牛乳500cc
 ・ビタミン剤少々
 -------以上が私の大好きな男性の食事。
 車の中で、飽きないかと訊いたら、全く飽きないと言っていた。
 繊維も、たんぱく質も、炭水化物も、ビタミンも・・・。
 どれもバランスよく取られてはいるけれど、一日に最低限の大切なものを摂取できるけれど・・・。
 あくまで最低限だけ。
 どう考えたって、最低限しか取られていない…。
 チーズはチェダーチーズだから、鉄分だって取れているけれど・・・。
 でも、でも、そんなんじゃだめ!!
 ご飯はとても大切なもの!!
 バランスよい食事も大切だけれど、美味しい温かな食事は心も豊かにしてくれる!!
 そこのところを、零一さんにも教えなくっちゃならない------


 は零一から貰った鍵を片手に、いそいそとスーパーに向かう。
 「学業を疎かにする為に、鍵を渡すのではないから、食事そうじの世話など一切しなくて良い」
 そこまで言われたものの、どうしても、彼の食事内容に我慢できなくて、その言いつけをは破ろうとしていた。

 だって合宿のときの食事は、凄く喜んで食べてくれたもの・・・。
 絶対にあれしか食べられない何てことは無いから…。

 スーパーに行って、先ずはコメ売り場で玄米を買う。
 コメものを食べない氷室だが、小さな炊飯器があることをは知っている。
 それで炊けそうな「ネオ玄米」を選ぶ。
 ビタミンと繊維質が豊富だ。
 メインは秋の味覚秋刀魚。
 これでたんぱく質、カルシウムは充分だ。
 繊維質やビタミンB郡は、山芋のおろしたもので補う。
 味噌汁の具はたっぷりの海草と豆腐の入ったもの。
 これに加えてオクラの和え物で野菜不足を解消。
 デザートはグレープフルーツ。
 これで完璧だ。
 自分で考えた献立に、は満足しながら、材料をふたり分買い込んでスーパーを後にした。
 氷室の帰ってくるまで夕食を作ってしまいたい。
 そこからは腕によりを掛けて、夕食に支度をした。
 ご飯を炊き、味噌汁を作り、魚を焼く------
 氷室のためにこうしてあげることが、何よりも嬉しい。
 食事の準備から、セッティングまで。
 は奥様さながらに奮闘した。

「おや・・・?」
 仕事が終わり、零一がマンションに変えると、自分の部屋に灯がついているのが判った。
か・・・」
 鍵を渡したのは、先週の”社会見学”
 なぜか心が温かくなるのを零一は感じながら、部屋にいそいそと向かった。

 インターホンがなり、は即座にでた。
「はい?」
、私だ」
 いつものように感情が無いが、どこか声が上ずっていることをは感じ取り、くすりと笑う。
「はい、直ぐに開けます」 
 ぱたぱたとキッチンから箸って、ドアを開ける。
 ドアを開けるなり、は氷室に抱きついた。
「おかえりなさい! 零一さんっ!」
「ま、・・」
 少しだけ強張って固まる氷室に、はくすりと笑う。
「食事を作りました、一緒に食べましょう!!」
「食事は、作らなくて良いといったはずだ」
 なるべく硬い声で、諭すように零一は言うが、にそんなことは通用しない。
「零一さん。あれだったら栄養素が取られているけど、最低限だけだわ。痩せちゃうし、疲れやすくなっちゃうのよ? だから今夜だけでも良いから、私の作ったご飯を食べて? 一生懸命作って、ちゃんと栄養に気を配ったから、ね? 特製夕食を食べて欲しいの・・・」
 懇願するように上目遣いで言われると、さすがの氷室も弱い。
 最も彼にこの攻撃が通用するのは、他ならぬだけなのだが。
「-----今日だけだぞ」
「だから零一さん好きなの!」
「あっ」
 めがねがずり落ちるまで、零一は照れてしまった。

 スーツのジャケットを縫いで食卓に座る。
 今日はレイアウトまでもこってある。
 いつも食卓に機能性しか求めなかった氷室だが、このような食卓も悪くないと思う。
「今日はね、健康に気を使う零一さんのために、健康によさそうなものをチョイス下の。カロリーとかビタミンとかも大丈夫よ。ちゃんと栄養ブック見てやったから・・・」
 が一生懸命やってくれたのは、食卓の温かさからにじみ出てきている。
「判った頂こう…」
「どうぞ、召し上がれ」
 ふたりは一緒に手を合わせて、いただきマスをする。
 が考えて作ってくれた献立。
 それを一口食べてみる。
「・・・美味い!!!」
「ほんと!!!」
 本当に嬉しくて、にとってはそれが何よりものごちどうであるリ、賛辞になる。
「こんな美味い飯は食べたことが無い。
 本当に有難う・・・」
「零一さん・・・」
 心からの気持ちだった。
 と囲む食卓の雰囲気のせいもあったかもしれないが、それ以上に温かく、美味しく感じる。
 ふたりはお互いに温かい気持ちになりながら、微笑みあって食事をした。

「デザートね?」
「ああ」
 ふたりで仲良く食器を片付けた後、デザートを食べる。
 新鮮なグレープフルーツだ。
…、まだデザートを忘れていないか?」
「え!?」
 そのまま息を飲む暇もなく、は氷室に手を引っ張られると、そのまま膝の上に乗せられた。
「零一さん・・・」
 真っ赤になりながら、は氷室を見つめる。
「最高のデザートは君だからな・・・」
 そのまま唇を重ねられると、舌先で巧みに愛撫される。
 そのキスに溺れ、唇を話される頃には、はぐったりとしていた。
「・・・零一さん・・・」
「ご馳走様、
 ・・・その、また・・・、機会があったら、頼む・・・」
「ホント!!!」
 テレながら途切れ途切れに言う零一に、は嬉しそうに満面の笑顔を向ける。
「------もちろん、よろこんで!」
 今度はから唇を重ねる。
 お互いに交互にキスをしあう。
 お互いの与える甘いデザートに、ふたりは溶け込んでいった------
 

コメント

あのご飯は酷い(笑)
それゆえの創作です(笑)

モドル