KITTY


 珪が学校の裏庭でこっそりと飼っている猫が、子猫を生んだ。
 その中でも少し鈍い猫を、気の置けない大切なクラスメイトである””にちなんで、彼は””と名づけていた。
 情熱的にその名前を呼んだときに、偶然見つかってしまい、以来、彼女も猫の世話をしてくれるようになった。
「行くぜ、。猫を見に」
「うん、珪くん」
 今日はお互いにアルバイトもないのんびりとした日。
 ふたりは、担任の氷室の目を盗んで、ホームルームが終わるなり、裏庭に駈けて行った。
「珪くん、今日は猫缶買って来たのよ? ママは喜んでくれるかしら!!」
「たぶんな。いっぱいのままがご飯を食べれば、栄養の良いおっぱいが出るからな。も喜ぶぜ」
「うん!!」
 お互いに、””と連呼するのは妙に照れくさい。
 ふたりは顔を見合わせてくすりと笑うと、慌てて中庭に向かった------



 珪とが何度か声を出して名前を呼ぶと、一家が総出で出てきた。
 にゃーにゃーとおなかがすいたと連呼している。
 いつものように、ふたりはちゃんと猫が全員揃っているかどうかをチェックする。
 チェックしたはいいのだが、足りない。
!!」
 そこにはふたりが一番可愛がっている、猫のがいない…。
「ちょっと捜してくる!!」
「おい、!!」
 自分と同じ名前の猫。
 が心配でないわけがない。
 おっぱいを飲むのが下手で、いつも一歩遅れる
 愛らしい鳴き声で、精一杯鳴くが、珪にもにも大切で仕方が無かった。
「ったく・・・。は」
 苦笑しながら珪は、おなかを空かせたの母に餌をたっぷりやったあと、子供たちにも子猫用の餌をやった。
 もちろんの分は残してである。
 全部やり終えると、今度は中々帰ってこない、クラスメイトのが気になって、捜しにいくことにした。
「おい、! !」
 何度か呼びながら、探し回る。
 暫くして、植え込みの前で座り込んでいるを発見すると、駆け寄っていった。
「おいっ! いるんなら返事しろよ?」
「しー!」
 声を掛けるなり、珪はに制される。
「静かにして、珪君。これ見て…」
 が少し躰をずらすと、そこに羽部このが、大きく脚を開いておなかを出して眠っていた。
「ぷッ、暢気だよな? ホントにおまえみたいだ…」
 げらげらと笑い出す珪に、は真っ赤になって少しぷんすかモードだ。
「もう! 珪くん! わたしはこんなにおなかを出して寝ないわよ!!」
「おまえの弟が言ってたぜ? 姉ちゃんはいつも腹だして寝てるから大変だって」
「もう尽のやつ・・・」
 珪とが騒いでいたからか、子猫のは小さな躰をぐっと伸びをする。
「あっ!」
 二人揃って子猫に魅入ると、大きな瞳を大きく開ける。
「うんにゃ〜ん」
 余りにも可愛くて、二人は微笑みながら子猫を見つめた。
「さあ、、行くぞ? 皆待ってるからな?」
「にゃ〜ん」
 珪が抱き上げると、子猫のは気持ちよさそうにうとうととしている。
「この子、珪くんが好きなのよ?」
「ああ。俺が里親になるんだからな」
「きっと、私と同じぐらい、珪くんがすきなのよ…。妬けちゃう」
 珪は、さりげないの告白を聞き逃さなかった。
 じっと見つめると、彼女は耳朶まで真っ赤にさせている。
「もう、みないでよお!」
 真っ赤になってしまったが可愛くて、珪は微笑を浮かべると、柔らかな頬にキスを落とした。
 頬のキスで”有難う”と気持ちを伝える。
 一瞬のことなのに、は益々赤くなる。
 と同様、なぜか珪も真っ赤になってしまった。
 くすぐったい沈黙が、ふたりを包む。
「------戻ろうか」
 くすりと照れ笑いを浮かべながら囁くと、はコクリと頷いた。

コメント

猫の話は書きたかったんです。
あまあまですな。

モドル