離別を決意…。新しいタイヤを発注

筆者のヨタハチライフを文字通り支えていたタイヤを遂に交換する決意をした。これであの古いトレッドパターンのRD-108とは恐らく今生の別れとなる。さようなら、僕のRD−108。

現在44ヨタハチにつけているタイヤは、結果的にエンジンオーバーホールにまでに至った本格的な修理を開始する前に買ったものなのでなんと10年も使用している。有害な紫外線量がこの20年間でほぼ10倍になっているといわれても日常の生活では意識することはない。しかしその影響は確実にあって、野外に置いてあるクルマのタイヤのもちが悪くなっているのだ。昔は6年くらいは大丈夫だったものが現在は3年もすれば白くカピカピになり、サイドウォールはひびひびになる。一方で筆者の44ヨタハチは修理をしている間ずっとガレージに入ったままだったし、タイヤを使うときといえばたまにガレージの前に出すために転がす程度だったのでまあ大丈夫だろうと思っていた。しかし、新品のタイヤがついているヨタハチに乗る機会に当って痛感した。…もう潮時だと。ステアリングが前より重たくなったので、今度の車検の時にフロントの車高を上げようと思っていたのだが、どうやらその原因の多くはタイヤの劣化のようだ。劣化とはいうものの、残り溝はあるし十分柔らかいと思うのだがやっぱり物理には適わない。蛙を水の入ったなべに入れて徐々に熱していくと、蛙は自分の周りの水が熱くなっているのに気がつかず、結果逃げ出すことなくなべの中で煮えてしまうという。ずっと同じタイヤで何年も乗っていると、その劣化にオーナー自身が一番気がつかないもののようだ。

さて、そこでタイヤ屋さんに行った。70扁平、13インチのタイヤはおとといきやがれってなものなので、必要なのは今のタイヤと同じサイズの155/80/12。145/80/12でも可として近所のタイヤ館に行ったのだが、補給状況はお寒い限りだった。ブリヂストンというと、このサイズで筆頭に上げられるのがスニーカーといわれるベーシックなタイヤだ。確かにいつでもすぐに手に入るし、価格も安い。だがそこはそれ、トレッドパターンが古いからという理由でRD-108をつけている筆者のこと、タイヤの外見にはことの他うるさい。そんな筆者が、サイドウォールに『sneaker』とでかいロゴが入っているタイヤをよしとする訳がない。タイヤを探す際に、端からスニーカーはナシで…ということになる。

では、何があるのよ?という訳だが、新車用のタイヤで同じサイズのものを探すことになる。タイヤ屋さんは普通の客には絶対に勧めない品物だ。多分、販売価格の割りに利幅が少ないからなのでは?と思っている。実はRD-108も当時新車用のタイヤとして補給されていたタイヤだったのだ。候補に上げたタイヤはもちろんRD-108、そして古いトレッドパターンでという理由でRD-213。最後はでかいロゴが入っていないだけマシ、という理由でB391というタイヤだ。結果からいうと、現在補給されているものはB391しかないとのこと。それも生産は既にしていないので、倉庫にある4本のみとのことだ。でかいロゴよりはマシなので、迷わずB391を発注することとなった。

このB391、スニーカーの同じサイズと比べればお値段ははるかに高いが、タイヤとしての性能はそれなりに高い。高速走行時、80キロから上のロードノイズのレベルは圧倒的に低い。特に雨天での性能はスニーカーとは比べ物にはならない。B-styleとスニーカーの間に位置して、どちらかといえばB-styleに近い性能がある。60年代の国産旧車には過ぎた品物だ。

ただし、現在は板金作業中につきすぐに交換するというものではない。品物は確保するが、実際に交換するのは10月の車検前になるだろう。今しばらくはRD-108をつけた姿を見ていられる。
08/31/2010

やっぱり違うねぇ…。ワンオーナー車に触れて考える

今月の初めに我が44ヨタハチは板金作業のため出たままになっている。その代わりと言ってはなんだが、現在ヨタハチを1台預かっている。筆者が勧めたのかそそのかしたのか、いずれにしても筆者の旧車友達でもとよりヨタハチオーナーの方が買った横浜5シングルナンバーのついた昭和42年式のヨタハチだ。

初めて写真で見たときからその違いに気がついた。失われがちなところがことごとくオリジナルのままだったのだ。何より立ち姿がいい。変に手の入ったクルマはこれがそもそもいけない。この違いがわかるには何しろ沢山ヨタハチをみることが大事だが、いいものも悪いものもその理由を言葉に出してみることが大切だ。シートはオリジナルで赤。運転席にはシートベルトが残っている。ワイパーアームは電解研磨で根本にはNDマークつき。灰皿は変形もなく、後のカバーもオリジナル。…ここまで言えばわかってもらえると思う。前のオーナーさんは実際に相当大事にされていたとのことだ。

一方でワンオーナー車にありがちなあまり頓着のないところも散見されたのだが、そこはベースがいいのでリカバーすると見違えるようによくなる。ちまたに流通しているヨタハチの多くは、何事かやり倒されてもとに戻そうにもどうにもならないという状態だ。その点このクルマは手が入っていない分、少しの労力で元に戻る。メインの用事はヒーターが使えるようにするということなのだが、これとてフューエルノズルが詰まっていただけのことだった。永らく動いていなかったようなので、他の場所も点検と清掃をしたが結果的にはノズルの詰まりだけだった。つけてみたら即座に熱風が吹き出した。この暑いのに車内は正気の沙汰とは思えない状態に一時なった。

どうしても自分の44ヨタハチと比べながら作業をしてしまうのだが、やっぱり44ヨタハチは多くの人の手を経てきた弊害がそこかしこにある。部品を外してみてナットひとつ、ボルト一本にしてもやっぱり知らない人がいじったのはダメだよな、とがっかりする部分は44ヨタハチの方が多い。それでも、かなりリカバーできてはいるのだが、同じレベルにするのに、この42年式だったらそう造作もないことだろう。
08/23/2010

ワッシャ、入っていますか?エンジンの解体で思ったこと

44ヨタハチの板金は手がつかないままお盆に入ってしまったので、作業それ自体は来週からの話となった。その間、何もやることがないのかといえばさにあらず。むしろ忙しいくらいだ。現在やっている作業は訳あって詳らかにできないが、そのうちの1つにエンジンのオーバーホール、というかエンジンの組み立てをすることになり、来るべき運搬に備えて、傷つきやすい部品のストリップダウンをしている。これがなかなか一筋縄ではいかず、永年置いてあったエンジンのパーツを取外すのでボルトが回らないだの何が足らないだの、とやっている。

その中に、オイルフィルターケースがあった。筆者にとってはなじみのないパーシャルフロー用のものである。中の構造は変わらないのでパーツの有無くらいはわかるのだが、恐れていたことが起きた。オイルフィルター底部にあるはずのワッシャがなかった。たかがワッシャが…と思った方は自分の不明を一度悔い改めたほうがいい。このワッシャは侮れない。このワッシャのおかげでフィルター外側の汚れているエンジンオイルとフィルターを通ったエンジンオイルは隔絶されているからだ。仮になかったら、ワッシャとオイルフィルターエレメントの間に入るゴムはオイルフィルターを組み立てたときにめくれ上がり、エンジンオイルはオイルフィルターを通らず底から入ってきてしまうからだ。オイルは抵抗のないところを狙って通ろうとするので、オイルフイルターはただ、エンジンオイルの中で漂っているだけのものとなってしまう。

ところがこれ、ヨタハチ、パブリカのエンジンには珍しいことではない。筆者の経験からいうと10基あれば7基はまず間違えなくワッシャがない。オイルフィルターの上下が間違っている、なんて物も1基くらいはある。最近、オイルは何を使っているのか聞かれることが何度かあったのだが、オイル以前に基礎的なことから見直した方がいいと思うことがしばしばだ。自動車のメンテナンスはオイル管理に始まりオイル管理に終るものなのだが、基本がなっていないと終るものも終らない。消火器よりも、オイルの銘柄を頻繁に変えることよりも、ましてやヨタハチにクーラーをつけるなんてことよりもオイルフィルターケースの中にワッシャが入っていることを確認できていることが重要だと思う。
08/14/2010

神は細部に…。スペシャルパーツ入手

またしてもやってくれた。浜松の皆さんの努力の結果、かゆいところに手が届くスペシャルパーツができあがった。名前はインストルメントパネルサイドモールディング。一回聞いても、いやもしかしたら現物を見てもこのパーツがどこに使われているパーツなのか、わからない人の方が多いかもしれない。通常、運転席に座っているとメーターパネルの右端にあるメッキのモールである。ただし、ドアを開けるとこのモールが嫌でも目に入る。見た感じは今月の一枚を参照して欲しい。

画像を見ればわかる通り、今月は少し画像に手を加えてある。画像そのものの持つ力を重視する筆者の撮影ポリシーに反するのであるが、こうでもしないとこの感動が伝わらないものと考えた。撮影前に筆者の44ヨタハチに試しにつけてみたのだが、あまりに収まりが良くあたかも昔からそこにあったかのような顔をしてスペシャルパーツが存在したのでかえってわからないと判断した。それくらいいい品物である。

純正のパーツは樹脂に蒸着メッキと思われるメッキを施したものなのだが、この部品の樹脂はなぜか品質が良くない。わかりやすいところで言えば、東京タワーのお土産にある東京タワーのプラモデルに使われている樹脂に似ている。固くて加工がしずらく、かといって丈夫なのかといわれればそうではない。壊れるときは一瞬にして壊れてしまう。多分、昭和30年代には数多くあったプラスチックそのものである。そこに施されるメッキとてそう丈夫ではない。東京タワーのプラモデルは付属のセメダインで貼り付けようとするとメッキが溶けるようにはがれるというなんとも致命的な欠陥がある。流石にそれほどではないにしても、このパーツのメッキもはがれやすい。今回のスペシャルパーツはアルミで削りだした後、クロームメッキを施したもの。比べてみると品質はゆうに純正を凌駕している。

1つだけ、筆者から提言があるとすればこのモールと同じクオリティで同じくメーターパネルのセンターに配されているモールも作っていただいて、セットで販売していただければ更にいいのではないかと思う。このモールがない、いや、オーナーがないことに気がついていないクルマが多くある中においてはそちらの方が多く売れるのではないかと思う。今後、是非期待したいところだ。

筆者も今年で44ヨタハチを所有して16年目。その前のスバル360から数えると20年も旧車といわれるものに乗ってきた。しかし最近ある特異な変化に戸惑っている。最近ヨタハチを入手した方、特に筆者よりも年配の方に多いのだが、部品の入手の仕方にセンスを感じない。品格といってもいいが、それに欠ける。年をとってから女遊びを覚えてしまった感じで見ているこちらが恥ずかしくなってしまう。粋でないのだ。新品未使用のフレーズに弱く、表面のきれいさに惑わされ品物が潜在的に持つクオリティを見抜けていない。目に付く部品には大枚をはたくわりには乗っているヨタハチを見ると詰めが甘い。なんだか締まりのない印象を与える感じだ。今回のパーツは、おそらくそのような方の目には適わない品物に違いない。神は細部に宿るものなのだ。
08/01/2010