〜ONE〜

言葉が出ません。
ただ胸がきゅっと痛い。
どの曲が好き、とか言うんじゃなくて、このアルバムは全曲すべてで
ひとつの作品、という気がする。
この曲順で、このバランスで、こうなったからこそ、このアルバムになった。
すべてが必然である気がするのだ。

痛々しいまでに、リアルだ。
『等身大』という表現を、ふたりはしていたが、『等身大』という言葉はなんとなく
若すぎる表現な気がする(笑)
リアルだな。
そう思った。

最近は、何か悟りでも開いたのかい?と思うほどポジティブ路線一直線だった
北川悠仁の紡ぎ出した歌。

それこそ五年前のような、見るからに浮き沈み激しく、揺れる心に見ているこっちが
不安を抱くようなことはめっきりなくなった北川さん。
様々なことを経験し、成長し、彼はオトナになったのか。
逞しく強く揺らぐことない心を手に入れたのか。

このアルバムを聞くまでは、もしかしたらそうなのかもしれないなんて少し思っていた。
でもね…
例えばそうだとしたら…
彼の魅力は半減すると思うのだ。

けして彼らの歩く道は、『日向』ではない。
薄暗い路地を、人目を避けるように顔を伏せて歩く。

さっきまで笑顔だったのに、ふとした瞬間にどうしようもなく切なく暗い闇が顔を覗かせる。
その闇に、苦しみもがき、でもけして顔を上げ光を目指すことを諦めない、
そんな彼にこそ、心惹かれる。

一枚のアルバムの中に、振り幅の大きすぎる陰陽。
胸の奥が、ちりちりと不安にかられるような気がするのは、そのせいだと思う。


その、陰と陽を結ぶのが、岩沢厚治である。


陰の部分が、真実の北川悠仁である。
陽の部分が、真実の北川悠仁である。

どちらが正しく、どちらが間違っているのか。
どちらが良くて、どちらが悪いのか。
どうすればいいのか。
どうせねばならぬのか。


そんな答えなんて、ない。
いらない。
すべてひっくるめて、北川悠仁なのだから。
一個の人間なのだから。

淡々と彼らしい言葉で埋め尽くされた彼の歌は、別に北川さんの腕を引くわけでも
背を押すわけでもなく、ただ、そこにある。


ただ、隣に佇む。


北川さんの陰陽を繋ぐように配置された彼の歌が、いかに大きな役割を果たしているか。
聞いてみれば明らかだろう。

鬼のマイペース、などと言われるが、不器用極まりない自分の生き方を、
けして彼は是としているわけではない。
でも、変えようもなく変えられるわけでもない。
…ま、そこは頑固なんだけどさ(笑)

ポツンと取り残された、寂しさ。
北川さんとは、まったく色の違う孤独。


孤独と孤独。
けして、交わることない背中合わせの孤独を抱えながら、ふたりは肩を並べ歌い続けていく。

きらびやかなアレンジ、爽快なバンドサウンド、壮大なスケール。
その中にあって、一番心に沁みるのは、シンプルなギターとタンバリン、ハープという構成。


シングルカット曲も、ライブツアー先行で、生で身体に馴染んでから発売されたものが
多いせいか、聞きなれた曲、というより、ライブでのシーンを思い出すリアルな曲と感じた。
初聞きの曲と、ライブレギュラー曲とのバランスも、すばらしくいいと思う。

しばらくは…ただ、噛みしめていたい。
そんな気持ちでいっぱいである。






ひとつだけ、文句を言いたい。
どうしてアルバムジャケットが村上隆の必要があるんだろう?
ブックレットの、ふたりの指。
これで充分だろう。

どうして中身はこんなに洗練されたゆずワールドであるのに、外側に余計な要素を
入れるんだろう。

意味がわかんない。

悪いが不愉快。



top