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 街一帯に警戒網が張られ、3日が経った。
 あれから、山崎は姿を現さない。
 警備兵達もさすがに気を緩みがちだった。
 隣同士にいる2人の警備兵が話し合う。
「なあ、本当に山崎は現れるのか?」
「さあな。司令官の話だと、もう一度奴はここに姿を見せるらしい」
「だが、あれから3日も経ってるんだぞ。あいつの性格からしたら、もっと
前に来ててもおかしくないんじゃないか?」
「普通ならな。だが、もしかしてあいつが俺達に恐れをなしているかもしれ
ない」
「アハハ、案外そうかもな!」
「誰が、恐れてるって!?」
 2人の間に聞き慣れない声が割って入った。
 2人とも声の方を見る。
 大柄で金髪の男。
 黒一色の上下に、白のコートを羽織っている。

 彼は山崎竜二であった。

「や、山崎!?」
 警備兵の1人が声を震わす。
「おいおい、どうしたんだよ。さっきまでの元気はよぉ!」
 近づく山崎。
 そして、警備兵の胸倉をムンズと掴む。
「ぶっ飛びなぁ〜!!」
 頭突きと同時に激しい爆発音。
 警備兵は遠くまで吹き飛ばされる。
 意識はそれ一発でなくなった。
「あ、あ…」
 その光景を見ていたもう1人の警備兵もおぼつかない様子であった。
 山崎がもう1人の方を睨む。
 警備兵が連絡でハイデルン達に伝えようとする。
 その刹那…
「シャァァァァ〜ッ!!」
 山崎の蛇使いが警備兵の頭を捉える。
「グアッ!!」
 警備兵はトランシーバーを手から離し、そのまま気絶する。
「チッ、くだらねぇ!」
 そう言うと、山崎は唾を吐き、先に進んでいった。
 山崎の前に続々と警備兵達が現れる。
 だが、彼は相手にもならないという感じで次々と一蹴していく。
「ハッ、全く手応えがねえな! もっとホネのある奴ぁいねえのか!?」
 山崎がそう叫んだ時、背後から蒼炎が襲ってきた。
「チッ!」
 それをガードする山崎。
「俺が相手だ。山崎…」
 立っていたのは庵だった。
「てめぇか。少しは強くなったか!?」
「強くなったかどうかは、その体で確かめてみるんだな!」
 庵が突進する。
「ケッ、馬鹿が…。前と同じか?」
 山崎が蛇使いで牽制しようとする。
 が、庵はそれをあっさり避ける。
「な!?」
「馬鹿は貴様だ。2度も同じ技が通用するか!」
 庵は右手で喉を掴み、左手で顔を叩きつけ蒼炎を爆発させる。
 立ち上がる山崎に、尚も追撃を試みる庵。
「ハァッ!!」
 猛烈なラッシュが山崎の体に次々とダメージを与えていく。
「ラァッ!!」
 山崎が砂かけで間合いを離す。
「ハッ、てめえもKOFレンジャーだろうが。変身しないのか?」
 山崎が庵に聞く。
「その必要はない…」
「!?」
「貴様は邪気だけ取り除くという真似はせん。俺がこの手で殺してくれる」
 庵が構える。
 山崎が笑みを浮かべる。
「ケッへへへ…。わかったぜ! 俺が何故てめえに興味を持ったかが…」
「興味?」
「てめえは同類なんだよ! この俺と!!」
 山崎の蛇使い。
「通用せんと言ってるだろう!!」
 庵がかわし、隙に闇払いを放つ。
「ヘッ、俺がそんな馬鹿に見えるか!?」
 山崎が闇払いを手で取り、邪悪なオーラにして庵に返す。
「そのセリフ、そっくりそのまま貴様に返してくれる!!」
 庵が両手を天に掲げる。
「遊びは終わりだ!!」
 邪悪なオーラをすり抜け、庵が突進する。
「何!?」
 山崎はオーラを放った事により、隙が生じていた。
 庵はその隙をつき、山崎の体を刻み続ける。
「泣け、叫べ…」
 庵が山崎を掴む。
 そして、爆発。
「そして、死ねぇっ!!」
「グアッ!!」
 山崎がたまらず吹き飛ぶ。
 庵は肩から息をしている。
 立ち上がる山崎。
「なるほど、同類なわけだ。てめぇもオロチなわけだからな…」
「今頃気付いたのか?」
 庵の体が震えている。
「禁千弐百拾壱式・八稚女。八神家に伝わる禁じられた技。これを使えばそ
の分、オロチの血に毒される。だから普段は使わないのだ。もちろん変身し
た状態でも使えんがな…」
「だから、変身しなかったのか…」
「本来なら、この技で貴様を殺してやるつもりだったがな…」
「残念だったな。俺はまだ生きている。最後の最後で躊躇したか?」
「どうやら、俺の人間的な部分がそうさせたらしい。全く不便なものだ」
 庵の体がさらに震える。
「じゃあ、今度はこっちのとっておきも見せなきゃなぁ…」
 山崎が庵に近づく。
 庵の体はまだ震えたままで、止める事も出来ない。
「その体の震えのせいで、ろくに動く事も出来ねえか。安心しな、あと少し
の辛抱だからよぉ!!」
 山崎が庵の頭を掴み、アッパーで打ち上げる。
「キェェェェェ〜ッ!!」
 山崎の体が小刻みに震え、人とは思えぬ叫び声を発する。
 この光景から、彼もオロチの一員だと感じられる。
「見せてやる。俺の技、『ドリル』を…」
 その時だった。
「喰らえぇっ!!」
 紅い炎が地を這い、山崎に襲いかかる。
 山崎がそれをガードする。
 その後、庵は地に叩き付けられる。
「てめえら…」
 山崎の見る方向には、4人の戦士達の姿があった。
 レッド、ブルー、イエロー、ピンク。
「待たせたな、山崎。てめえの望み通り、変身後のKOFレンジャーがあん
たの相手をしてやるよ!」
 レッドこと京が、山崎に挑発的に言ってきた。
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