シベリア高気圧の「背の高さ」

200212月1日、シベリアのAGATAでは最低気温-53.0度を記録しました。
AGATA
の日平均気温の平年値は-30.5度ですので、大変な寒さと言えるでしょう。(最低気温の平年値がないので、単純な比較はできませんが)
その他にも同じシベリアのSELAGONCY-51.0度、ERBOGACHE-51.3度、VANAVARA-50.6度を記録しています。
冬季の地上付近の低温はシベリア高気圧の要因で、-50度前後であればかなり優勢な高気圧が現れそうですが、

Turuhansk66N/88E)の1日00Zの地上気圧は1025hPaくらい、12zでは1020hPaをきっています。
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12zのAUPA20を見るとタイミル半島の南西からサハリン北部にかけてが巨大な低圧部となっていて、

成層圏高度が低く、周囲に比べての高温が目立ちます。

地上付近に冷たく重い空気がたまっていても上層の高い気温がそれを打ち消す形となり、
地上気温から受ける印象ほど大陸の高気圧が強まっていないのでしょう。

対照例として・・・2002111518Z、バイカル湖の北では地上気温が-36度と

今回より(比較的)高温でしたが、中心気圧は1050hPaと強い勢力の高気圧が現れました。
この地上高気圧は200hPaの強いリッジの前面で、成層圏高度は高く、200hPaの気温は周囲より低めとなっていました。
前の例とは逆に上層の低温が地上気圧をより高める役割を果たしたわけです。

 

シベリア高気圧は地上付近の低温で形成される「背の低い高気圧」というイメージがありますが、

対流圏全層が寒気であるような「背の高い高気圧」もあるのです。 

「背の高い高気圧」の代表は太平洋高気圧ですが、太平洋高気圧は下層から中層は暖かい空気で、

上層が冷たい空気(成層圏高度が高いので周囲に比べると低温)であるのに対し、

背の高いシベリア高気圧は下層から上層まで寒気なので、地上では1050hPaを超えるような、より高い気圧が現れるのです。

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