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 KOFレンジャーの秘密基地。
 そこには勉学に勤しむ京と、それを監視するレオナがいた。
「ったく、何で俺がここまで来て勉強しなきゃならねえんだよ!」
 京が愚痴をこぼす。
「何でって、あなたはまだ学生の身。任務のせいで、勉強をおろそかにして
はいけないわ」
 レオナが言う。
「それ全部、司令官のうけうりだろ?」
「…続けるわ」
 京のツッコミを無視して勉強を進めるレオナ。
 彼女はハイデルンからエリート教育を施されてきたため、運動能力、学力
ともに同年代の者の平均値を遥かに上回っていた。
 京にとっては嫌いな勉学を、よりにもよって年下のレオナに教えられる事
は屈辱以外の何物でもなかった。
「ところで、他の奴らは何してんだ?」
 京が聞く。
 その問いにレオナが答える。
「ブルーはチャンとチョイの更正を道場で行っているわ」
「道場?」
「彼は、普段テコンドーの道場を経営しているのよ…」
「はぁ…」
「ピンクはアイドル稼業をやっているわ。イエローはその護衛。といっても
ただついて回るのがほとんどだけど…」
「拳崇らしいな…。八神は?」
「さあ…」
「おい! どういうことだよ!!」
「彼については、私もよくわからないわ。気がついたら、いなくなっている
のがほとんどだし…」
「いいのかよ、そんなんで…」
 呆れる京。
「さあ、続けるわ。今の会話で2分30秒ロスしたから、その分以下の時間
は繰り下げね…」
「マジで!?」
「さあ、次は問2よ…」
「誰か、助けてくれ〜!!」
 レオナの秒刻みの勉強地獄に苦しむ京であった。

「チャンとチョイがやられたか…」
 辺りは暗闇に包まれていた。
 誰がいるのか、しゃべっているのか普通の人の目では見当もつかない。
「まあ、奴らは所詮捨て駒。とうとうKOFレンジャーも本格的に動き出し
たって事ね…」
「そういう事。次の手は打ってあるの?」
「ええ。我らが血を受け継ぐ男に、すでに頼んでおります」
「でもよ、大丈夫なのか? あいつの扱いには十分気をつけないと…」
「ご心配なく。金さえ渡せばいいような単純な男です。奴のコントロールが
金で済むなら、これほど安い事はない…」
「確かに。実力は期待できるしな…」
「フフフ、奴らに今度の刺客が倒せますかな…」
 不気味な笑みを浮かべる男一人…。

 海岸。
 そこに一人佇む男がいた。
 八神庵。
「フンッ、KOFレンジャーか。奴らに手を貸すとは、俺もヤキが回ったな…」
 独り言を言いつつ、その場を後にしようとした瞬間だった。
 右頬を拳がかすめる。
 動じない庵。
 彼の前には、人相の悪い大柄な金髪の男がいた。
「誰だ、貴様!?」
「てめぇもKOFレンジャーだな…」
「!?」
 男は言うなり、庵に襲い掛かってきた。
 男の攻撃を避ける庵。
 だが、男は構わず近づいてくる。
「チィッ!!」
 庵は炎で間合いを離す。
 その時だった。
 庵の顔面に男の拳が入る。
 普通の人間のリーチでは、明らかに射程圏外の距離だった。
「何だと?」
「ケェヘヘへ…、臆病者には容赦ないぜ!!」
「面白い!!」
 今度は庵が突進する。
「こぉぉぉぉぉ〜っ!!」
 庵が男の拳をかわしつつ、喉下を掴もうとしたその時だった。
 男が逆に庵の頭を掴む。
「歯ぁ食いしばれっ!!」
 男の頭突きが決まったと同時に激しい爆発が庵を襲う。
「ぐっ!」
 倒れる庵。
 立とうとしたが、すかさず男がポケットに隠し持ってたナイフを庵の喉に
向ける。
 動けない庵。
「ハッ、やはりてめぇはお子様だなぁ…。生死の駆け引きがまだなっちゃい
ねぇ…」
「何だと?」
「まさか、他の奴らもこんな感じじゃねぇだろうな…」
「俺の知ったことか…」
「そうか…」
 そう言うと、男は庵の腹を思いきり踏みつけた。
「グハァッ!!」
 思わず叫ぶ庵。
「はっきり言って、今のてめぇにゃいじめ甲斐が全くねえ!! 次会う時ま
でには、俺にかすり傷ぐらいは負わせてみろや!!」
 立ち去ろうとする男。
 だが、再びこちらの方に顔を向く。
「そうそう、俺は山崎竜二。一応、オロチ八傑集…なんだとよ。じゃあな」
 その場からいなくなった山崎。
「オロ…チ。奴もまた封じられる者…か」
 一人でそう呟いた庵は、しばらくそのまま寝た状態であった。
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