迷子の白鳥

まだ 成長しきれない羽根をはばたかせ 白鳥が一羽 南へ向かって飛んでゆきます。

白鳥の名前は スータン。

スータンは他の兄弟たちより 少し遅れて孵化しました。

だから、他の兄弟たちは もうとっくに親離れをしてしまったのに、

スータンには まだお母さんが必要でした。

でも、スータンのママはもういません。天に召されてしまったのです。

スータンは 生きる術もしらないまま 一人ぼっちで 南をめざすしかないのです。

「せめて スータンにもっと強い羽根があれば 私がいなくても飛んで行けるのに。」

ママは 遠い空の上で そう思ってました。

そんな時、神様が空の動物達に言いました。

「この荷物を 天の川の向こうに届けてくれたら なんでも願いを叶えてやろう。」

動物達は 一瞬 どよめきました。

でも誰も その荷物を運ぼうとする者はいません。

なぜなら その荷物はとても重く 天の川はとても広い川です。

誰も運べそうにありません。

「私に 運ばせてください!」

そう言ったのは スータンのママでした。

神様は ママにはとても運べそうにないので 少し困った顔をしておっしゃいました。

「もし 天の川に吸い込まれたら、魂までのみこまれてしまうんだぞ。」

ママは 神様の言葉をさえぎるように、

「もし 届けることが出来たら スータンに強い羽根を‥‥」

そう、言い残し 荷物を背負って飛び立ちました。

その頃、

スータンは 空と海の間を一人ぼっちでさまよっていました。

そして ママをちょっぴり恨んでいました。

自分を残して どこかへ行ってしまった ママ。

でも、日はかげり 一日が終わろうとする時、

やっぱり 一人は寂しくて ママが恋しくなるのです。

「ママ、ママ、いったいどこへ行ってしまったの?」

心の中で 同じ言葉が 何度も何度も繰り返されます。

ママは 天の川の上を飛び続けていました。

重い荷物は 羽根に食い込み ママの羽ばたきを邪魔します。

でも もうあと少しです。ようやく 天の川の向こう岸が見えてきました。その時、

バキッ! 鈍い音がしたかと思うと、荷物はママの羽根をひきちぎり

羽根もろとも 天の川へと消えてゆきました。

そして、

その後を追うように ママもまた天の川の深い深い流れへと消えていったのです。

ママの血が 細い糸のように浮かんで消えました。

後には 何もなく、いつものように川は流れてゆくだけです。

スータンの力も もう尽きようとしていました。

まわりはもう真っ暗で 星が瞬き始めました。

目からは涙があふれだし どの方向へ行っていいのかすらわかりません。

ポタリ、ポタリ、涙が海の中へと消えてゆきます。

「ママ、ママ、ママがいてくれたら‥‥」

スータンは心の中で、何度も何度もつぶやきました。

その時です

「スータンあと少し、あと少しよ!頑張って!」

「ママだ!!」

スータンは驚いて 声の方へ振り向きました。

振り向いたスータンの目に映ったのは‥‥‥

天の川に架かる大きな星座 白鳥座、

それは 紛れもなくスータンのママでした。

(おわり)

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BGM:サンサーンス作曲「白鳥」
MIDI作者:Windy
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