10=『3×3』+1

《登場人物》
:その昔、青葉将棋研究会に所属。最近は将棋を指すことからすっかり縁遠くなる。
  それでも1999年は将棋を覚えて以来、年間最高勝率(10割!)を記録。ただし、同時に年間最少対局数(3局)も記録。
:詰将棋作家。最近は詰将棋を作ることから縁遠くなる。
  それでも1999年はTの対局数より多くの詰将棋を作った。2000年1月、詰将棋パラダイスの入選回数が年齢を超えたらしい。

★プロローグ(1999年10月某日)
「あの青葉将棋研究会が10周年を迎えたということで記念誌を出すそうですよ」
「青葉将棋研究会? どこかで聞いたことがあるような・・・。
 ああ、私の作った詰将棋が解けないものだから、解いてもらおうと持っていったことがありましたね」
「えらい刺のある言い方しますね」
「あっ、すみません。生まれつきなのであまり気にしないで下さい」
「一生直らないと・・・。そんなことはどうでもいいんですよ。実は頼みが・・・」
「まさか記念誌に載せる詰将棋を出してくれ、とか言うんじゃないでしょうね?」
「鋭いですね。ほら、詰パラに投稿しても採用されないような、毒にも薬にもならない詰将棋がたくさんあるっていつも言ってるじゃないですか」
「そんなこと一度だって言ってませんよ。全く失礼な人ですね!」
「あっ、すみません。生まれつきなのであまり気にしないで下さい」
「それにどうせ、いつかの青葉譜(東北大学将棋部部誌)みたいに軽薄な文章を書くためのネタにするつもりなんでしょ?」
「(鋭い!)とんでもありませんよ! なにしろ記念誌の基本方針は
 『活動の記録を整理し、経緯や理念を確認』し、『各会員の足跡と思想を表現する』ということですからね。
 格調高い重厚な解説文を書かせていただきますよ」
「説得力が全然ないですよ。言ってて恥ずかしくないですか?」
「ちょっとね」

★第一章(1999年11月某日)
「持ってきましたよ。10周年ということで詰将棋を10問出題することにしました」
「それはどうも。ご丁寧にタイトルまでつけてあるけど、何なのこのタイトル?」
「10=『3×3』+1、間違っていませんよね?」
「それくらい分かりますよ。そういうことじゃなくて、意味が分からないんですけど」
「じゃあ、説明しましょう。『3×3』というのは盤面のことですよ。初めの形が盤面の『3×3』のスペースにおさまっている詰将棋を集めたわけです」
「なるほど、それを10問ですか」
「いや、3×3ですから9問です」
「さっき10問出題すると言いましたよね?」
「言いましたけど、残りの一問は『3×3』とは全く関係ありません。
 実は今日持ってきたのは『3×3』の9問で、10問目は何にするかまだ決めてないんです」
「1問だけ違うので、『+1』というわけですか。どうも中途半端で美しくないですよ」
「仕方ありませんよ。『3×3』は9なんですから。
 でも10周年に『3×3』というのも変な話なので、『+1』としたわけです」
「なんか『+1』ってのが分かりにくいんですよね」
「分かりにくい? そんなこと言われても困ります。だいたいあと1年早ければ
 きわめて分かりやすかったんですよ。なんで10周年なんて節目の年に記念誌を出すかな・・」
「節目じゃなきゃ記念誌にならないでしょう」
「そういうものですか?」
「そういうものですよ! で、今日持ってきた9問は何手詰みなんですか?」
「第一問から順番に11・13・13・15・15・23・23・29・35手です」
「全部二桁!? そんな長いのは解けませんよ。ヒントはないですか」
「第2問と第6問以外は移動合を含めて作意手順に合い駒が出てきます」
「合い駒ですか? 面倒でまったく解く気が起こりませんよ」
「言葉は正確に! 解く気が起こらないのではなくて、解けない、でしょ?」
「あっ、そういう言い方もありますね」
「そういう言い方しかないでしょう!」
「まあ、自分では解きませんけど、某将棋ソフトに検討がてら解かせますよ」
「それじゃ検討はよろしく。残り一問は次の機会に持ってきますよ」

★第二章(1999年12月某日
「パソコンでは余詰は見つかりませんでしたよ」
「私もあれからソフトを買って検討したんですが、ないようですね」
「買ったんですか? じゃあ何も私が検討する必要はなかったのでは?」
「いや、こういうのは念には念をいれてやったほうが良いと思いまして」
「ひょっとして私の検討を信用出来なかったとか?」
「とんでもない、信用していますよ。扱う人はともかく、ソフトの検討能力は・・・」

第1問解答 
▲1二香 △同 玉 ▲2四桂 △同 香 ▲3二竜 △2二金 ▲1一飛 △同 玉
▲2一金 △同 金 ▲2三桂 まで11手

<変化・紛れ>
初手 ▲1四香は△1三桂打・△1三歩で不詰。
6手目△2二歩など飛以外の合駒は▲1一飛△同玉▲2一竜まで。
「中盤からは既成手筋です。初手の短打が唯一のポイントです」
「合駒を稼ぐために離して打ったほうが良さそうですけど。▲1四香と」
「それは△1三歩▲同香不成△同桂▲1二歩△同玉・・・以下同じように進めると」
「なるほど、質駒の2一桂逃げられているので詰まないんですね」
「そうです。まあその前に▲1四香には△1三桂打合ではっきり詰まないですけど」
「それを先に言ってくださいよ」

第2問解答
▲2一金 △同 玉 ▲1三桂 △1二玉 ▲1一金 △1三玉 ▲1四銀 △同 玉
▲1五金 △1三玉 ▲2四角成△同 銀 ▲1四金打 まで13手

<変化・紛れ>
8手目△同銀は▲1二金打△同飛▲2四金まで
「これは特に問題ないですよね」
「並べてみるとね。でも持ち駒が多くて眩暈がしますね」
「そうですか? この初形からは▲2一金しかなくて、
 2一に王を移動させたからには▲1三桂しかない、というふうに考えれば、難しくはないと思いますよ」

第3問解答
▲1二歩 △同 玉 ▲1三飛 △2一玉 ▲4三角 △3二金 ▲2三飛成△1一玉
▲2二角成△同 金 ▲1二歩 △同 金 ▲2一角成 まで13手

<変化・紛れ>
2手目△2一玉は▲4三角△3一玉▲3二飛以下
3手目▲2三飛成は△2二歩▲4三角△1一玉で不詰
6手目△3二飛は▲2三飛成△1一玉▲1二歩△同飛▲2一角成まで
   飛・金以外の合い駒は▲2三飛成△1一玉▲2二角成△同銀▲1二歩以下
「これはまた、えらいあっさりしてますね」
「こんなふうに適当に駒を並べて、合駒絡みの手順を読むというのが多いんですよ」
「嫌な作り方をしますね。だから合駒ありの作品ばかりなんですね」
「効率的なやり方ではないですけど、読みの訓練にはなるんですよ。君もどうです?」
「報われないことが多そうで、耐えられませんね。遠慮しておきます」

第4問解答(詰将棋パラダイス 1994年12月号掲載)
▲2二歩成△同 角 ▲1四香 △1三角 ▲同香不成△2二玉 ▲2三銀 △1三玉
▲1四銀成△2二玉 ▲2三成銀△3一玉 ▲5三角 △4二合 ▲4三桂 まで15手

<変化・紛れ>
初手 先に▲1四香は△1三歩▲2二歩成△同玉▲2三銀△1一玉で不詰。
2手目△同玉は▲2三銀△1三玉▲1四銀成以下。
3手目▲2三桂は△1二玉▲1四香△1三角で不詰。
4手目△1三歩は▲2三桂△1二玉▲2一銀まで。
「初手は▲1四香しかなさそうですね」
「ふつうは△1三歩ですね」
「▲1二銀△同玉▲2四桂△1一玉・・・、▲2二歩成△同玉▲2三銀△1一玉▲1三香△同角・・・、ところでこれって打ち歩詰めありでしたっけ?」
「あるわけないでしょ。何を言っているんですか」
「案外融通がきかないんですね」
「そういう問題じゃないですよ」

第5問解答
▲1三香 △1二歩 ▲同香成 △同 玉 ▲2四桂 △1一玉 ▲2一角成 △同 玉
▲4三角 △1一玉 ▲1三飛成△同 銀 ▲1二歩 △2二玉 ▲3二角成まで15手

<変化・紛れ>
2手目△1二桂は▲同香成△同玉▲2四桂△1一玉▲1三飛成△同銀▲2三桂△2二玉▲1一角まで早い。
 (▲1三飛成で▲2一角成以下作意と同様に進め、・・・▲2三桂△2二玉▲3二角成とするのは変化別詰)
7手目▲1三飛成は△同銀▲2一角成△同玉▲4三角△2二玉▲3二角成△1一玉▲3三馬△2二金(または△2二飛)で不詰
「これも第3問と同じで適当に並べていたら何となく出来てしまいました」
「そうなんですか。詰将棋創作も案外楽なんですね。自分も作ってみたくなりましたよ」
「いや、でもこれは稀なケースですよ。適当に指していたら何となく勝ってしまった、というのと一緒にしないで下さいよ」
「妙にひっかかる言い方ですね」
「あれ、何か思い当たるふしでもありますか?」

第6問解答(詰将棋パラダイス 1995年3月号掲載)
▲2三桂 △同銀左 ▲2一金 △同 玉 ▲1三桂 △1一玉 ▲1二歩 △同 銀
▲2一金 △同 銀 ▲同桂成 △同 玉 ▲1三桂 △同 銀 ▲1二角 △同 玉
▲2三銀 △2一玉 ▲1一馬 △同 玉 ▲1二歩 △2一玉 ▲3三桂 まで23手

<変化・紛れ>
8手目△同玉は▲2一角△1一玉▲1二歩以下。
14手目△1一玉は▲1二歩△同玉▲2一銀△1三玉▲3五角以下、
「第1問をもとにして作ったんですが、途中からは順算です」
「逆算じゃないの? 最後が結構決まっているので逆算かと」
「逆算は収束から作っているので最後が決まるのは当たり前です。
 でも、このように順算で作っていき、きれいな収束を発見できた時は結構快感ですよね」
「分かります。分かりますよ、その気持ち!! 相手が王手飛車にはまった時の快感といったら・・・。
 将棋やってて良かったと思いますものね。うれしさのあまり、小躍りしたくなるのを抑えるのに苦労しますよ」
「・・・たぶん、全然違うと思いますよ(同じであってたまるか!)」

第7問解答(詰将棋パラダイス 1995年2月号掲載)
▲1一と △同 玉 ▲2二飛成△同 銀 ▲1二歩 △同 玉 ▲1四飛 △1三角 
▲3四角 △2三銀打▲2四桂 △1一玉 ▲1三飛成△同 銀 ▲1二桂成△同 銀
▲同角成 △同 玉 ▲3四角 △1一玉 ▲1二銀 △2二玉 ▲2三角成まで23手

<変化・紛れ>
4手目△同玉は▲1二飛△同玉▲3四角△2二玉▲2三銀成△2一玉
   ▲1二成銀△3二玉▲4四桂△4二玉▲5二角成まで。
5手目▲1四飛は△1二歩で歩詰。
8手目△1三歩は▲2四桂△1一玉▲1三飛成△同銀▲1二歩以下。桂合も同様の筋。
9手目▲2一角は△同と▲2四桂△1一玉▲1三飛成△同銀▲2一銀成△同玉
   ▲4三角△2二玉▲3二角成△1一玉▲3三馬△2二金で不詰。
10手目△1一玉は▲2三桂△同銀▲1三飛成△1二歩▲同竜△同銀▲同角成以下。
   △2三歩は▲2四桂△1一玉▲1三飛成△同銀▲1二桂成△同玉▲2三銀成△2一玉▲4三角△3二合▲1二成銀まで。
「これはまた一段とやる気をなくす形ですね」
「そう言わないで下さい。これはこれで価値があるんですから」
「マニアの人達にはそうかもしれないけれど・・・・。おまけに自陣と金(3一と)がうっとうしいんですよ。何とかなりませんか?」
「確かにうっとうしいですね・・・。でも、自分だって成り駒を作って自陣に引いては喜んでいるじゃないですか。
 うっとうしい将棋には慣れているんでしょう?」
「いや、自分がやるのはいいんだけど、やられるのは・・・。これからは心を入れ替えて、もう成り駒は自陣に引きませんから、3一とはやめて下さいよ」
「何をわけの分からないこと言ってるんですか。3一金では9手目▲2一角以下余詰みます。
 好まれない自陣と金をあえて配置しているのには必然性があるんですよ」
「そうなんですか。てっきり私と同じ趣味なのかと思っていましたよ」
「一緒にしないで下さい!」

第8問解答(詰将棋パラダイス 1995年8月号掲載)
▲1一飛 △同 玉 ▲2三桂 △1二玉 ▲1一飛 △同 馬 ▲同桂成 △2二玉
▲2三銀打△1一玉 ▲1二銀成△同 玉 ▲3四角 △2二玉 ▲2三角成△1一玉
▲3三馬 △2二歩 ▲1二歩 △同 玉 ▲3四角 △1一玉 ▲2二馬 △同 玉
▲2三銀成△2一玉 ▲2二歩 △1一玉 ▲1二銀成  まで29手

<変化・紛れ>
8手目△同玉は▲1二歩△同玉▲3四角以下。
「手数は長いですけれど、やさしいはずです」
「そう・・・ですか?」
「8手目、玉をかわすのが唯一のポイント。対する▲2三銀から▲1二銀成が好手です」

第9問解答(詰将棋パラダイス 1995年9月号掲載 の改作)
▲2二銀成△同 角 ▲1一桂成△同 玉 ▲1二歩 △同 玉 ▲1三歩 △同 玉
▲1四金 △1二玉 ▲1三歩 △同 角 ▲同 金 △同 玉 ▲3五角 △2四金
▲2五桂 △1二玉 ▲1三歩 △1一玉 ▲4四角 △2二桂 ▲2三桂 △同 金
▲1二歩成△同 玉 ▲2三馬 △同 玉 ▲3三角成△1二玉 ▲1三桂成△同 玉
▲2三金 △1四玉 ▲2四馬 まで35手

<変化・紛れ>
4手目 △同角は▲2四桂△同金▲1三歩△同玉▲2五桂以下。
8手目 △同角は▲1一金△同玉▲3三馬以下。
12手目 △1一玉は▲2三桂△同金▲1二歩成以下。
16手目 2四に合駒を打つのは作意と同様に進め、▲3三馬で金がとれるので早い。
22手目 他の合駒は▲同角成以下1二にとった駒を打って詰み。
「攻め方の手は限られているんですが、合駒の変化が多いので難しいかもしれません」
「ほんと、ひどい目にあいましたよ。パソコンに解かせたら3時間半もかかったんです」
「えっ、そんなにですか? それなりに難しいとは思いますけど・・・」
「いったい何を考えているんですかねえ」
「いや、考えもしない君にだけは言われたくないと思いますよ」

「というわけで9問終わりました」
「・・・これが9周年記念誌ならつつがなく終わっているのに」
「まだ言いますか。で、残りの一問はどうするの? 普通はお約束であぶり出しですよね。十周年記念だから「十」とか「10」ですか?」
「一応考えたんですけど、そんな器用なことは出来ませんでしたよ」
「『十』や『10』でないとすると・・・。・・・分かりましたよ! タイトルの意味が! あのタイトルの『+1』は「一」か「1」のあぶり出しを指していたんですね!?」
「指してませんよ! ともかく残り一問はもう少し待って下さい。 予定していたのが余詰で潰れてしまったので、どれを差し替えにするか迷っているんですよ」
「締め切りが迫っているんで、早くお願いしますよ」

★第三章(2000年1月某日)
「遅くなりました。10問目を持ってきました」
「待ったかいがありましたよ。何があぶり出されるのか楽しみですね。ドキドキしますよ」
「何回言ったら分かるんですか? あぶり出しなんて作っていませんよ」
「あぶり出しでないとすると・・、なるほど、初形象形ってやつですか?」
「違います。これを見てください」
「確かに初形象形ではないようですね。ということはやっぱりあぶり出し?」
「断じて違います」
「じゃあ何ですか、これ? 10才の時に作ったとか、記念すべき10作目とか、
 10にまつわるエピソードを教えてくださいよ」
「別にエピソードも何もないです。余詰が怖いので安全策をとったまでです」
「どういうことですか? 安全策って」
「実はこれ、今月号の詰パラに載ったものです。
 将棋ソフトで余詰が見つからなくて、詰パラの検討をパスしたんだから、たぶん大丈夫でしょう」
「本当にそれだけの理由? 実は玉方から指して10手詰だとか・・・」
「そんなわけないでしょ! 何でそんなことまで言われなきゃ・・・」
「10周年記念誌に載せる10問目なんだから注目するのは当然ですよ」
「そう言われてもこの10問目はあくまでも『+1』でタイトルに10を入れるための付録みたいなものなんですから。
 これでも何にするか苦労したんですよ。・・・9周年記念誌だったら何の問題もなく終われたのに・・・」
「ところでこの詰将棋、攻める方にも王様がいますね」
「双玉というやつです。最近はこればっかり作ってます」
「何でまた、そんなマニアックなものに手を出してるの」
「いや、これには深いわけがあるんですよ」
「大道棋屋に売って金をもうけているとか」
「ありえません!!」
「そうか、直接カモ見つけてあり金全部巻きあげているんだ。あこぎだねえ」
「違います!」
「違う!?・・・、まさか、大道棋屋から巻きあげているの? なんて大胆な。バックに怖い人がいるかもしれないから気をつけたほうが良いですよ」
「それは確かに気をつけないといけませんね。それじゃバックに怖い人がいない君から巻きあげることにしますよ。解いてみて下さいよ」
「そんなプレッシャーかけられたら解けるものも解けなくなりますよ」
「解けないものは解けないと思いますがね」
「・・・・・・・・・・・・解けましたよ」
「冗談でしょ!? 言っておきますが、▲2二王は反則ですからね」
「失礼な! 初手は▲2三桂ですよね。以下△2一玉▲1二香成△同玉▲1四香△1三合▲2四桂△2一玉▲1一桂成△同玉▲1三香不成・・・、簡単ですよ」
「なるほど、簡単ですね。ところで1三の合駒ですが、飛車だとどうなります?」
「同じように進めて詰むでしょう」
「そうですか? ▲1一桂成の時、王様を取られちゃいますよ」
「げっ!!!!!」
「素抜きはいつも狙っているくせに、案外不注意なんですね」
「いや、普通の相手は自分ほど素抜きを狙っていないから、って何言わせるんですか」
「しかし、こんなに簡単に引っかかるんじゃ正解にはたどり着けませんね。じゃあ、少し進めましょう。
 ▲2三桂△2一玉までは良いとして、3手目は▲1三桂が正解です。以下△同香▲1一桂成△同玉▲1三香不成、ここから考えてみて下さい」
「また、合駒ですか。歩とかだと▲2三桂△同角▲同王で早いし、飛合も▲同香成で早い、ということは銀か金ですね」
「△1二金合の変化は後で言うとして、△1二銀合で進めて下さい」
「これは取るしかありませんね。・・・そうか、▲1四香か。△同角なら▲2四桂△1三玉▲2二銀までだから、合駒・・・。
 歩合だと▲2四桂から▲2二銀か。そうすると2二に利かす意味で△1三銀が最善・・・。
 以下▲1二銀△3一玉▲5三角成△4一玉▲4二馬まで・・・、これってひょっとして最後を飾る超駄作ですか?」
「その手順を作意と信じる感覚が分かりませんね。△1三飛合だとどうなりますか? こういう場合、逆王手になる合駒を考えそうなものですけど」
「飛合は▲同香成△同玉▲2五桂△1四玉▲1三飛△2五玉▲1四銀・・・」
「1四には角が利いているんですけど」
「ぎょっ!!!!!」
「さきほどの▲1三香不成に対して△1二金合なら▲2四金まででぴったりですが、銀合は▲2五桂以下の手順では詰みません。
 それにしても不注意な人ですね。大道詰将棋 に出くわしても絶対手を出しちゃいけませんよ」
「忠告ありがとう。でも詰将棋は大嫌いだから大丈夫ですよ」
「確かに、その点はね。それはともかく解けました?」
「▲2五桂でないとすると▲2四銀ですか。上にあがると▲1三飛△2五玉▲1七桂△同と▲1五飛成で詰むから△1二玉と」
「先が見えてきましたね。後は飛車をうまく捨てて王様を1一へ誘導すれば・・・」
「▲2二飛△1一玉▲2三桂△同角▲1二飛成△同角・・・、ありゃ?」
「よくそんな手順が浮かびますね。ほんと、才能の違いを感じますよ」
「いやあ、照れますね」
「褒めてないって!」
第10問解答(詰将棋パラダイス 2000年1月号掲載)
▲2三桂 △2一玉 ▲1三桂 △同 香 ▲1一桂成△同 玉 
▲1三香不成△1二銀▲同香成 △同 玉 ▲1四香 △1三飛 
▲同香成 △同 玉 ▲2四銀 △1二玉 ▲1三飛 △2一玉
▲2三飛成△同 角 ▲1三桂 △1一玉 ▲2三王 △4四銀 
▲2二角    まで25手 

「あれ、これは作意手順だけで<変化・紛れ>はないんですか?」
「君が一通り引っかかってくれましたからね、書く必要がなくなりました。
 いや、詰将棋が解けなければ解けないなりに利用価値はあるんですね。勉強になりましたよ」
「でしょ? では間違ったぶんのお金はチャラということで・・・」

★エピローグ