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病院。
紅丸は手紙をくれた女の子がいる207号室を探し
ている。
「えと、207、207…あった!」
207号室を見つけた紅丸は、今度は送り主の名前
を確認する。
「アイダミユキちゃんか。早速中に入るとしよう」
病室には4つのベッドがあり、それぞれ入院してい
る患者が寝ていたり、暇つぶしに読書をしていたりと
行動は様々だった。
ベッドにはそれぞれ患者の名前が書かれており、目
当てである『相田ミユキ』という名が書かれたベッド
を見つけた。
「ここか…」
しかし、そのベッドには誰もいなかった。
「あれ? おかしいな。今はどこか出かけてるのかな?」
紅丸が困ってると、背後で声がした。
「あの、二階堂紅丸さんですか?」
「え?」
振り返る紅丸。
そこには茶髪のショートヘアーの少女が、車椅子に
乗っていた。
「あの、もしかして君が…」
「はい! 相田ミユキと言います!!」
車椅子から戻り、再びベッドに戻るミユキ。
しかし、その様子は興奮しっぱなしであった。
これを見た紅丸は、彼女はよほど自分のファンなの
だと悟った。
「嬉しい。まさか本当に来てくれるとは思わなかった
から…」
ミユキの興奮はまだ冷めない。
紅丸がそれに追い討ちをかける。
「あ、とこれ。ミユキちゃんに…」
花束を渡す。
ミユキはまたもや嬉しい反応を示した。
「ありがとうございます! 今日の事は一生忘れない
と思います!!」
何度も何度もお辞儀をする。
紅丸がその辺でいいから、と言って彼女ははじめて
お辞儀をやめた。
「ところで、手紙に書いてあったんだけど、どうして
も面と向かって話したい事があるんだって?」
本題に切り出す。
「あ、はい!」
そして、ミユキは話し出した。
「実は1ヶ月前の話になるんですが…」
話の概要はこうだ。
ミユキは1ヶ月前、交通事故で足を怪我してしまっ
た。
他の部分の怪我はそれほどでもなかったが、足は思
いのほか、重症だった。
加えて、彼女は高校のバレーボール部のレギュラー
にこの度、昇格が決まっていたが、事故のおかげで他
の女子にその座を奪われてしまったのだ。
一生懸命努力して、その座を掴んだ直後の悲劇。
彼女は失意のどん底にいた。
そんな時、目に入ったのがTVに映っていた紅丸の
姿である。 |
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「KOFで紅丸さんは絶体絶命のピンチにいました。
私ももうダメかと思って見てました」
起死回生のエレクトリッガー。
劇的な逆転勝利で紅丸のチームは勝ちをもぎ取った。
「あれで私は紅丸さんに惚れてしまったんです。そし
て、あのシーンから私は大事なことを学びました」
「大事なこと?」
「はい。人間、諦めなければ必ずいい結果が出るって。
あの時の紅丸さんはそういう顔をしていました」
紅丸はサイコソルジャーチームの事を思い出してい
た。
彼らも車椅子の少女を励まし、勇気付けた経験を持
っている。
自分の戦いで人を勇気付ける。
今までそんなことを考えた事がなかった。
だが、何故か非常に気分のいい事だった。
無意識に心が躍る。
サイコソルジャーチームもきっと、同じ気持ちだっ
たに違いない。
「私、退院したら再びレギュラー目指して頑張ります。
競争率は低くないし、時間もあるとは言えないけど、
私、諦めませんから!」
彼女の目はキラキラと輝いていた。
そこには少しの汚れもない。
「紅丸さん。私にもう一度勇気を与えてくれて、本当
にありがとうございます!!」
最初は正直、照れていた紅丸だが、今はまんざらで
もなかった。
「そうだ、ミユキちゃん。退院はいつになるのかな?」
突然、紅丸が尋ねてきた。
「え? お医者さんが慎重に経過を進めていきたいと
か言ってたから、あと3ヶ月はかかるかも…」
「3ヶ月か。ちょうどあの大会と重なるな…」
紅丸の呟きが、ミユキの耳に入ってきた。
「紅丸さん、何か大会に出るんですか?」
「ああ。世界規模の異種格闘技大会。個人戦だ。京達
とはもちろん、色んな未知なる猛者達が参加するんだ」
「そ、そうなんですか! 頑張ってください!!」
「ああ!!」
ミユキのエールに応える紅丸。
時計で時間を確認し、立ち上がった。
「おっと、そろそろ時間だ。短いけど、そろそろ行か
なくちゃ」
「今日は来てくれてありがとうございます!」
ミユキは再び、深々とお辞儀をした。
「いや、こちらもいい時間を過ごせたよ。大会はTV
でも放映されるだろうから、応援頼むぜ!」
「はい!!」
そう言い、紅丸は部屋を後にした。
自動ドアが開き、病院を出る紅丸。
再び、背後の病院を見た。
「あの娘には、いろいろと大事なものを教えられたよ
うな気がする。退院祝いは是非とも『優勝』で行きた
いものだな」
そう呟くと、前を向き、病院を後にした。
世界中から猛者達が集う異種格闘技大会、『ミリオ
ネアファイティング』。
その出場者達の中には、『雷光の美獣』こと二階堂
紅丸の姿も当然ながらあった。 |
END |
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