Grace kelly

裏窓−Rear Window−

片足を怪我して 動けなくなったカメラマン(ジェームズ・スチュワート)が、自分の部屋から隣のビルの住人を覗き見することから始まるサスペンス。
監督はサスペンスの神様と言われたヒッチコック。
動けない好奇心の強いカメラマンが向かいの部屋で起こっていることの真相をつかもうとジタバタするのがなんとも滑稽。
そういうところを演出しているヒッチコックは流石。
でも 昔の映画だからでしょうか?それともヒッチコックが天候に左右される屋外ロケを嫌がったせいでしょうか?今の映画に比べるとセットが今一つの感じがします。
そこさえ目をつぶれば 今の映画にはない演出の面白さ、観る人の視点に立ってのカメラワーク。
ヒッチコックの映画にはサスペンスの原点があると思うのです。

このカメラマンの恋人役がグレース・ケリー。
ファッションモデルの役で動けない恋人のためにプチ冒険をします。
ヒッチコックはずいぶん気に入ってたようで 全部で3本の映画に出演させ、グレースがモナコ大公夫人になってからも出演依頼をしたとか?
確かにきれいですものね。クラッとくるのもわかるような気がします。
でも 今回、グレースの写真をたくさん見続けて気がついたことがあります。
それは、表情が乏しいということ。
どれもこれもきれいなんですが、まるで化粧品メーカーのCM写真のようで、女優さんの喜怒哀楽に富んだ豊かな表情の写真がほとんどありません。
よくよく考えれば彼女の生き方もそんな感じに思えてくるのです。
女優という職業も結婚であっさり捨ててしまえるものでしかなかったし、結婚だって自分で苦労して手に入れたものではないでしょうし。
最後に自動車事故で亡くなり、グレース伝説をよりドラマチックなものにしたけど、それって自分で望んでしたことではないですよね。
自分の美しさを知っていて それを最大限に生かした人だと思うけど、人間的な魅力がどうしても漂ってこないんです。
まだ生きていた頃、花をとても好きだと聞いたことがあるので きれいなものが好きな人だったのかもしれません。
もう少し長生きしてもらって 花を愛する表情のグレースも見てみたかったです。


監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ジェームズ・スチュアート グレイス・ケリー
(1954年 アメリカ)

(余談)描くのがとても難しかったです。
個性的なわけでもなく、特徴があるわけでもなく、悲しそうでもなく、楽しそうでもなく…。
あえて言うなら「ちょっと冷たそう」な感じ。
でもそれが似合いすぎるほど似合っていて、不思議な感覚になりました。

(絵と文 2010年8月)

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