久しぶりに気になる!意外なところにいいヨタハチを発見

筆者のヨタハチ歴ももう間もなく17年目を迎える。一番最後の年式である44のヨタハチ自体も生産から42年を経過しているので仕方ないのであるが、不適切に直してしまって見てくればかりはきれいなヨタハチにははっきり言って興味がなくなった昨今、筆者の感性を震わせるいいヨタハチを意外なところで発見した。

東京のローカルテレビ局に東京MXというテレビ局がある。日曜日の夕方に円谷劇場と称してファイヤーマンやジャンボーグエースがやっていたり、他局でやっていた人気アニメを堂々ゴールデンタイムでやるという、ある意味ものすごくアバンギャルドなテレビ局だ。うっかりスペクトルマンをやる日が来るのではないかと期待はしているが、ヒーローが途中から目が全く見えなくなるような話はいかにMXでも無理だろう。そのMXの深夜、「ヒーリング&ニュースヘッドライン」という番組がある。番組といえば聞こえはいいが、環境映像をバックにその日のニュースをロールテロップで延々とダダ流しする時間だ。その映像の中に名車グラフィティというものがある。名の通り古い車が走る映像が流れるのだが、この中に43年の銀色のヨタハチが出てくる。ナンバーを見ても実物はみた記憶がない。「どうせどこぞの漢字一文字自動車で何百万も払ってフロントサスペンションのアッパーアームに頭に『4』って入っているようなボルトを使った車だろう」などと、車のアラを探しながら見ていたのだが、そのアラが見当たらないのだ。

何しろ夜中に見ているので何かの間違えだろうと思って、次はビデオに残して見てみることにした。何度か見てみたが、みれば見るほどいいところしか目につかなくなった。まず姿勢がいい。少しフロントが上がり目で路面の凹凸でできる揺れがなかなかたおやかだ。細部もいい。フェンダーミラーはオリジナル。わからないだろうと思ってパプリカのステーを使って作られた出来の悪いレプリカとは違う。エンジンもオリジナル。パブリカスーパーのエンジンを載せていても載せ替えなしのオリジナルと言って憚らない輩に爪の垢を煎じて飲ませてあげたいくらいだ。そういう人はオイルフィラーキャップを開けた時に指でも切ればいい。ただ、エンジンマウントがちぎれているらしく、アイドルでも相当揺れているのはご愛嬌だ。この頓着なさげなところが逆に高いオリジナリティを維持した、そんな感じだ。ちなみに同じ時間に別の車も出てくるのだが、こちらはその頓着のなさが裏目に出ている。

しかし、ヒーリング&ニュースヘッドラインって、古い車が走っている映像で癒されるような人が果たしてどのくらいいるのか疑問だ。

2011/5/26

他車では常識! リアリーフスプリング交換を予定

44ヨタハチが帰ってきたら真っ先にやりたいのが実はこれだ。単にリアのリーフスプリングがへたっているから交換したいのではなく、車高をトータルで見るとやはりこれが必要だという結論に達した。

昔の雑誌などを見ていると、特にヨタハチはヘッドライトが上を向いている感じがすることに気が付かないだろうか?ヨタハチと言わず、60年代の自動車に使われているタイヤはほぼ例外なくバイアスタイヤだ。このいつまでも転がっていくような転がり抵抗が少ないタイヤで制動するためにはフロントタイヤにグリップが必要だ。そのグリップ力を発生させるために車の姿勢変化を積極的に起こし、フロントタイヤにできる限りの荷重をかけてグリップ力を発生させる。そのために必要なのがフロントが上がり気味の姿勢だ。だから昔の車は程度の差はあるもののフロントが少し上向きになっているものだ。

ことヨタハチでいうともう一つ要因がある。ご存知の通りヨタハチは背の低い車だ。その低さでヘッドライトが車検に必要な要件を満たすとなると、当然上向きになる。いまでも、フェンダーアーチとフロントタイヤの間が少ないというヨタハチではライトの軸が低すぎて車検に通らない。通っているとしたら、陸事の現場でメカニックの人は苦労しているはずだ。

44ヨタハチが帰ってきたら、できればこのフロント上がりのプロポーションを再現したいのだ。しかし、今使用しているリアのリーフスプリングだと、もしかするとへたっていてナチュラルで車高が低くなっているかもしれない。その状態でフロントを上げたらどうだろう、海面から飛び立つ宇宙戦艦ヤマトのように今にも飛び立つかもしれない感じになるだろうと想像できる。いくら飛行機をモチーフにしているから飛びたいのかな?と思ってくれる人もそんなにいないと思う。やはりリアの車高も新車時に近い状態にしてなおかつフロントも必要なら上げる、このためにはリアリーフスプリングを交換することが必要なのだ。

しかし、ヨタハチに乗り始めてびっくりしたのが他のヨタハチオーナーがこのリアのリーフスプリングにあまり興味がないことだ。もっとも、車が軽いからヘタりずらいというのもあるが、少なくとも40年近く経過している車でリーフスプリングが少しもヘタっていないとは思えない。改めて見てもらえばわかるが、板バネ同士が重なっている部分を見ればくっきりと擦れた跡があると思う。この傷が更に深くなればそのに力が集中して…と考えればいい訳はない。同じトヨタ車でも、コロナやクラウンクラスになるとこの違いははっきりと現れるので、筆者の知り合いの1600GTオーナーはリアリーフスプリングの交換とブッシュの交換は、新たに1600GTを仕入れると必須の作業だった。まだパプリカのオーナーの方がリアのリーフスプリングには関心がある。セダン用のリーフスプリングをコンバーチブル用に交換してリアの車高を下げたり、同じ理由でバンのスプリングに入っているヘルパースプリングを抜いたりなどという作業は割とポピュラーである分、関心は高い。

そうは言っても部品なんか部品共販から出てこない今、そうおいそれとは換えられないのはわかる。だとすれば入手できる機会があったら多少高くて押さえておくべきだと思う。目につく部品には大枚をはたいても、地味だが有用なものにはお金を出さない最近ヨタハチに乗り始めたオーナーには、ものの本質が見えていない気がしてならない。これが筆者よりも若い方ならまだいいのだが、解脱の一つもしていて恥ずかしくない年頃の方がやっているのを見るにつけ一体今までの人生で何を学んできたのか聞いてみたい気がする。
2011/5/15