誇り高き イ族
国道沿いに観る美の回廊


   
 2009年8月初旬 取材  

煙草を燻らす精悍なイ族の女

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  面長で美人顔、目が鋭いイ族の人はカメラを向けると表情がこわばる。何か理由があるのだろうか。
一般的にイ族は気高く、取り付きがたく、他の少数民族からの評価は高くないという。(写真1,2)

 モソ人取材でロゴ湖への旅の途中で大涼山のイ族と会う。突然傘を広げたような大きな帽子を被った女性に出会う。異様な姿に驚きすぐカメラを向ける。彼女は踵を返し逃げるように視界から消える。(写真3)

この帽子の意味するものは、又彼等にどんな風習があるのだろうか興味が沸く。その後この姿を数人目にしたが、撮影は相手にされない。言葉も通じないし思案にくれる。あきらめた頃に街道を夫婦づれらしき人に出会う。同行の運転手の任さんに夫らしき人に頼んで撮影の許可を交渉して貰う。

彼等は親戚の家の祝い事の帰りだという。(写真5,6 )帽子は80cm位、重さ1キロはあるという。親切に帽子をぬいて中を見せてくれる。柔らかい裏地は緑色、竹で帽子の骨組みを作っているようだ。帽子はイ族の言葉で“おへんろ”と言い盛装用の服装らしい。彼女は35歳で朝から晩までかぶっているというが我々が気にする首への負担はなく問題ないらしい。撮影中、通りすぎる別の婦人にも頼み了解を貰う。(写真7 )

写真1 訝しげに見るイ族
写真2 優しいイ族 写真3 踵を返し消えた女
写真5 親切な盛装したイ族 写真6 帽子をぬいて 写真7 自慢げに盛装を見せてくれた中年の婦人

 車を走らせていると家の白壁に不思議なものが描かれているのを目にする。(写真4)太陽と虎が描かれているようだ。家の壁両側に、この付近の多くの家に描かれている。何だろう。イ族の魔よけだろうか、意味しているのを家の人に聞いても分からない。

長江上流の金沙江は雲南、四川省の境界を赤土を削って流れる。周囲は大涼山系の4000mの山並みが連なる。(写真8)
大涼山イ族はこの辺を主の住処としている。

家の軒下で旨そうにに煙草を燻らす精悍な農家の女性に会う。(写真9)煙草と酒が大好きという。この地は、子供は二人っ子政策だが罰金1万元払ってもう一人もうけたという活力溢れた女性である。煙草は雲南の名産であるが、吸い方も珍しい水でろ過して吸う水煙草を町で目にした。(写真10)
 
写真4 イ族の家 不思議なマーク 写真8 イ族が居住する大涼山付近の金沙江
写真9 煙草を燻らす精悍な農家の主婦 写真10 天理であったイ族 水煙草

 旅行の終盤、大理から昆明に高速道路113号線を走る。途中、楚雄イ族自治州を通る。

楚雄のインターを通り越すと大涼山付近で見たあの白壁にかかれたような絵が見える。

壁に描かれたライオンらしき絵、次に見たのは“きのこ”の絵、である。(写真12,13)“きのこ”はこの地域の名産のようである。ということは不思議な絵は魔よけを意味するものだけでなく何か遊び心もあっての事かと思い巡らしながら広大な畑を右に見ながら走る。高速道路沿いに農産物の売り子がでる。(写真14 、24、11)

写真12 ライオンが描かれた白壁 写真13 土地の名産“きのこ”の絵
写真11 高速道路での農産物売り 写真14 広大、豊かな畑 写真24 のどかな時が動く

 この地の近くに180万年前の元謀原人の洞窟や古代恐竜の遺跡があることでも知られているところである。(写真23)

白壁に次の絵を捉える。家の側面にユーモラスな“ひょうたん”の絵が描かれている。(写真15)
写真23 遺跡を恐竜谷で見せている 写真15 ひょうたんの絵


次は 横幅4m近い大きな絵が目に入る。(写真16)実に明るい楽しい綺麗な絵だ。
内容はイ族の生活ぶりを表しているようだ。回廊のように次々に素敵な絵が目を楽しませてくれる。(写真17,18)
作物の収穫を祝っているのだろう。特徴の黒い帽子、何よりもエキゾチックに描かれたイ族の女性が美しい。
恐竜と鶏、走る恐竜(写真19,22)も面白い。
写真16 家の白壁一杯 イ族の生活が描かれた見事な絵

写真17 豊作を祈念する絵

写真18 エキゾチックな顔が印象的

写真19 鶏・恐竜がそれぞれ描かれている

写真22 走る恐竜


 (写真20)は敬老精神が家庭の幸福の基本 。(写真21)は一年の計、一生(生涯)の計が描かれている。いずれもこちらは漢民族によるものだろう。特に一年の計は春にあり、一生の計は働くことにあり、労働は宝。一生一世働くことはやめられないという教訓は誰にも分かりやすく描かれている。

写真20 敬老精神 写真21 一年の計 一生の計


 絵はなんと数キロに渡って描かれている。道端の絵はすべて望遠レンズで捕らえる。これらは観光を目的に描かれたのではなく生活を楽しむ為のものだろう。いずれにせよ大量の絵は”道端の美の回廊”と呼んで良いだろう。私にとって長旅の疲れが癒された一時でもあった。

発想豊かな回廊、ユーモア溢れるそれぞれの絵、は近づきがたいといわれるイ族の人たちの予想外の一面を表しているが、彼等には厳しい民族の歴史を歩んできた中で培ってきた何か大きなものを持っているのかもしれない。

 
  イ族は総人口が約657万人。中国少数民族の中で6番目であり、雲南省・四川省・広西チワン族自治区など、広範囲に居住している。祖先は黄河上流域をその発祥の地とし、その後次第に南下し長江原流域の金沙江域に到達、定着したと言われている。古代西南地区を支配し王国を築いたこともある。独特なイ文字を持ち、中国解放迄は奴隷制度を持っていたことでも知られ、強い民族意識を持つといわれている。

次回はトンパ文字の納西族の故郷、水の都 麗江(リージャン)を予定しています。