ヨタハチのオイルで何が一番大事って…。今月はワッシャ確認月間とすることを提案

車種に限らず、旧車に乗っている人と話をするとオイルの話は共通の話題として良く出る。ヨタハチは空冷だから云々、とか油圧がどうのとか粘度がどうのという前に、筆者は一番大切なことが一つだけあると思っている。それは何かというと、オイルフィルターケースの中にあるワッシャがあるか確認することだ。あまりにも当たり前すぎて腰砕けになっている人もいると思うが、改めて言われると自信がない人もたくさんいるのではないかと思う。今年も11月になってしまったが、その間に初めて見ることになったエンジンが実働、不動を問わず4基あり全てのエンジンでこのワッシャがなくなっていた。大事なのはワッシャ。ここにきてその意を新たにしている。

パーツリストを持っている方は見てみるとわかるが、オイルフィルターケースの中は下からスプリング、話題のワッシヤ、ゴムのガスケット、オイルフィルター本体という順番でボルトを中心に構成されている。このワッシャはただのワッシャではない。その働きは非常に大事である。オイルフィルターケースの中では、オイルエレメントの外側にエンジンから送られてきた汚れたオイルが満たされる。オイルポンプの圧でオイルエレメントを通ることでオイルから汚れが濾されてオイルフィルターの中心に移動してオイルフイルターケースの蓋の真ん中を通って再びエンジンに戻るようになっている。

この底部にあるワッシャはゴムのパッキンを保持して汚れたオイルときれいなオイルを隔絶するという重要な役割がある。仮にこのワッシャがないとどうなるだろう。オイルフィルターを組み立てる際にはケースの中央にあるボルトを締めてオイルフィルターに入ったエンジンオイルがこぼれないようにするわけだが、どんなに上手に組んでもこのワッシャを外したまま締めたら、底部のゴムパッキンはスプリングの圧に負けてめくれ上がってしまう。エンジンオイルは抵抗の少ないところを狙って通ろうとするので、フィルターケースに入ったオイルはフィルターを通らずめくれ上がったゴムパッキンを通って出ていこうとする。こうなると当然オイルはフィルターを通らず、汚いままケースを出ていくことになる。オイルフィルター底部には少し空間があるが、そこには比較的重たい粒子状のスラッジなどがたまるようにできている。そこのゴムパッキンがめくれていれば、スラッジを吸い込んでまたエンジンに回すなんてことも想像に難くない。

なぜこのワッシャがなくなりやすいのかというと、まずカートリッド式のオイルフィルターが圧倒的になったことが上げられるだろう。おそらく整備の現場でも組み立て式のオイルフィルターを扱ったことのないメカニックが多くなっていることが原因になっていると思う。たしかにヨタハチが世に出た頃は、オイルフィルターの方式がカートリッジ式に変わる過渡期にあたる。ヨタハチ、1600GTは組み立て式だが2000GTはすでにカートリッジ式。RT40コロナに至っては、モデルの途中でカートリッジ式になっている。日産車でいうとスカイラインGT-Rは組み立て式だが、GTはカートリッジ式。もっとも、日産の場合はプリンスとの合併というエポックもあるので割り引いて考えなければいけない。出たついででいうと、スカイラインGT-Rは組み立て式のオイルフィルターで、構造もほぼ同じ。このワッシヤがないまま回されたS20エンジンはワッシャありで整備されたものに比べるとコンディションに大きく差が出るそうだ。そこはヨタハチの比ではないと思う。買うならワッシャ付きで乗られたものを買いたいのは人情だ。以上のことから、信頼できる工場に出しているから大丈夫、とは必ずしもいえないようだ。そういう方こそ一度自分の目で確認してみたらいい。その信頼できる工場と変わらずお付き合いするためにも必要だ。

工場には整備に出さず、自身でオイル交換くらいはするという場合はもっと注意が必要だ。オイルフィルターケースを分解して廃油トレーに中の部品をぶちまけたら、ハイッそれまでよ。ワッシャの存在に気が付いていなければ哀れ、ワッシャは真っ黒の廃油の中に紛れて捨てられてしまう。よしんばトレーに健気にも張り付いて残っていたとしても、ドレンプラグガスケットと間違われて捨てられてしまう可能性が高い。オイルフィルターエレメントについているゴムのガスケットが二種類あるのはヨタハチオーナーであればどこかでみたことがあるという前提で話をするが、このガスケットの中で昔のお菓子の「スピン」みたいな形をしているほうを下に使っていたエンジンをみたことがあるくらいだから、ワッシャの一つや二つ、なんとも思わないで捨ててしまうのは訳はない。

こんな作業をしているオーナーがやれあのオイルがいいだの、この粘度がいいだの言っても説得力はない。オメガでも最高級なオイルを入れたとしても、勢い余って自分で作ったオイルをいれたとしても全てはこのワッシャひとつでだいなしだ。本当ならケースを分解したときには捨ててしまうのがいいオイルフィルターを再使用しようがするまいが、このワッシャがなければオイルフィルターはただただオイルの中に浸かっているいるだけの代物で何にも役にはたっていない。今年はそんなエンジンを四基もみたものだから、筆者のストックにあるこのワッシャが底を尽き始めたので部品を頼んでみた。補給はしていて単価はなんと20円。いまどきトーサンのライスチョコレートだって20円では買えない。だから敢えて言おう、オイルに薀蓄を垂れる前にこのワッシャの存在を確認してくれと。仮にあったとしても組み方が間違えてるなんてのはざらにある。今度オイルを交換するときに見てみる…なんてぬるいことは言わないで、3パーセントでも自信がなかったら分解して確認してみたらいい。なぜならその間にもオイルフィルターを通らないでエンジンオイルはあなたの車の中を回っているからだ。不安になって夜中にオイルフィルターケースを開けました!という位が正しい反応だと筆者は思うがどうだろう。
2012/11/2

命だけは大切に…。あるミーティングで思ったこと。

頃は秋。来週には二十四節季の一つ、小雪を迎えようとする現在、各地で旧車イベントが毎週どこかで行われていてにぎやかである。とあるミーティングに珍しく参加したところ、現場ではヨタハチが二台参加していた。そのヨタハチなのだが、塗装や鈑金についてはありありとやり直した感じなので言いたいことはあるがこの際は問題にしないで考えても、二台が二台とも外見からは正確な年式を判別するのは不可能だった。一台は、おそらくその方がいいと判断したのだろうと思うが、後補給のガラスが全部に入っていて資料的価値はなしだった。この辺りまではどこのミーティングでも見るヨタハチあるあるなのだが、もう一台は更にヤバかった。ヤバいというのは、乗っていると命の危険を感じないのだろうか…ということをやっていたからだ。

よくヨタハチ、パプリカはフロントロアのトーションバーのアンカーボルトの調整で簡単に車高が落ちると言われていて現にそうなのだが、この簡単にフロントの車高を落とせる機構がその車のコンディションを悪くせしめ、そのオーナーは車に乗ることの責任を軽んじる結果に繋がるものとして罪作りなものであると筆者は思う。新車時にはタイヤの上端とフェンダーアーチの下端の間にげんこつが入るくらいのものをかっこ悪いからという理由なんだろう、指一本も入らないくらいにその車は車高を下げていた。タイヤもお約束の扁平タイヤ。これだけ換えてあると、例えばこの位置でホイールのアライメントは見たのだろうかと心配になる。もしアライメント調整をしていなかったとしたら、おそらく真っ直ぐ走ることさえままならない。最悪はドライバーがその事に気が付かず、修正舵角を与え続けて走っていると思うので、乗っているオーナーは肝を冷やしながら走っているに違いない。長期的に見ると、サスペンションの動く量が少ない分ボディにかかる負担は大きくなるので錆で弱くなっているところから座屈しはじめるだろう。意外と大きい影響を受けるのはステアリング系で、ステアリングにしがみつかないと回らないほど作動感が重く、また無理に力をかけるからステアリングギアボックスやアーム類の消耗を早くする。それを古い車だから重ステなんだよ、などとオーナーは薀蓄を並べ立てている姿が目に浮かぶ。

フロントサスペンションの右と左のキャスター角がプラスとマイナスになっていたというのもヨタハチあるあるの一つなのだが、仮にこうなっていたらこれだけフロントの車高だけ下げていると左右でステアリングのフィーリングが違っているはずだ。片方にきると腕がパンパンになるくらい力を入れないとステアできないが、反対の方は勝手に曲がって行くなんていう極端なハンドリングになっていても不思議ではない。これだけいうとわかるとおり、車高を落として得たかもしれないカッコよさと乗っている人間の安全性は真反対ではないがある程度トレードされる関係にある。少なくとも、オーナーと近しい人が乗るかもしれない車が危険な状態にあるというのはいけない。

朝早くから参加したのだが、結局そのオーナーは夕方に解散になるまで車のところには帰ってこなかった。何事か言おうかとも思ったが、いや、この方がよかっただろう。言ったところで悪くなるのは筆者の車ではないし、持ち主はそれでいいと思っているのだ。ただ、あのヨタハチに乗って死なれたりしたらたとえ知らない方だとしても寝覚めが悪いので、思い当たる方はぜひ自主的に見直してほしいと思う。
2012/11/19

なんだかなぁ。不意にヨタハチと遭遇

昨日の夕方5時頃、中央高速国立府中インター付近の甲州街道日野バイパスで走っている赤いヨタハチと不意に遭遇した。テールランプの位置が低かったので、初代のスズキ ワゴンRかと思ったがそうではなかった。八王子ナンバーだったのでご近所の方だとは思うが、筆者は見たことがない。走っている姿を見ているとなんだか言いようのない違和感を覚えた。まず走る姿がいまいちぎこちない。調子のいいヨタハチはもう少しスーッと少ないエネルギーで走ってます感があるのだが、それが無駄にエネルギー感がある。となると、調子は推して知るべしだ。路面が軽く凹凸のあるところを通ると、たいした速度ではないのにピッチングが収まるのが遅い。一方で、車内がやたら明るいなぁと思ったら、ナビと思われる画面がダッシュボードの真ん中に陣取っていた。

ナビとショックアブソーバーを天秤にかけると、車の安全を考えればナビにかけたお金くらいはショックアブソーバやそれを支持しているブッシュなどにかけた方がいいと筆者は思う。ナビがない不便もこの車の味だと思えば、道に迷ってもちょっとした冒険になる。ヨタハチは現代の車とは違って、引けるものはひいて成立させている車なのに余計なものを加えてダッシュボード回りをにぎやかにするのはどうもいやだ。そういう人こそ「ヨタハチは極限まで軽量化されていて、ボンネットやトランクはアルミでできていて…」なんて薀蓄を方々で言っているのものである。そう、重量増を招いているのはそのオーナー自身だったりする。

短い時間で遠目で見たのだったが参考になった。少し骨董の世界に通じるものがあると筆者は思っているのであるが、例え自ら大枚はたいて買ったものであろうと自分の車は自分だけのものというのではなく、ある期間所有権を得て持たせてもらっていると思った方がいいのではないだろうか。後年その車を手に入れた人から「何代前のオーナーの時にやられたんですよ」と言われないために、何よりそのオーナーの安全を守るために、目先の新奇さよりも基本を守るのを第一に考えてもらいたいものである。
2012/11/28