。o◯。○゜。o◯。○゜o◯。夢物語〜番外編〜o◯。○゜。o◯。○゜o◯
出会った頃、彼女はいつも、泣き顔をしていたような気がする
目の離せない妹のように
すねたり、甘えたり、傷ついて
何度も僕のコートを涙で濡らした
だけどいつからだろう
彼女が同じ目線で、僕を見つめるようになったのは
時には心配そうに
時には、優しく微笑んで
それはある日の午後、海はひょんな事がキッカケで懐かしい人に再会した
かって、海がまだ天使だった頃の頼れるパートナーに
海:「亮ちゃん!!本当に亮ちゃんなんだね!久しぶり!会いたかったよ〜」
亮:「うわっ!!よせ、バカ。気色悪い。俺は男に抱きつかれるシュミはねーんだよ!!」
この口の悪さ。やっぱり亮ちゃんだ
何年かぶりで会うけどちっとも変わってない
そう、亮ちゃんと会うのは八年ぶり
海が天使から人間に戻った、八年前のクリスマス以来
僕の名前は、海 25歳
いま駆け出しの童話作家
人間界で一度死んで、天国で天使をやっていたというのに、ドジやらかしてクビに
なって、もう一度人間として生きることになったんだ。
普通の人間の目には、天使の姿は映らない
海も人間に戻って以来、亮ちゃんと会うことは出来なかったんだけど、
でも、今こうして再会しているいうのは・・・
亮:「このドジ!!ババァ助けるために自分が駅の階段転げ落ちてどーすんだよ!?
ショックで幽体離脱しただけですんだからいーよーなモンのな。ヘタすりゃまたおっ死ぬトコだぞ!!」
懐かしい。亮ちゃんの怒鳴り声
天使時代もよく怒鳴られた
こうして、亮ちゃんと会っているのは、さっき駅の階段でおばあさんが足を滑らせて転んで、
とっさに手を掴んで引き戻したまではよかったんだけど、はずみで海の方が落ちちゃって・・・
海:「いやー、気が付いたら自分の身体が救急車で運ばれるトコが他人事に見えるんだもん。
すごいあせったよ。でも、救急車って生まれてはじめて乗ったな」
亮:「おまえな。全然あせってるように見えねーんだよ。」
いい忘れていたけど、今、海たちがいるのは、海が運ばれた病院の屋上
階段から落ちて頭を打った海は、意識を失って病院のベッドの上
はずみで魂だけが身体から飛び出しちゃったのには驚いたけど、人間は頭を打ったりすると時々
こういうことになるケースがあるって、天使時代の研修で習った事がある。
亮:「意識が戻りゃー自動的に魂も肉体に戻れるけどな。こんな状態でフラフラしてるとこ、悪い霊なんかに
とっつかまったら死ぬ羽目になる事もあるって知ってんだろう?気をつけろよ、まったく!」
そういいながら、亮ちゃんは危なっかしい海をほおっておけなくて、意識が戻るまで側で守ってくれる
つもりなんだ、口ではきつい事を言う亮ちゃんは、本当は凄く面倒見がいい
本当は優しい天使だって海は知っている。
亮:「何、ニヤニヤしてんだよ?海。おまえ、少しは自分のドジを反省してんのか?25にもなって、
見かけも中身もほとんど進歩してねーな。お前」
海:「反省してるよ。でも・・・」
亮:「うん?」
海:「こんな事になったおかげで、亮ちゃんに会えて嬉しいな・・・って」
亮:「海。お前は・・・・・全然反省しておらん!!」
そう言って亮は海を殴った
それから、病院の屋上で海は亮からたっぷりとお説教をくらった
「ドジ」なだの「マヌケ」だの「トロイ」だの
「人を助ける前にちゃんと自分の面倒見やがれ、バカヤロー!!」だの
亮:「まっ、たいした怪我もなくて運がよかったぜ。これに懲りたらこれからはもっと注意しろよ。
人間の身体ってのは案外壊れやすいんだから」
海:「うん。わかったよ、亮ちゃん」
せっかく神様が特例で与えてくれた人間の命、粗末にしたらバチが当たるもんね。それに・・・
海:「ホント言うと、今日は特別な日だったんだ。こんな日に死んだりしたら、未練が残って絶対に天国に」
行けなかったよ」
亮:「特別な日?」
海:「あのさー、亮ちゃん」
亮:「うん?」
海:「今日プロポーズするつもりだったんだ」
亮:「えっ?誰に!?」
海:「花林さん・・・に」
亮:「おー!!とうとうそこまでこぎつけたか!!お前にしちゃ進歩だぜ!!」
花林さんは、海が天使だった頃に出会った3つ下の女の子なんだ
3つ年下の女の子
天使の頃は妹のような存在だった彼女も、今は22歳の大人の女性
亮:「へぇ〜。しかしお前があのチビとね。まっ、そんな事になるんじゃないかとは思ってたけど。
お前があのワガママなチビとね」
海:「花林さんはワガママじゃないよ」
亮:「ハイハイ、わかってるよ。でも・・・お前、本当にいいのか?玲奈ちゃんのことは」」
海:「亮ちゃん」
玲奈さん
それは天使の頃、海が生まれて初めて、真剣に愛した女性の名前
海:「手紙がきたんだ。玲奈さんから」
亮:「手紙?」
海:「幸せそうな家族の写真。花林さんと僕に、幸せに・・・って書いてくれてた」
亮:「玲奈ちゃんが?」
海:「ん・・・・・」
彼女と海が恋をしたのは、もう10何年も前の事だ
だけどその頃の海は“天使”で、彼女は“人間”で
海たちは別れを選び、海との記憶を失くした彼女は、ずっと前に結婚していて幸せになっていた
海:「玲奈さん。たぶん、全部思い出したんだと思う。昔の事」
亮:「思い出した?」
海:「きっとそれで、あの手紙を」
亮:「お前らに、幸せになれってか?」
海:「うん。そう言ってくれたんだよ」
風にあおられた、桜の吹雪が舞い上がる
青空から散り落ちてくる、雪のような白い花びら
いつか海は、彼女の為に春の雪を降らせたことがある
彼女の幸せを願う“天使の涙”(エンジェルティアー)を
好きだったから
本当に大切な人だったから
この同じ空の下で、彼女も今、生きている
海はこの10数年前の別れを、けして後悔していない
切ない涙も、胸の痛みも、全て抱えて生きていくことが“本当の幸せ”だと思うから
海:「ねぇ、亮ちゃん。生きてるっていいね」
亮:「ああ?そう思ってんなら、もっと気をつけて命を大事にしろよ あのチビにあまり心配
かけないようにさ」
海:「あっ・・・」
亮の目線の先には、タクシーから降り立った花林さんの姿があった
医者:「心配ありませんよ。軽い脳震盪ですから。もうじき目を覚ましますよ」
花林:「ありがとうございました」
花林はほっとした顔で、病室を出て行く看護婦に頭を下げる
花林はベッドに脆いて眠ったままの海の手を握った
花林の不安そうな顔
海は反省していた
よりによってプロポーズしようって大事な日に、彼女にこんな心配かけて
亮ちゃんに怒鳴られても仕方ない
亮:「反省したか?」
海:「うん」
亮:「泣かすんじゃねーぞ。あのチビを」
海:「・・・うん」
花林はじっと海を見守っている
泣き出しそうな顔をして
海を何かから守るように
いつからだろう?
彼女が強くなったのは
出会った頃、いつも海の胸で泣いていた女の子は、いつのまにか海の隣りを歩いていた
気が付くと彼女は海を見つめていた
亮:「そろそろ帰る時間だぜ。海。あいつのところへさ」
海:「亮ちゃん」
亮の表情は少し寂しそうだった
亮ちゃん、本当は寂しがり屋だと思うんだ。気が付いてないとは思うけど
亮ちゃんには、今、パートナーがいるんだろうか?
海の側に花林さんがいてくれるように、亮ちゃんにも、亮ちゃんを支えてくれる誰かが現れるといい
そして、いつかは・・・・・・
海:「亮ちゃん、きっとまた、会おうね」
海:「バカ言え。もう二度と幽体離脱なんかするなよ!!次はほっとくぞ。俺は」
海:「そうじゃなくて 亮ちゃんがいつか、人間に生まれ変わった時にだよ」
亮:「人間に?」
海:「生まれ変わるだろう?いつかは」
天使は、充分に天国でその役目を果たしたら、もう一度、人間に生まれ変われる資格をもらえる
自分さえ望めば
亮:「俺はいいよ。気ままな天使稼業が性にあってら。今更赤ん坊からやり直すなんざかったるくて」
海:「そんな事ないよ。待ってるよ、亮ちゃん」
亮:「うるせーな。人の事を心配するより、さっさと自分で幸せになりな」
海:「その言葉、そっくり亮ちゃんに返すよ」
亮:「海・・・」
海は亮のことが心配だった
亮はいつも海に「お人好し」って言ってたけど、本当は海より亮の方が「お人好し」で、「不器用」だと思う
海はそんな亮が好きだから、絶対に幸せになって欲しい
海:「今までありがとう。亮ちゃん」
亮:「何がだよ」
海:「何でも。色々とありがとう」
亮:「・・・・・・・・・」
亮は海のパートナーで頼れるお兄さん的な存在で、そして“親友”だった
海:「きっとまた会えるよね」
亮:「・・・知らねーよ」
海:「会えるよ。だって僕たち赤い糸で結ばれてるんだもん」
亮:「バカッ!!気色悪いこと言うな!! 元気でな」
それが海に向けられた、亮の別れの言葉だった
花林:「海くん!!海くん!?」
海:「花林さん・・・?」
数時間ぶりに自分の身体を、ベッドの上に起こす
花林はまだ海の手を握ったままだった
その彼女の目には大粒の涙が溢れ出していた
海:「わっ・・・、花林さん?」
花林:「もう、心配したんだからね!海くん。このまま目を覚まさなかったらどうしようって・・・」
海:「ごめん。花林さん。本当に・・・ごめん」
泣きじゃくる彼女をなだめるのは、久しぶりのような気がする
何だか懐かしいような・・・おかしな気分
この際だから思い切って、今。アレを渡そう
海:「花林さん。そのコートとってくれる?」
花林:「えっ・・・?」
海は花林からコートを受け取って、片っぽのポケットの中を探った
中には、リボンをかけた小さな箱
駅の階段から落ちる前に買っておいたモノ
花林:「海くん、これ・・・?」
海:「開けてみて、花林さん」
花林:「海くん・・・?」
海:「それ、左手の薬指につけてくれるかな?花林さん」
花林:「うん」
言葉の意味を察した彼女が、一つ大きく頷いた
海:「ねぇ、花林さん。さっき亮ちゃんに会ったよ」
花林:「そう。相変わらず口が悪かった?ドジ!!・・・とかいって叱られたでしょう?」
海:「うん」
顔を見合わせて笑いあう
ごく自然に
彼女の心は、海の心に寄り添っている
出会ってからの8年間そして、これからも
ひたむきな目をして、海に追いついてきた彼女と、あたたかな愛を育てていこう
海:「花林さん。そのうち亮ちゃんも、人間になって生まれ変わるかもしれないよ」
花林:「えー?赤ちゃんの亮くんなんて想像できない」
海:「もしかしたら僕たちの赤ちゃんに生まれ変わるかもしれないね。それとも、そのまた赤ちゃんかも」
花林:「そうなったら、私たち亮くんのおばあちゃんだよ!!」
海は亮にいいかけるように、心の中で思っていた
亮ちゃん、生きてるってステキなことだよ
亮ちゃんも早く、生まれ変わっておいでよ
僕たち二人で待ってるから
花林:「海くん?」
海:「花林さん」
海は、いつも自分を支えていてくれた、その瞳に向かって
ゆっくりと、微笑み返した
礼央さんから翼企画に天使のお話しの番外編頂きましたv
かなり白梅でもシリーズ化してますが・・・。
打つのは大変ですが終わった後の充実感と言ったら・・・。
実はもう一作品あるのですが、間に合わなかったので次回にでもお楽しみくださいませ
亮くんに恋する新米天使が主役のお話ですv
かなりいいですよ〜〜〜♪
亮くんも好きな私にとっては幸せです(笑)
にしても海くん・・・あと2、3回亮くんに会いそうだね・・・。
また誰か助けて・・・ね(笑)
もう死ぬんじゃないよ、本当。。。
礼央さんありがとうございましたv