日本の行く末を憂う…エンジンオーバーホール合宿の成果 最終回

今回のエンジンオーバーホール合宿のメインの目的はエンジンパーツの機械加工である。具体的にはクランクシャフトのクランクピンの研磨、シリンダーをオーバーサイズピストンに合わせてボーリング&ホーニング、コンロッドの小端部ブッシュの打ち換えである。加工といっても自分でやる訳ではない。内燃機屋さんに持っていって加工をお願いする。

詳しくは申し上げられないが、今回お世話になる内燃機屋さんは自動車のエンジンはもとよりバスのエンジンそして船舶のエンジンなども手がける工場である。仕事は確かで、いわゆるチューニングショップや競技用車両をやっているガレージなども実はここに加工を頼んでいるという。一見さんはお断り。そこにいる人も機械もかなり使い込まれた感じである。中はお世辞にもキレイとは言えない雑然とした感じであったが、筆者は実に好感を持った。こういうところでは細々と注文を並べ立てない方がいい。預けた部品からベストと思われる方法を勝手に選択しているだろう。

実は高い技術力を誇るその内燃機屋さんも後継者難には苦労をしているようだ。技術の蓄積があって現在の日本はあるように言われる。確かにあのおじさんたちには蓄積されているが後身への継承はうまくいっていない。あそこにいた使い込まれた感じのおじさんたちが姿を消した後、繰り返しオーバーホールをされてそれでもなお元気に回り続けていたバスのエンジンはそれでも回っているのだろうか。洋上でパタッと止まってしまう船が出なければいいがと思う。
12/19/2007

思いがけず全容解明?エンジンオーバーホール合宿の成果 その3

別ページをみるとわかるが、44ヨタハチはエンジンとリアアクスルの組み合わせで大きく分けて3種類になるとなっている。この組み合わせの1つ、リアアクスルの部品の構成がほぼ解明された。

結果から言うと、ホイールベアリングはミニエースなどの商用車系に使われているものではなく、ヨタハチに従来使われているものであることがわかった。じゃあ何が違うのかというと、ホイールベアリングを押えているリテーナー。そしてオイルシール。それからドライブシャフトである。リアアクスルの部品ではないが、デフのサイドピニオンギアも違う。

リテーナーは同時期のミニエースと同じもの。これはヨタハチのものとは全く形が違う。オイルシールは品番上は全く違うものだが流用は可能なようだ。厄介なのがドライブシャフトとデフのサイドピニオンギアだ。ドライブシャフトがデフのサイドピニオンに入るスプラインの径が他の年式とは違い太くなっている。同時期のミニエースに使用されているものと同じだ。

そしてここが実は大事なのだが、この仕様になっているのは昭和44年の何月生産のものから、とか車体番号何番以降からというように仕様が変更された時期が明確になっていないのである。いいかえれば、従来の仕様とミニエースの部品が入っている車とか混在している。

以前からリアアクスルのホイールベアリングを修理した44年式のオーナー複数から事情を聞いていた。この合宿で見た44ヨタハチのリアアクスルは後者の仕様になっていたのだが、しかし車体番号は筆者のものよりも若い番号の車両だったために導きだされた結果だ。中には左右で仕様が違うものもある。大きい傾向としては筆者が書いた通りだが、個体差がかなりあり正直開けてみるまではわからない。

ホイールベアリング交換に備えて、44ヨタハチオーナーが揃えるべき部品の数自体はこの調査の結果少なくなったが、両方の仕様を想定して部品集めをする必要があることには変わりがない。
12/14/2007

オリジナルである決め手は?エンジンオーバーホール合宿の成果 その2

そうはいっても44年式に載せられているフルフローエンジンでオリジナルのものを新車当時から見ている人は誰もいない。下手をすると筆者の思い込みか希望的観測、というか妄信であるかもしれない。状況証拠はあるのだが、自分の車のエンジンがオリジナルであるという物証が必要なのである。それが出てきたからこそ、44フルフローオリジナルエンジンはこれだという確証を得るに至った。

ミニエースなりパブリカのエンジンをベースに2U仕様に換えてあるエンジンはいくつも見てきている。カムシャフトとシリンダーを変更しているだけのものから気の利いているものだってベンチレーションチューブを交換している止まりである。数ある2U専用パーツの中でも、一番見落としがちなパーツがある。それがバルブコッターだ。

バルブコッター。バルブのお尻についている楔型をした部品だ。整備書にはわざわざ書いてはいないが、パーツリストをみるとこれが2U専用部品となっている。じゃあ何がパブリカのエンジンと違うのか。比べてみるとわかるが、バルブを止めるところから上方向に長さが長くなっているのである。これの意味するところは何だろう?

今のところのバルブのリフト量を稼ぐための一番簡単で安価な方法なのではないだろうかと仮説を立てている。というのも、このバルブコッターの上をロッカーアームがきて、バルブを動かすのであるが、お尻が長い分パブリカのエンジンよりもバルブの動き代が大きいことになるのでないだろうか。

パーツリストをくまなく見ていないと見落としてしまいそうなこの部品、入っていれば二通りの考え方ができる。オリジナルのエンジンであることとオリジナルにより忠実に作られたエンジンであるということ、またそれを作った人に相当の見識があったということである。ここで、状況証拠が生きてくる。前後の車両に搭載されているエンジンのエンジンナンバーから考えても、オリジナルであるという結論に至った。

このバルブコッターの写真をパブリカ用のものとを並べて画像に撮った時に、44ヨタハチ研究に一区切りついた感じがした。
12/12/2007

全容解明!エンジンオーバーホール合宿の成果 その1

今回のエンジンオーバーホール合宿は、前回予定していたことを持ち越したものの消化が別の目的だった。その1つ、44年式オリジナルエンジンのパーツの構成を明らかにして画像に収めることを終えてきた。

44年式に搭載されているエンジンに関しては昔からいろいろなことが言われている。UP30のエンジンがそのまま載っているとか、いやミニエースのエンジンがそのままだとか、フルフローのエンジンをベースにどこかで誰かが改造したとか、そんなものあるわけがない、など様々である。いずれもあまり根拠のない理由からそう結論付けられていたが、これでその議論にも有る程度けりがつけられるだろう。今回のようにパーツの1つ1つを精査できる機会は恐らくこれが最初で最後だ。逆にいうとミニエースやUP30のエンジンからあれだけ作りこんであるエンジンを作った人が過去のオーナーにいるとすれば、その人の知識には敬服する。

結果から言えば、44ヨタハチに載っているフルフローのエンジンに、2U専用パーツが使われている率は約90パーセント。専用パーツといわれている中でパブリカと同じパーツだったのは唯一シリンダーのみだった。この違いは大きい。なんていったって圧縮比をつかさどるシリンダーの長さが長いものが入っているのだから。これが原因でパブリカのエンジンでもない、ミニエースのエンジンでもない、ヨタハチのパーシャルフローのエンジンともフィーリングが違うエンジンが出来上がった訳だ。

近く別ページにて、今回新たに撮影した画像を交えた上で全容を明らかにする予定である。
12/07/2007

エンジン完成に大きく前進!第2回エンジンオーバーホール合宿終了

先月の29日から今月の2日まで、第2回になるエンジンオーバーホール合宿を行った。今回の合宿はエンジンパーツの加工とその促進がメインであるが、結局半分はまたしてもパーツ洗浄を行ってしまった。どうも、パーツがキレイになると自分の心が洗われるような気がして実に清々しい。

エンジンパーツの加工はクランクシャフトのピン部の研磨、コンロッドの小端部ブッシュの交換、それと当初予定に無かったオーバーサイズピストンを入れるためのボーリングとホーニングである。この加工が終れば、クランクケースを中心としたエンジンのセンター部分の組み立てができることになる。

で、結局パーツ洗浄をしてしまった訳だが、今回は徹底的にベンチレーションチューブを洗浄した。ヨタハチのものに限らず、ベンチレーションチューブにはものすごい量のスラッジが溜まっていると思った方がいい。私のエンジンは大丈夫…なんて思っているそんな人のエンジンが一番怪しい。

前回きちんと洗ったけど、どんなものかなぁなどと軽い気持ちで、ベンチレーションチューブに洗浄液を注いでみた。オイルリターンのパイプから最初は勢い良く出ていたのだが、途中から洗浄液が止まってしまった。なんで?キレイにしたはずじゃないの?まさかそんな、と疑いながら先の細いドライバーで中を下からつついてみたら、再び勢い良く洗浄液が飛び出す。ふと洗浄器のシンクを見ると、わりと大きいスラッジの塊が一面に広がっていた。…なんだこれは。この中はスラッジの塊か?そう思うや、洗浄液を注いでパイプが詰り、それをドライバーでつついて再び洗浄液が出て…を数限りなく繰り返した。クランクケースを逆さにしてオイルリターンから洗浄液を注ぐとまたスラッジが飛び出す。夜はもちろんベンチレーションチューブを洗浄液の中に漬けて、そして次の日また洗浄液を注いで…というのを3泊4日、帰る寸前までやった。おかげでベンチレーションチューブは中も含めて相当キレイになった。というか、前回のパーツ洗浄で大丈夫とした自分が恥ずかしくなった。ベンチレーションチューブを外して2ストロークエンジンのチャンバーよろしく焼いた人もいるようだが、気持ちはわかる。再び取り付けるときのことを考えると、筆者は絶対にそんなことはしないが。それにあのスラッジを見ていると、コンロなどの赤い炎で焼いても恐らくキレイにはならないだろう。

とはいっても今回は時間に若干余裕があり、他にもいくつかのアクティビティを持つことが出来て充実した合宿だった。最後に、今回も洗浄器や場所を提供してくれた仲間にはお礼を言いたい。
12/06/2007