南岸低気圧による甲信地方の降雪(2005/2/16)
<総観場の経過>
15日15時、中国大陸から九州付近にのびていた前線上に低気圧が発生、
16日3時には壱岐付近に進んだ。低気圧は16日6時以降は南岸を進むものと
日本海沿岸を進むものの、2つが解析され、西日本から東北地方にかけて
広範囲に降水をもたらした。
低気圧や前線に向かう暖湿流はこの時期としては強いもので、鹿児島県の
上中で15日14時から15時の1時間に104.5ミリの猛烈な雨を記録するなど、
九州南部は各地で大雨となった。
一方、北の高気圧から冷たい空気の影響が流れ込んだ東北の太平洋側は
雪の量がまとまった。甲信地方や関東内陸の降水は降り始めは雪だったが、
低気圧の接近とともに上空に暖かい空気が入ったため、次第にみぞれや
雨に変わった所が多かった。
実況天気図 2月15日21時 実況天気図 2月16日03時
実況天気図 2月16日09時 実況天気図 2月16日15時
<甲信地方の降雪の経過>
甲信地方は16日午前2時頃から雪が降り始め、昼前を中心に雪の降り方が
強まった。ただ、当初予想ほど滞留寒気が強くなく、地上気温は朝のうちから
徐々に上昇、降水のピーク時には雨が混じった所もあった。低気圧の接近で、
上空の気温はさらに上がったため、降水は昼頃には雨に変わり、概ね21時頃
までにあがった。
甲信地方の降水は全般に20〜30ミリ前後だったが、諏訪湖周辺、上田・佐久
地方、長野県北東部は10ミリ以下にとどまった。
<甲信地方の風と気温の経過>
甲信地方は降水開始の2〜3時頃に気温が下がり、氷点下の所が多くなったが、
降水継続中も少しずつ気温が上昇、昼前には多くの地点で1〜2度まで上がった。
これは.上空の気温上昇が主要因だが、地上付近で強まった風も関連しているものと
推測される。新潟県や長野県北部、長野県中部(諏訪・原村)は所々で平均10m/s
前後の風を観測、地上付近で冷気がたまりにくい場だったと思われる。
<局地解析など>
下の図は16日0時と6時の関東甲信越の局地天気図である。0時の時点では
長野県北部にメソ高気圧があり、関東地方と北陸西部の気圧差は2hPa前後しか
なかったが、北陸西部ではその後6時間の間に約10hPaも気圧が下がり、関東との
気圧差は10hPa前後に拡大した。この北陸地方の気圧下降は日本海を東進する
低気圧の接近とともに、下層への暖気の流入を示していて、気圧傾度が大きくなった
結果、風が強まったと考えられる。
2月16日0時の局地天気図 2月16日6時の局地天気図
2月16日の気圧変化
また、この事例で積算降水量の少ないエリアは5〜10メートル前後の南よりの風が
吹いたエリアとの対応が比較的よい。この風が山越えの下降気流によるもので、東進
してきた雲を弱めた可能性があるかもしれない。今後の要検討課題である。
2月16日0時〜17日0時の積算降水量 2月16日午前9時の風の分布